試合レポート

大阪偕星学園vs大阪桐蔭

2015.07.28

カギとなった初球攻撃

 大阪偕星学園の初回の速攻劇は、まるで大阪桐蔭のお株を奪う初球攻撃だった。
いきなり1番姫野優也(3年)が初球を中前安打。一死二塁となって3番西岡大和(3年)が中前安打を放ち、あっさりと先制。さらに4番田端拓海(3年)も左前安打で続き、5番岸頼大(3年)の中前適時打で2点目を奪い取る。大阪偕星学園はこの回は積極的な攻撃だった。試合の主導権を握るには初回がキーポイントだったのだろう。大阪桐蔭の先発・田中誠也(3年)も立ち上がり、ストライクゾーンを揃えるところがあった。ストライク先行で投球を組み立てる狙いがあったのだろう。逆に大阪偕星学園はチャンスだと考えた。そういう考えが透けて見えた。

1回裏、大阪偕星学園のエース・光田悠哉(3年)の立ち上がりが素晴らしい内容であった。
1番中山遥斗(2年)はカーブで空振り三振。2番永廣 知紀(2年)は遊撃内野安打と出塁を許したが、3番藤井健平(3年)はスライダーで空振り三振。4番吉澤はスクリューで空振り三振に打ち取り、アウトはすべて三振に切って取る。

 光田は、非常に完成度が高い投手だった。ノーワインドアップから始動し、右足を胸元まで高々と上げながら、一塁方向へ足を伸ばしていくが、前膝を曲げて、歩幅を広く取って大きく踏み出す。この時、右肩が開かずに踏み出すことができていて、なかなか腕の振りが見えない。テイクバックを見ると、一見、コンパクトなテイクバックに見えるが、なかなか開かない上に、うまく体をひねりを入れて、一気に振り下ろすフォームなので、相当打ち難い。
 何より球もちが良く、さらに腕の振りが鋭い上に、直球と変化球に見分けがつきづらい。

 さらにスライダー、カーブ、スクリューと左右に曲がる変化球が投げ分けができて、ストライクが取れる。大阪桐蔭にとってはこれほど嫌なタイプいないだろう。ストレートのスピードは常時130キロ~135キロ前後だが、両サイドへのコントロールが素晴らしく、カウントも取ることができて、ここぞという場面では直球で押して空振りが奪える。またリードしたことで、光田は気持ちに余裕があった。


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 そして2回表、姫野の本塁打で大阪偕星学園が3対0とリードする。この3点目で、大阪桐蔭の攻撃面から焦りが生まれる。4回裏には一死一、二塁から三ゴロ併殺。5回裏には三振と盗塁失敗でチャンスをつぶすなど拙攻が見えた。

 だが6回裏、大阪桐蔭は二死一、三塁のチャンスから4番吉澤 一翔(2年)が詰まりながらも右前適時打。さらに二死満塁から濵田 功平(3年)の押し出し四球で3対2の1点差に迫る。しかし光田はこの場面でも冷静であった。7番福田 光輝(3年)をニゴロに打ち取り、同点には許さなかった。

 正直、この回、光田は限界の投球に見えたので、続投は厳しいと思ったが、7回はそれまでの制球力の良い光田に戻っていた。また大阪偕星学園は長打力のある大阪桐蔭打線に備えて、後ろに守って、ことごとく打球が大阪偕星学園の守備位置に飛ぶ。内野ゴロも、フライも、ほぼ正面。これは運ではなく、光田-田端のバッテリーによる考え抜いて、考え尽くした配球がズバリとはまっていたから。徹底としたアウトコース、インコース攻め。投げ急がず、常に自分の間合いで投げることができる光田の間の取り方の上手さが光った。

 そして9回裏、いよいよ勝利まであとアウト3つとなった。まず7番福田は遊ゴロに打ち取ると、8番青柳昂樹(3年)は三遊間へ深いゴロ。これを的場 優斗(2年)が飛びついてワンステップスロー。際どいプレーとなったが、アウトとなり、二死。的場のファインプレーであと1人となった。そして代打・原田 知希(3年)が登場。原田はストレートを逃さず右中間を破る二塁打で二死から同点のチャンスを作る。だが光田は動じずに中山を左飛に打ち取り、試合終了。その瞬間、光田は大きくガッツポーズ。大阪桐蔭を破ってベスト4進出を決めたのだ。


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 試合を振り返れば、2回まで3点を奪った速攻劇。そして決定打を許さない粘り強い投球と、大阪桐蔭の攻め手をなくす見事な試合運びであった。こういう試合運びができたのは、今春の大阪大会決勝大阪桐蔭と戦ったことが影響しているだろう。彼らは思いのほか戦えると手応えを掴んでいた。大会までの猛練習の中で、大阪桐蔭を破る、エースの田中を打ち崩すイメージをしながら臨んでいたようだが、彼らの戦いぶりを見ると大阪桐蔭にビビる姿はなかった。これまでの絶対的な練習量が彼らの自信になっていたのであろう。

 
大阪偕星学園はこの試合を機にさらにステップアップする機会になった。夏4連覇を目指す大阪桐蔭を止めた。彼らは甲子園を「目標ではなく、行かないといけない場所。絶対行きます」と大会前の取材で語っていた。大阪桐蔭を破ったのは必然だったのかもしれない。
 大阪の頂点を勝ち取るまで、奢ることなく全力で戦い抜く。

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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