試合レポート

早稲田実業vs八王子

2014.10.19

主砲・加藤雅樹の一打で勢い付いた早稲田実業が八王子を下しベスト8!!

早稲田実業vs八王子 | 高校野球ドットコム

粘り強く抑える松本晧(早稲田実業)

 野球は「主砲が打つと勢いに乗る」というが、早稲田実業八王子の一戦はその格言が当てはまる試合であった。
5回まで0対0で試合を折り返す。押していたのは八王子で5イニングで走者が出塁していたが、なかなか決定打が出なかった。早稲田実業にとってこれを凌いだことは大きかった。
早稲田実業の和泉実監督は「うちからすれば望み通り。相手からすれば嫌な展開で、後半勝負になっていくと思いました」と振り返る。

 6回表、なかなか八王子横森 拓也(2年)を捉えることができなかったが、早稲田実業は二死から2番山田 淳平(2年)が中前安打で出塁する。さらに盗塁を仕掛け、一死二塁のチャンスを作ると3番田口 喜将(2年)は四球で、二死一、二塁となって、4番加藤 雅樹(2年)が打席に立つ。

 加藤は「絶対に打ってやろうと思って打席に入りました。高めに狙い球を絞っており、狙い通りの球が来ました」
高めの直球を捉えた加藤は、ライトの頭を越える三塁打を放ち2点を先制する。

 「加藤が打つとチームは勢いに乗る」と和泉監督が説明するように、さらに5番玉川 遼(2年)がレフトオーバーの適時二塁打を放ち、3対0。6番富田 直希(2年)の適時二塁打で、一気に4点を先制する。

 早稲田実業は、7回裏に八王子の9番竹中 裕貴(1年)、1番石井 雄也(2年)に連続適時打を浴びて2点を追い上げられるが、8回表、一死から4番加藤が肩口に入る変化球を逃さず、ライトスタンドへ飛び込む本塁打を放った。

 また加藤の一打によって打線は活気付き、5番玉川の本塁打、6番富田が中前安打で続き、7番宮崎 廉太(2年)が右中間を破る適時三塁打、二死三塁となって、9番金子 銀佑(1年)の中前適時打で、8対2。試合を決定づけた。
早稲田実業が8対2で八王子を下して、ベスト8進出を決めた。


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8回表、本塁打を放つ加藤雅樹(早稲田実業)

 やはりこの試合は4番の加藤の活躍に尽きる。1年生の時に比べてさらに成長を見せている。

 まず体付きだ。183センチ81キロ。昨年の登録より2キロ増えているが、腰回り、太ももがだいぶがっしりしてきた。1年間の成長の跡を感じさせる。
また打撃フォームも変えた。具体的に言うと、以前より縦のスイング軌道になったのだ。なぜこのスイング軌道になったかを聞くと、
「どうすればレベルの高い投手に振り負けないかを追求した結果、今のようなスイング軌道になりました」
アッパースイングとイメージしがちだが、加藤の場合、トップを取ってからインパクトに入るまでのヘッドが下がらずにスイング軌道することができている。そのため高めでもしっかりとさばくことができているのだ。加藤が目指す長距離打者へ、変化を遂げようと工夫している様子が感じられた。

 本塁打にした高めに入る変化球は、普段の練習試合から本塁打にしているという。甘い球を見逃さず打ち返す。まさにスラッガーに相応しい能力を加藤は秘めている。今日の本塁打で高校通算33本塁打。加藤は来年夏まで、どこまで本塁打を量産をしていくのだろうか。


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捕手としても引っ張る加藤雅樹(早稲田実業)

 加藤は1年では外野だったが、適任な捕手がいないということで捕手へコンバートした。安定したキャッチング、ワンバウンド処理能力、1.90秒~2.00秒前後を計測するスローイング、捕手としての能力も高い。
加藤自身は「難しいポジションでありますが、とても楽しいポジションです」と捕手のポジションをしっかりと楽しんでいるようだ。

 そして人間性も大きく変化した。
1年生の時は特に感情を出すこともなく、スマートにプレーする選手だったが、今では先制打を放った時に大きくガッツポーズを見せるなど、感情を表に出すようになった。
和泉監督は「1年の時は気持ちが前に出ない弱さがあり、本人もそれを自覚しているようでした。だから自分なりに試合の時はスイッチを入れて、鼓舞をしているのでしょう」

 元からポテンシャルの高さがのある選手だが、気持ちを前に出すことができるようになったことで、勝負所でも結果を残すことができるようになったと考えられる。自分の取り組みについても理路整然と説明が出来るところも強みで、精神的に成熟している。

 今年の早稲田実業は「加藤を中心としたチーム作りをしてきた」と和泉監督が説明するように、まさに加藤が打って、チームは勢い付き、勝利をモノにしたゲームだった。

 強いチームには必ず良い捕手がいるものだが、加藤は打撃、守備、メンタリティの三拍子が優れた捕手。2年ぶりのセンバツ出場の鍵を握る存在であることは間違いない。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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