試合レポート

日大三vs佼成学園

2015.04.27

日大三27安打、4本塁打、25得点の圧勝で4年ぶりの優勝

本塁打2本の桑村(日大三)

 準決勝が終わった後、決勝戦について日大三の小倉全由監督は、「どれくらい打てるかです」と語っていたが、いざ始まると、どこまで打つのかという試合になった。

 準決勝から2日連続の試合。ともに関東大会出場を決めている中で行われる春季都大会の決勝は、二番手以降の投手の力を含めた、チーム力が試される試合になることが多い。4年前の決勝と同一カードになった、日大三佼成学園の試合は、一度火が付くと止められない、日大三打線の破壊力をみせつける一戦になった。

 佼成学園の先発は、1回戦以来の先発となる背番号11の梅田大樹
1回表日大三は、2番田中達朗が四球。田中は、すかさず盗塁に成功。さらに投手の牽制悪送球で三塁に進み、暴投で生還した。

 一方日大三の先発は、3回戦以来の先発となる背番号11の桑村和哉佼成学園は桑村の立ち上がりを攻め、2番川口諒太郎の右前安打、3番中嶋瞭の右越えの二塁打で同点に追いついた。ここまでは、打ち合いになることも予想されたが、2回表に、試合の流れは一気に決まってしまう。

 この回日大三は一死後、佐々木勝哉の二塁打に続き、9番で先発投手の桑村が、レフトフェンスギリギリの2ラン本塁打を放つ。日大三はここから7者連続安打、さらに7番宮木紳道の二塁打などでこの回、大量6点を奪う。

 その裏佼成学園は、7番伊藤勇太の本塁打で1点を返すものの、日大三の勢いは止まらない。 3回表はあっさり二死になったものの、4番坂倉将吾の本塁打などで得点を重ね、9番桑村のこの日2本目となる本塁打などで、一気に8点を入れる。「バッティングは好きなんです」と語る桑村。この日は打つ方でも本塁打2、二塁打1の大活躍であった。日大三は3回で早くも先発全員安打を記録している。

 佼成学園は3回表の途中から投手を2回戦で先発した背番号10の大河内繁行に交代する。大河内は4回5回を無失点で切り抜けたものの、6回表につかまる。この回日大三は、2番田中、3番田村孝之介、7番宮木、8番代打の山本幸次郎と二塁打を4本連ねて4点を入れる。

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エースの小玉和樹(佼成学園)

 佼成学園の主将でエースの小玉和樹は、日大三の猛攻を、ベンチやブルペンで見ていた。「ベンチで見ていても、すごさは感じました。でも夏を勝つうえで必要ですから、2人とも頑張ってほしいと思っていました」と、小玉は語る。

 8回表にも日大三は、川﨑拳士朗が本塁打を放つなど猛攻が続き、この回の途中から佼成学園はエースの小玉をマウンドに送った。小玉は4番坂倉に二塁打を打たれたものの、その後は抑えた。

 そして9回裏、25対2で日大三が大量リードし、勝負は既についているが、佼成学園も意地を見せる。一死後、7番伊藤の二塁打に続き、8番の小玉も三塁打を放ち、1点を返す。さらに代打田久保惇の左前安打で小玉も還り、9回に2点を入れた。もちろん、この2点は勝敗に影響を与えるものではない。それでも、大量リードを許した中でも、全力を尽くす姿勢は好感が持てたし、夏にもつながっていくだろう。
佼成学園の藤田直毅監督も、「厳しいゲームにはなったけれども、声も途切れませんでした」と、語った。

 25対4。佼成学園の選手には、過酷なまでの点数で日大三が4年ぶり13回目の優勝を決めた。それでも、日大三は、何点取っても気を緩めなかった結果であり、佼成学園も最後に粘りはみせた。

 大勝にも日大三の小倉監督は、「(相手が)エースの子だったら、こうはいきませんでしたから」と語る。一方の佼成学園の藤田監督は、「(日大三は)甘い球は逃しませんでした。厳しい洗礼を受けました」と語る。打ち込まれた先発2人は、「誰よりも落ち込んでいます」と藤田監督。それでも藤田監督、「相手をほめるべきで、必ず成長してくれます」と、期待を述べた。主将の小玉も、「今日の負けがプラスになる」と、語っている。

 秋季都大会佼成学園は、2回戦で都立篠崎にコールドゲーム(試合レポート)で負けている。そこから、春季都大会は決勝戦まで勝ち上がったうえでの言葉だけに、単なる強弁ではなく、説得力がある。小玉は最後に、「の負けが、の成長につながりました。夏は負けません」と、力強く語った。

 秋季都大会のコールド負けという点では、日大三も同じである(試合レポート)。「選手たちはどうしても、勝たなければならないとか、考えてしまっていました。挑戦者だし、負けたら練習をすればいい。余分なことは考えるなと言いました」と、小倉監督は語る。

 4月1日に始まった春季都大会は、日大三の優勝で幕を閉じた。今年は力のある選手が各チームに散らばっており、序盤から魅力のあるカードが多かった。ただ残念なのは、失策や四球で自滅するチームが多かったことだ。そうした傾向は、序盤だけでなく、後半戦に入っても続いた。ミスはある程度仕方ないにしても、基本の大切さは、忘れてはならない。と同時に、ミスを引きずらない精神的な強さも必要だ。

 要は失敗から何を学び、いかに次につなげていくかである。その意味では、はコールドゲームで敗退した日大三佼成学園が、その教訓を生かし、は決勝まで勝ち進み、関東大会に出場したことが示唆することは多い。試合には勝者もいれば敗者もいるが、夏は悔いのない試合を繰り広げてほしい。

(文=大島裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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