木更津総合vs常総学院
追いつかせない!
鈴木健矢(木更津総合)
8回裏、常総学院に2点を返され1点差まで詰め寄られた木更津総合。先発したエースナンバーの鈴木健矢(2年)は終盤にきて、明らかに苦しんでいた。
だが、「同点に追いつかれていたら代えようと思った」という五島卓道監督の思いを感じ取ったのか、1点のリードで踏みとどまった。そして9回もマウンドへ。追いつかれなかったことでの続投を喜び、気合を入れ直す。常総学院の下位打線を簡単に打ち取り、二死。最後は代打で起用された相手エースの鈴木昭汰(1年)をレフトフライに打ち取り、右手の拳を握りしめた。
県大会では背番号13。千葉県一次予選まではオーバースローで、二次予選に入る時にサイドスローに転向したことを明かした。
「元々勧められていました。サイドにしたことでコントロールが安定するようになった」と秋季大会を勝ち進むにつれて、確かな成長を感じたようだ。五島監督も、「調子が良かったのでずっと使いたかった」と話す。
だが、前日の準々決勝(川越東戦)では、背番号10の左腕・早川隆久(1年)が完封。こちらも急成長を見せる下級生に先を越された。それだけに、今大会初登板になった鈴木は背番号1の意地を見せたかった。
9回を完投し、6安打3失点。球数はわずか103という投球内容。苦しみながらも追いつかれず、リリーフを仰がずに投げ切ったことで、さらに自信を深めるのは間違いないだろう。
先制3ランの小池航貴(木更津総合)
鈴木の完投へと導いた流れは、攻撃陣にあった。まずは初回の5番小池航貴(1年)の先制3ラン。「高校に入ってから、練習試合を含めて初めて」と自らもビックリの一発だった。
先攻だった木更津総合は、常総学院の先発・井上真幸(2年)が立ち上がりに苦しんでいたこもあり、一死から二つの四球でチャンスを作っていた。しかし4番の檜村篤史(2年)が凡退して、二死となった。
無得点に終わったら、相手投手を立ち直らせてしまうという意識があったという小池。だからこそ、「思い切り振りました」とフルスイングした結果が、この一発。井上と同じ関東大会初先発だった鈴木がこれでどれだけ楽になったかは、本塁打後の表情に表れていた。
もう一つ、大きなポイントとなったのが5回の1点だ。このイニングは先頭の1番木戸涼(1年)が死球で出塁し、2番石井伶(2年)が送りバントを決める。
一死二塁となって、3番小原直起(2年)が打席に立った。2回からリリーフしていた常総学院の樫村雄大(1年)が第1球を投じる。これが小原の左膝に当たった。だが避けていないと判定され、ボールとカウントされる。しかし小原はあまりの痛さに蹲った。一塁ランナーコーチの矢代明日翔(2年)が駆け寄り、コールドスプレーをかける。一度は打席に戻った小原だが、その後の球がファウルとなった際に、再び田邊を呼んでもう一度スプレーをかけた。
痛さで立っているのがやっとの状況に見えたが、小原は気合でバットを振る。5球目を打ち返すと、打球はセンターへ抜けて、二塁走者がホームイン。打った小原はガッツポーズをした後、またも痛さがよみがえってしまった。
この光景を見ながら、「あれだけ痛いのに、打ってくれた」と感謝の気持ちを明かしたのが完投した鈴木。小原は8回まで出場して9回の守りで交代したが、彼のためにも絶対に追いつかれるわけにはいかなかったのだ。