二松学舎大附vs早大学院
延長15回に決着!1対0で二松学舎大附が投手戦を制す
2年生エース嵯峨悠希(早大学院)
200球を超える熱投となった。
二松学舎大附の1年生左腕・大江竜聖と、早大学院の2年生エース・嵯峨悠希との投げ合いは、延長15回、ついに決着がついた。
この日の[stadium]江戸川区球場[/stadium] 第1試合『 法政大高 1x-0 大森学園』の延長サヨナラゲームに続いて、二松学舎大附vs早大学院の一戦も、両チーム無得点のまま、延長戦へと突入する。
早大学院のエース嵯峨は、
「回が進むにつれて、力が抜けて、ラクに投げられるようになってきました。9回からは、プレッシャーというよりも、楽しみながら投げることが出来ました」と好投を続ける。
嵯峨はこれまでの試合では、四死球を与えて、そのまま自滅して点を失うことが多かったというが、この試合では違った。
2回こそ、二死から、連続四死球で走者を背負うも、ここは落ち着いたピッチングで、1番三口英斗(1年)をセカンドゴロに打ち取って、ピンチを凌ぐ。
その後の3回から9回までも、被安打1と安定したピッチングで、二松学舎大附打線相手に無失点の快投。
一方、二松学舎大附の大江は、早大学院打線に9回終わって、7安打浴びながらも、ランナーを三塁に背負ってからは、ギアをチェンジ。
「力の抜き入れをしながら、投げていました。ランナーが三塁にいるときは、球威を上げて、抑えていきました」
リードする捕手の今村大輝(1年)もまた、
「ランナーを背負ってからの大江のピッチングは、点を取られる気がしないほど、いい球がきていました」と振り返る。
それでも、延長10回。一死から、2番金子和丘(2年)に四球、3番小菅弘暉(2年)に右前打を浴びて、一死一、三塁のピンチを招く。3番勝本勇人(2年)を三振に斬って取るも、5番佐藤友哉(2年)に四球を与え、二死満塁に。
「ここで体力を全部使ってでもいいから抑えようと思っていました」
そう考えながら、マウンドに立っていた大江の体に力が入っていることに気付いた捕手の今村は、
「肩の力が入っているぞ!気持ちだけで投げればいいよ!」とジェスチャーで大江に伝える。
それをみて、「ラクな気持ちで投げることができました」と大江は、6番田中雅也(2年)の代打・太田雅之(1年)をセカンドゴロに打ち取って、この試合一番のピンチを切り抜ける。
大江は、11回以降も無得点に抑え、早大学院のスコアボードに15個目のゼロをつけると、その裏の味方の攻撃に全てを託した。
1年生左腕・大江竜聖(二松学舎大附)
この回で、得点が取れなければ、再試合となる15回裏。
「ここまで1年生の大江がこんなに頑張って投げてくれているのに、自分たち2年生は何も出来ていなかった。最終回は、2年生でどうにか試合を決めなくちゃと思って打席に立ちました」と、先頭の3番北本一樹(2年)が、ここで早大学院・嵯峨の高めに入った真っ直ぐを弾き返す。
「越えてくれ!」北本の思いを乗せた打球は、左中間を割る二塁打となる。
ここで4番平野 潤(1年)。
平野は13回裏、一死一塁。4番橋本雅弥(1年)の打席で、2ストライク取られた場面から代打で出場。プレッシャーがかかる場面でありながらも、犠打を成功させた。もちろん、北本を二塁に置いたこの打席でも、バントを敢行。
「大江が頑張って投げてくれていたので、ここで1点を取りたかった。自分がチームのためにランナーを送る。その気持ちだけでした」と、三塁前の絶妙なコースへ転がした打球は、内野安打となる。
「これまで真っ直ぐで打ち取られていたので、絶対にまた同じ球が来ると思った。それでバットを短く持って、外野に飛ばそうという意識で打席に立ちました」
嵯峨が投じた231球目。
インコース高めに入った直球を岡田が振り抜く。打球は、レフト前へと抜け、三走の北本が生還。
延長15回裏、ついに二松学舎大附が、待望の1点を奪い、サヨナラで試合を決めた。
ここまで、15回を投げて被安打9、奪三振6、四死球8、失点1と力投した早大学院の嵯峨悠希は、
「15回裏に北本くんに二塁打を打たれたあの一球だけが今日の失投でした。試合前は相手は強いので、今までやってきたことを出すだけだと思っていましたが、楽しんで投げることが出来て良かったです。春に向けて、チームを勝たせられるピッチャーになれるように、もっと力をつけたいです」と語った。ゲーム前よりも一回り強くなったエースの姿がそこにはあった。
その嵯峨と投げ合った二松学舎大附の1年生エース大江竜聖。
この日、211球を投げて、被安打12、奪三振13、四死球5、失点0と完投した。
「監督さんがいつも、『厳しい試合を乗り越えれば秋は成長できるぞ』とおっしゃっているのですが、今日の試合で、チームがまた成長できたと思っています。甲子園に絶対行くという気持ちで、次も頑張ります」そう引き締まった表情で答えた大江。
0対0の均衡した展開の中、延長15回を戦い抜いたことで、両チームの選手たちが、これまで以上に、たくましくなったことは確かだ。
勝利した二松学舎大附は、準々決勝では雪谷と対戦する。この熱戦を糧にして、頂点までの残り3試合、白星を積み重ねていきたい。
(文=安田未由)