試合レポート

都立篠崎vs佼成学園

2014.10.18

今までの取り組みが結実!都立篠崎が佼成学園にコールド勝ち!

都立篠崎vs佼成学園 | 高校野球ドットコム

苦しい投球を強いられた小玉和樹(佼成学園)

 7 対 0
衝撃的な結果となったが、都立篠崎の取り組みが結実した試合となった。都立篠崎は組み合わせが決まった後、すぐに佼成学園のエース・小玉和樹の対策に取り組んだという。

 都立篠崎の牛久保和哉監督は、
「今大会は小玉君を標準に絞って練習に取り組みました。速球も速いですし、変化球も切れる投手。ですが、両方を追いかけてはどうしようもない。何を打つ練習をさせたかといえば、ストレートです。速いストレートに振り負けない練習に取り組んできました。逆に言えば変化球を織り交ぜられたらお手上げ。小玉君がそういう投球をすれば、監督の戦略ミスだから気にせず思い切っていけと伝えました」

 都立篠崎ナインは1回裏から二死満塁のチャンスを作り、得点にはならなかったが、これまで取り組みが生きていると感じさせる内容だった。

 佼成学園の小玉は初回の内容を振り返って、直球が狙われているのを気付いていた。2回では新チームがスタートしてから取り組んだカーブ、スライダーを織り交ぜ、1回裏の最後の打者を合わせ四者連続三振。好試合になるかと思わせる投球だった。

 しかし3回裏、都立篠崎がチャンスを作る。四球2つと牽制ミスなど一死二、三塁のピンチを迎えた。
この時、小玉はこう考えた。
「直球で押し切れるじゃないかと思っていました」
小玉は常時135キロ・最速139キロを計測したストレートでどんどん押していくが、ストレートを標準に絞っていた都立篠崎打線の餌食になった。4番藤関 唯斗(2年)の一ゴロの間に三塁ランナーが返り都立篠崎が1点を先制する。


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好投を見せる宮澤祐馬(都立篠崎)

 このままで終われれば良かったが、5番吉野 翔太(1年)も初球の直球を捉え、適時二塁打を放ち、更に1点を追加し、2対0。この二塁打によって小玉は冷静さを失ったのか。直球で押す単調な投球に。6番川畑 武(1年)に四球を与えて、二死一、二塁となると7番望月 遼太(1年)にも直球を捉えられ、右中間を破る適時三塁打を許し、二者生還し、4対0。

 こうならると流れは都立篠崎に。8番宮澤 祐馬(2年)の適時打で、三塁走者が生還し、さらに1点を追加。この回、一気に5点を先制する。
まさに都立篠崎の戦略勝ちだった。

 小玉は、「やっぱり直球が狙われていたと思います。投球が単調になって本当に悔しいです」と肩を落とした。

 こうして佼成学園相手に大きな5点を先制した都立篠崎。打線の援護にエースの宮澤も好投を見せた。本格派の小玉と違い、宮澤はまさに技巧派。右サイドから投げ込む直球は125キロ前後と速くない。
しかし速くないからこそ、ボールを動かす。さらにスライダー、チェンジアップは鋭く切れるというよりも、「うまく抜いていることを意識している」と宮澤が語るように手元で緩く変化する軌道に、佼成学園の打者は全くタイミングが合わなかった。

 リードしてからは、投球に余裕があり、淡々と自分の投球を見せていた。また守備も堅く、外野手は打者を見ながら、ポジショニングを変えながら、平凡なフライにしたり、内野手は確実にゴロをさばき、アウトを積み重ね、佼成学園に得点を与えない。

 追加点をあげたい都立篠崎は7回裏。無死一塁から、3番鈴木 湧(2年)が右中間を破る適時二塁打を放ち、1点を追加。
続く8回裏にも、二死二塁の場面で、佼成学園バッテリーのバッテリーミス。ボールがネット裏に転々と転がる間に本塁へ生還。都立篠崎が8回コールド勝ちを決めた。


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サヨナラ負けにガックリと肩を落とす小玉(佼成学園)

勝利を決めた都立篠崎の牛久保監督は、
「今日は今までの取り組みが選手たちが最大限に発揮したと思います。今年は1番~5番まで夏を経験して、彼らが攻守の中心になるよう指導をしてきましたが、下位を打つ1年生たちも本当に良く打ちました」選手たちの活躍をほめていた。

 敗れた佼成学園。先発の小玉は4回以降、単調だった投球を改め、4回以降は新しく習得したシンカー、縦スライダーを使うなど、今まで縦の変化を使って打ち取ることができるようになった。こういう投球が出来る投手だけに3回裏の投球が勿体なかった。

 春までの課題として、「速球も速くすることも大切ですが、それよりも今よりも変化球がカウントを取れたり、決め球として使えるように磨いて、投球の幅を広げていきたいと思います」悔しい敗戦をしながらも、淡々と自分の課題を述べていた。

 今大会でも屈指の好投手を打ち崩しベスト16入りを決めた都立篠崎。次は都立墨田工だ。

 牛久保監督は、
都立墨田工さんは夏に練習試合をしたことがありまして、とても力があるチームだと感じております。気を引き締めて臨ませたいと思います」

 監督はじめ、選手たちは早くも次の戦いを見据えていた。
西東京ベスト16の佼成学園をコールドで破った都立篠崎。記憶に残る今大会一の番狂わせであったことは間違いないだろう。 「篠崎旋風」。巻き起こす気配は充分にある。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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