上野学園vs聖パウロ学園
上野学園・佐藤康、内角直球とスライダーを駆使して、11奪三振完投勝利!
共にブロック予選では強豪を破ってきた。聖パウロ学園は岩倉、安田学園を破り、都大会進出。そして上野学園は近年、実力を付けている駒込を破って本大会出場を決めた。
1失点完投勝利を挙げた佐藤康(上野学園)
上野学園・小川貴智監督は「エース・佐藤を中心にチーム作りをしてきました」と語るように、佐藤 康貴(2年)に全幅の信頼を寄せる。佐藤は右スリークォーターから威力ある130キロ前後の速球と打者の手元で大きく滑るスライダーを武器にする投手だ。
右スリークォーターにしたのは、新チームになってから。理由は、制球力を付けるためだ。それまでの佐藤は右オーバーだった。
「あの頃は今よりも高めに浮くことが多く、コントロールに不安があって、全く投球が出来ていませんでした」
新チームになってから、右肩を痛め、離脱していたが、じっくりと治療に励み、そしてスリークォーターのフォームを固めた。フォームを改良して佐藤は、
「オーバーの時よりも、腕の振りはスムーズになって、また出所も見難くなったと思います。スリークォーターにして一番生きたのはスライダーで、得意球になりました」と自信をもって語るように、スライダーを軸に、投球を組み立てるスタイルだ。
その佐藤はまず初回を無得点に抑える。
そして2回表、上野学園は一死から内野安打、6番荒井 悠太(2年)の中前安打で一死一、二塁のチャンスを作ると、その後、二死二、三塁となって、8番佐久間 康平(2年)の三塁への内野安打で1点を先制した。
さらに4回表、6番荒井が左中間を破る二塁打で、一死二、三塁のチャンス。ここで上野学園は7番大滝 友章(2年)の場面で、スクイズを仕掛ける。しかし大滝は空振りして、挟殺プレーになるかと思われたが、三塁走者の河野 亮太(2年)が捕手のタッチをかいくぐり、生還。いわゆるホームスチールで2点目を取る。さらに大滝が死球で歩いて、一死一、三塁になり8番佐久間が適時打を放ち、3点目。4回までに3点を取り、佐藤を援護する。
5失点ながらも力投を見せた町田(聖パウロ学園)
3点の援護をもらった佐藤。走者を出しても簡単に点を許さない。4回裏は一死三塁のピンチを凌ぎ、5回裏には三者連続三振。
そして6回裏には一死一塁から3番吉田哲也の代打・井出大輝(2年)が中越え適時三塁打を打たれ、1点を取られたが、ピンチを凌ぎ、失点を1点にとどめる粘り強い投球をみせる。
佐藤の粘投に打線も応える。9回表に浅見 渓(2年)の適時打で、5対1と点差を広げた。
そして9回裏、佐藤は三者凡退に締め、1失点完投勝利を収めた。そして11奪三振。見事な投球であった。
試合後、佐藤はスライダーを生かす内角直球が良かったと振り返る。
「自分の武器はスライダーなのですが、スライダーだけでは打たれてしまうので、スライダーを遠く見せるインコースストレートが重要です。今日はインコースのストレートのコントロールが良かったので、しっかりと攻められました。またスライダーが決まれば、インコースのストレートも活きます。今日はそれができました」
両方の球種の精度が高ければ、ストレートとスライダーの良さが出る。佐藤のコメントからピッチングのコツを理解しているように感じた。
また反省点として、
「今日はカーブが全くダメでした。カーブの時になって身体が開いてしまい、コントロールが出来ませんでした。カーブを使って、緩急も使えればよかったのですが、今日はストレートとスライダーのコンビネーションで、単調な投球だったと思います。内容は満足していないです」
と自己評価した佐藤。決して今日の投球に満足はしていなかった。これほど向上心が高ければ、次の試合でも好投が期待できるだろう。
小川監督は、
「今日の試合内容は出来過ぎです。新チーム当初は力がなかったチームですから。本当に頑張って、ここまで来ていると思います。次の試合では佐藤を中心に守りの野球で勝ちあがっていきたいと思います」
次の試合へ向けての意気込みを語った。2回戦ではベスト16入りをかけて明大明治と対戦する。
(文=河嶋宗一)