試合レポート

聖光学院vs柴田

2015.06.06

3年前の先輩を目指して、森久保が9安打を打たれながらも完投勝利!

好投を見せる森久保翔也(聖光学院)

 福島1位の聖光学院が投打で力の差を見せつけた快勝した一戦。この試合では、先発の森久保翔也(3年)の投打にわたる活躍が光った。

 森久保は、青山学院大で活躍する岡野 祐一郎のフォームの流れが実に似ている。ワインドアップから始動し、左足をゆったりと引き上げてから、右足をバランス良く引き上げ、左肩をやや高く掲げてから、コンパクトなテイクバックから振り下ろす。その流れが実に岡野らしいのだ。さらに力みがなく、力の入れどころが分かっているので、コントロールが安定しやすい。本人に聞くと、やはり参考にしているようだ。
「僕は甲子園で投げていた岡野さんに憧れて、ここ(聖光学院)に入ったので、フォームとかも真似ています」
岡野といえば、とにかくテンポが良い投球ができる投手だが、森久保もテンポが良い投球が出来るのだ。初回からストライク先行の投球。しかしいきなり安打を浴び、2番にも四球を出すという苦しい立ち上がりになったが、二死一、二塁から5番菅野を最速となる140キロのストレートで空振り三振に打ち取り、2回表にも、一死二塁から安打を浴びたが、レフトの好返球でピンチを切り抜ける。

2回裏、聖光学院が得意の連打を見せて、試合の主導権を握る。2回裏、一死一、二塁から8番藤田理志(3年)の右横線適時二塁打で1点を先制すると、一死二、三塁から9番森久保が打席に立つ。
「ゴロを打てという指示が出ていたので、気楽な気持ちで打席に立つことができました」と振り返るように、中に入った変化球を軽打。左前2点適時打で3点を先制する。
 4回表、6番中野大成(3年)の適時打で1点を返され、5回表、一死二塁から3番糸井 優(3年)の左中間を破る適時二塁打で3対2と1点差に迫られるが、5回裏に笠原輝(3年)の適時打で援護。6回表から調子を上げていく。6回~8回まで打者3人に抑える投球を見せた。
 森久保はスライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップ、シンカーと実に球種は多彩だが、課題にしていたストレートをどんどん押すことをテーマにしていたようだ。確かに要所では140キロ近い速球をどんどん攻める投球を見せることができており、柴田打線を封じこみ、9安打2失点完投勝利を収めた。

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適時打を放った菅野(柴田)

 試合後、森久保は、「内外角に厳しいところに攻めることができたので、良かったです」とストレートをしっかりと投げ切ることができたことに手応えを感じていた。変化球では、125キロ前後のスライダーが多かったが、これも岡野から学んだこと。練習の手伝いに来ていた岡野からスライダーを投げるポイントを教えてもらった。

「それまで僕は捻るイメージで投げていたんですけど、ストレートを同じような腕の振りで、投げる際に切るイメージで投げることを教わりました」
すると、110キロ台だったスライダーが、コンスタントに120キロ台まで計測するようになり、武器になった。このエピソードで分かるのは、研究熱心で貪欲にチャレンジができること。また課題を設定しながら、投げることができるクレバーさもあり、180センチ72キロと体格的にも伸びしろもある。次のステージへ向けて楽しみな存在といえるだろう。

 その後、打線も援護を行い、15安打8得点と上位下位万遍なく打つ打線であった。聖光学院の斎藤監督、森久保も、今大会を夏の大会に向けてのリハーサルと位置付けているが、「久しぶりに公式戦という緊張感の中でやれたのが収穫」と話すように、今回の東北大会は重要な大会。
 聖光学院には、昨年から主戦で投げてきた今泉慶太という投手がいるが、森久保の存在によって今年も、投手力が出揃ってきた。本格派が2人もいるという意味では近年より充実した布陣といえる。
 打線では捕手の佐藤都志也(3年)はバットコントロールが良く、常に芯で捉える左の好打者。スローイングも2.00秒前後。コントロールも良かった。

 敗れた柴田だが、4番を打つ佐藤優悟は180センチ80キロと恵まれた体格をした強肩強打の捕手。スローイングタイムは1.8秒台を計測する強肩だが、ややコントロールが乱れており、2.00秒台で投げ込む時の方がずっと良いので、基本、ベース上で投げる意識を貫いてほしい。打撃は無安打に終わったように下半身が使えず、突っ込んだ状態でボールを見ていたので、見極めができていなかった。夏までにうまくボールを呼び込む形を作ってほしい。
 そして5番を打つ菅野大樹(3年)は、5回に三塁打を打ったように広角に打ち分ける打撃が光り、フットワークが良い守備が光る選手であった。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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