仙台育英vs八戸学院光星
144キロ右腕がウイニングショットに選んだのは!
ウイニングショットはフォーク!
佐藤世那(仙台育英)
7対2と5点をリードする仙台育英。9回二死、八戸学院光星の代打・澤谷晃祐(2年)を追い込んだエース・佐藤世那(2年)は、ウイニングショットを何にするか考えた。
「真っ直ぐかフォークどちらにするか迷ったんですけど、キャッチャーの郡司(裕也=2年)がフォークのサインを一発目に出したので、首を振らずにフォークにしました」。
三振を取るべく、自信を持って投げたフォーク。バッターの澤谷は三振に倒れ、エースは思わずガッツポーズ。「素直に嬉しいです」とインタビューでも笑みを見せた佐藤世那だが、応援団に挨拶をする際には少し涙ぐんでいたのが印象的だった。5安打2失点(自責0)12奪三振だった内容に、佐々木順一朗監督も及第点を与えた。
「今日はフォークと真っ直ぐが良かったと思います」とウイニングショットに迷うほどピッチングの調子が良かった佐藤世那。さらに、「光星打線が狙い球を絞ってきていたので、それをかわして、フォークとストレートを混ぜて決め球を変えた」と冷静な組み立てができたことも強調した。
ここまで2試合連続で先取点を許していただけに、この試合では先に点を与えないということもポイントだった。佐藤世那がホッとした表情を浮かべたのが4回のピッチングの後。このイニングは二死から八戸学院光星の4番澤田俊一(2年)に三塁打を浴びる。だがここまで2試合の反省を生かすためにも、絶対に得点は与えられない。次の5番中崎寿希也(2年)をショートゴロに打ち取り、佐藤世那はグラブをショートの平沢大河(2年)の方に向けた。
その裏の攻撃で3点を先制し、中盤以降は点差を生かしたリズム良いピッチングになっていった。
勝負をかけた代走・百目木優貴
その3点を先制した4回裏の攻防がこのゲームの勝負の分かれ目である。
仙台育英は先頭の6番紀伊海秀(2年)が内野安打で出塁すると、続く7番佐々木柊野(2年)は送りバントをしっかりと決めた。
このタイミングで八戸学院光星の仲井宗基監督は、先発の呉屋開斗(2年) からエース・中川優(2年)への継投を決める。
そして仙台育英の佐々木順一朗監督も、一つの手を打った。それが代走・百目木優貴(2年)の起用である。勝負がこの回なのか、もっと先のイニングにあるのかは考えたようだが、ポイントだった先取点のためにもここで手を打つ必要があるとの決断だった。
打席は8番谷津航大(2年)。中川の5球目に手を出すが、打球は内野ゴロ。しかし相手内野手のミスでボールはファースト後方のファウルグラウンドに転がった。これを見た代走の百目木が快足を生かしてホームイン。結果的に、佐々木順一朗監督が打った代走という一手が当たった。
この後、1番佐藤将太(2年)の三塁打と、2番青木玲磨(2年)のタイムリーでこのイニング3得点。こちらも結果的だが、八戸学院光星の仲井監督が打った継投という一手は失敗に終わった。
勝負に勝った仙台育英。佐々木順一朗監督は、「[stadium]コボスタ[/stadium]が怖くて仕方なかった」と話す。夏の宮城大会、秋の宮城中部地区予選で負けたのがこの日と同じ[stadium]楽天Koboスタジアム宮城[/stadium]で、ここ最近は縁起が良くない球場だと感じていた。
「東北大会の組み合わせで当たったのが14番。(このブロックだけは準決勝まで)全部[stadium]石巻市民球場[/stadium]だった。でもなぜか、日程が変わり球場も変わった。嫌なムードがチームにあった」とってもみなかった引き分け再試合の発生に苦笑いした指揮官。選手にも悩んだ末に、[stadium]コボスタ[/stadium]というカベがあることも話したという。
しかし、エースの佐藤世那は動じていなかった気持ちを話した。「来年の夏も使用する球場ですし、いずれは(苦い思いを)覆さなければいけない」。
バックアップ態勢もあった。この日は球場のすぐ近くにある学校からの全校応援。校歌を全校生徒と一緒に歌い、選手は大きくガッツポーズした。
決勝は1日空いて球場は[stadium]石巻市民球場[/stadium]になる。エースは最後にしっかりと準備して、明治神宮大会出場を掴むと誓った。