東海大高輪台vs都立片倉
東海大高輪台、救援徳重の投打の活躍で逆転勝利
好投した二番手・徳重勇輔(東海大高輪台)
東海大高輪台はこの2週間ほどの間に、攻守の中心選手である堀田祐樹が大腿骨を骨折して入院しているのをはじめ、ベンチ入りの20人のうち4人が骨折するという、非常事態であった。
それでも、都立片倉の矢ケ崎光、東海大高輪台の深澤周平、徳重勇輔という好投手を擁する両チームの対戦は、緊迫した好試合になった。
試合は都立片倉の矢ケ崎が速球にカーブ、スライダーなどを織り交ぜて好投すれば、東海大高輪台の先発・深澤も、速球にチェンジアップ、スプリットなど落ちる球が効果的に決まり、予想通りの投手戦になった。
試合が動いたのは、5回表都立片倉の攻撃。この回先頭の6番秋山夢道が右前安打で出塁したものの、後続が倒れ二死。チャンスはついえたかにみえたが、9番鈴木義浩が頭に当たる死球で出塁する(臨時代走)。変化球で球威はなかったので、問題はなかったが、試合に微妙な間が生じた。
続く1番川西成実も四球で満塁。2番小谷野龍の投手の足元を抜く中前安打で2人が還り、都立片倉が2点を先制した。
ところがその裏、矢ケ崎の様子がどうもおかしい。四球2に犠打、捕逸などで一死一、三塁のピンチを迎える。そこで都立片倉は、矢ケ崎に代えて松尾啓斗が登板した。実はこの時、矢ケ崎は足がつって、投げられなくなっていた。
代わった松尾は牽制で一塁走者角田優介を誘い出す。角田は一、二塁間に挟まれたが、その間に三塁走者関口功聖が本塁を突いて1点を返した。一見わざと挟まれたようにもみえたが、東海大高輪台の宮蔦孝一監督は、「サインを出したわけではないです。自分たちがうまく連動して動きました」と語る。
1点差に追いついた東海大高輪台は、6回から投手を「調子が上がってきている」(宮蔦監督)という徳重に交代する。この交代が、東海大高輪台の流れを作った。徳重はキレの鋭いスライダーなどで都立片倉打線を翻弄。4回を被安打1の無失点に抑え、試合を締めた。
一方、矢ケ崎が足をつって急遽登板した松尾は、球威はあるものの、球は矢ケ崎に比べると素直だった。6回裏にはエラーで出塁した1番加藤椋が3番島崎草太郎の中前安打で還り同点。7回裏には、右前安打で出塁した内田航輔を二塁に進め、投手ながら打撃もいい8番徳重がレフトオーバーの二塁打を放ち、東海大高輪台が逆転に成功した。
都立片倉の松尾は打たれながらも最少失点に抑え、8回の一死一、三塁のピンチも無失点で切り抜けたものの、都立片倉打線が徳重を攻略できず、東海大高輪台が1点差の勝利をものにした。
負傷者が多く、厳しい状況にある東海大高輪台であるが、好投手2人を擁して勝利を収めた意味は大きい。
一方、都立片倉はエースのアクシデントという不運があったものの、存在感は示した。矢ケ崎など、昨夏を経験している選手も多い。
シード校になった昨年と遜色のない実力があるはずだが、その点に関して都立片倉の宮本秀樹監督は、「(実力は)あると思う」と答えた後、「押された時に、攻め手がなかった。やることはたくさんあると思う」と、付け加えた。
(文=大島 裕史)