松戸国際vs宇都宮南
9犠打の松戸国際、夢が膨らむ関東8強進出
完投した松戸国際のエース植谷 翔磨君
関東大会出場15校のうち、公立校は3校しかない。そのうちの、普通科校の2校が初戦で当たることになった試合である。
宇都宮南は、かつて1986(昭和60)年のセンバツには準優勝を果たしている伝統校だ。その後も、春は2回、夏は5回の甲子園出場実績を誇っている。この秋も、栃木県では圧倒的に抜けた力があるといわれていた作新学院を下しての1位校としての進出である。
松戸国際は、進学校として日によっては7時間授業もある。入試も、スポーツ推薦枠があるわけでもなく、普通に集まってきた生徒たちが、限られた条件の中で部活動として取り組んでいって甲子園を目指していこうという姿勢である。
石井忠道監督は、「それでも、頑張って一生懸命に努力してやっていけば、甲子園へも行かれるんだ!」という気持ちを“男のロマン”として、選手たちにも意識づけている。それが、また一つ実現へ向けて、前進した、そんな試合でもあった。
その入りのよさで、いける感触をつかんだ松戸国際はその裏、いきなり橋本君が中前打すると、バントと内野ゴロで三塁まで進めて、打っても4番の植谷君がきっちりと右前へタイムリー安打を放って先制した。
すべての打席でバントを決めた松戸国際・天野君
こうして、松戸国際がいい形で試合に入っていった。
しかし、宇都宮南も栃木県1位校としての意地がある。4回まで1安打に抑えられていたが5回、振り逃げの走者を三塁へ進めると、二死から8番石田君が左越二塁打して同点となった。宇都宮南の先発左腕宮川君も、先制こそ許したものの、2回以降は走者は出しても、よく踏ん張っていた。
こうして我慢の試合は、粘り合いという展開で後半に突入したが6回、松戸国際が突き放した。
6番からの松戸国際は、日下君が安打で出ると、石川君、天野君と連続バントで二死三塁とする。これは「二死でも、三塁まで走者を進めておけば相手に対してはプレッシャーになる」という石井監督の考えでもある。
そして、その通り9番今吉君が中前にはじき返して再びリードを奪う。さらに、橋本君も左翼線へ二塁打して追加点を挙げた。
7回にも松戸国際は、3番沢辺君が右線へ二塁打して、ついに宮川君を引きずり降ろして、リリーフした照井君から二つのバントでさらに1点を追加した。
松戸国際は終わってみたら、9犠打である。8番天野君は、すべての打席でバントを決めていたが、一本は安打になった。送るべきところは送るというのは、トーナメント大会の鉄則ともいえるのだろうけれども、松戸国際はそれを実践したことで勝利を呼び寄せたといってもいいであろう。
石井監督は、「こんないいゲームができるとは思ってもいませんでした。相手は格上ですから、とにかく喰らいついていこうと、そんな気持ちでした」と語り、下位打線がしっかりと犠打などを決めて活躍したことについては、「非力な選手がコツコツと努力してきて、その結果が出て嬉しい」と、喜びを表していた。
(文=手束 仁)