日大豊山vs明星
昨秋ブロック予選で八王子に0対1の投手戦を演じながら敗れた日大豊山と本大会進出逃しながらも実力校・東京明星の好カードは投手戦となった。この試合で活躍した選手をピックアップ。
日大豊山・吉村 貢司郎が要所を締め、1失点完投勝利!
吉村 貢司郎(日大豊山)投手
先制したのは東京明星。1回表、二死一塁から4番がスライダーを捉えて、右中間を破る当たりを放ち、1点を先制。だが2回裏、5番山下が左中間を破る二塁打を放つと、二死二塁から8番相川の右前適時打で1対1の同点に追いつくと、3回裏には2番秋庭の適時打で勝ち越しに成功する。
その後は膠着した状態に。日大豊山は走者を出してチャンスを作るものの、あと一本が出ず、試合は膠着状態に。日大豊山の上野監督は、「やはり公式戦が初めてなものですから、まだ本来の力を出し切ることができていませんでしたね」と初戦の緊張が打撃面に影響が出ていたようだ。
その中でもエースの吉村 貢司郎の投球が光った。182センチ80キロと実に恵まれた体格から投げ込む直球は常時130キロ~135キロ(最速136キロ)を計測。さらには、曲りが大きいスライダー、カーブ、ときおり投げ込むスプリットを織り交ぜながら投球を展開。ここぞというときに決まるストレート、スライダーのキレが素晴らしく、走者を出しても抑えることができていた。
終盤は二度のピンチを迎えた。7回表は、一死三塁のピンチを招きながらも、8番矢野を見逃し三振に打ち取り、9番森田を歩かしたが、1番折橋を中飛に打ち取ると、さらに8回表も、二死三塁のピンチを迎えたが、5番吉田を左飛に打ち取り、そして9回になっても、ストレートの球威は衰えることはなく1失点完投勝利を収めた。
完投勝利した吉村は、この試合の投球を振り返って、
「調子が良くなく、立ち上がりも、甘く入ったところを打たれてしまったのですが、自分なりに立て直すことができました」とコメント。また145球投げ切って完投勝利したことについては、「冬場にとにかく走り込んできたので。それを乗り越えたことは自信になっています」と冬場のトレーニングの成果がこの試合に出ていた。
上背の高さだけではなく、足を上げたときのバランスの良さ。開きが小さく、内回りで無駄のない腕の振り、バランスの良い体重移動と、技術的にしっかりしており、自分で力の入れ加減ができる。この日は気温が低かったので、ストレートの走りはそれほどでもなかったようだ。
「もっと暖かくなれば、さらによいボールを投げますよ」と上野監督が語るように、マックス時のストレートはどんなボールを投げ込むのか、とても興味深い。
また日大豊山は、181センチの大型外野手・小林陽一郎(右投げ右打ち)は、一発長打が見込める打者で、一つ一つの打球が力強かった。敗れた明星も、4番の塚本和也も、181センチ69キロと恵まれた体格を生かしたパンチ力ある打撃が魅力。
日大豊山打線を2失点に抑えた先発の矢野傑は、167センチ60キロと投手としては大きくないが、だが粘っこい投球術が持ち味で、125キロ前後の速球、スライダー、カーブを投げ分けることができていた。好選手が多く、夏までの進化が楽しみだ。
(文=河嶋 宗一)