八戸学院光星vs能代松陽
1—4のスコアから能代松陽が得たもの
2回に先頭打者二塁打を放つ中崎寿希也(八戸学院光星)
「完敗です。自分たちの力を出させてもらえなかった。やってきたことを一切、やらせてもらえない。150回やって、1回くらい、勝てるかどうか。打たないといけないのに逃げる。ホームに還れないのに、走ってアウト。何1つ練習してきたことをやれなかった。自滅です」
試合後、能代松陽・工藤明監督は、捲し立てるように話した。声には怒りがこもっていた。
能代松陽は、八戸学院光星に1−4で敗れた。
2回、この回、先頭の中川昴がレフトにヒットを放ち、無死1塁とした。しかし、続く5番・石山凌は見逃し三振に倒れた。6番・檜森京弥のカウント1−1から、八戸学院光星の先発・呉屋開斗が一塁へけん制。1—3—6と渡って中川がアウトになり、檜森も空振り三振。
「2回の攻撃がマズかった。先手必勝が絶対で、中押しをしたかった」と工藤監督。
その裏、八戸学院光星はこの回、先頭の中崎寿希也がフェンス直撃の左越え二塁打を放つと、6番・大野樹のセカンドゴロで三進。1死3塁から7番・馬場龍星の犠飛で先制した。
4回、能代松陽は1番・渡辺陸がレフトオーバーの二塁打を放ったが、2番・松橋夏希は投ゴロに倒れ、渡辺は進塁できなかった。3番・鈴木樹也の打球はショートゴロ。二走・渡辺がサードへ突っ込み、タッチアウトとなった。4番・中川の死球で2死1、2塁とし、5番・石山がレフトへヒットを放つと、鈴木が三塁ベースを蹴ってホームへ。三塁でストップするべき当たりだったため、本塁であえなくアウトとなった。
その裏、八戸学院光星はこの回、先頭の5番・中崎がヒットで出塁。6番・大野の犠打で進塁し、7番・馬場のレフト前ヒットでホームイン。追加点を入れた。5回には2死から3番・足立悠哉、4番・沢田俊一、5番・中崎の3連続二塁打で2点を加え、リードを広げた。
能代松陽ベンチ
能代松陽は7回、1点を返したのだが、この回からマウンドに上がった八木彬から奪った1点。
工藤監督は「ピッチャーが変わってからでは、何も意味がない。勝負が決してからのヒットやタイムリーは意味がない。先発ピッチャーをどう攻略するかをやっているのに。(能代松陽の先発)野呂田のインコースを光星の選手たちは攻略しているのに、こっちはできなかった。全く、意味がない」と怒りは収まらない。
この怒りには、監督の悔しさも見えた。「できる選手たちだから、そこまで言うのですか?」と訊いた。
「練習でできていることです。なのに、ショートゴロでサードに突っ込む。レフト前ヒットでホームに突っ込む。普段やっていることなのにできなかった。あっちは回ってくれてありがとうと思ったと思いますよ。ここ(東北大会)でやれるのが、本当の力。ここでやれるようにやってきました」
練習でやってきたことが発揮できなかった、発揮させられなかった悔しさがにじんでいた。
「彼らがどう感じているかです」とも言った。
スコアは1−4だったが、工藤監督は、それ以上に感じたという。
「1−4ではなく、1−40にも1−400にも感じました。選手たちが光星さん相手に1—4でよくやったと勘違いしていたら、この先、伸びないと思います。100回やっても勝てない。大学生と戦っている感じでした」
おそらく、中途半端に敗れるよりは良かったかもしれない。スコア上は1−4での敗戦だが、数字を越えた差を体感できたことは、大きな収穫だろう。
八戸学院光星から「個々の強さを感じた」とも、工藤監督は言っていた。何をどうすればいいのか、敗戦後、すぐに答えは見つからなかったが、「ひとり一人の成長を促したい」。雪が溶けた頃、能代松陽ナインはどんな姿になっているだろうか。
(文=高橋 昌江)