出水vs鶴丸
「泥臭い全員野球」で4強へ・出水
好守にチームを牽引した4番・児玉(出水)
出水が持ち味の「泥臭い全員野球」(児玉大地・2年)を発揮し、下薗洋一郎監督が現役だった1995年春以来、実に19年ぶりとなる4強入りを勝ち取った。
試合の主導権を手繰り寄せた7回の6点は出水らしい泥臭さが凝縮されていた。打者10人で6安打だが、長打は1本もない。得点は二死からだったが、しぶとく逆方向に弾き返す打撃で、7番・濵島真尋(2年)から5連打を浴びせた。勝ち越しの5点目は8番のエース濵島隆良(2年)の内野安打。際どい判定だったが、「打席に立てば投手かどうかは関係ない。全力で走るだけ」と必死の全力疾走で一塁ベースを駆け抜けた。
鶴丸の左右好投手2人に15安打を浴びせた。打撃に関して「特別な練習はしていない」と下薗監督は言う。ただ、朝練をはじめ限られた時間の中で徹底して振り込み、打ち込んできた手応えはあった。「誰かが打ったことで、周りが勇気をもらって打線がつながった」(下薗監督)。
その象徴のような男が4番で捕手の児玉だ。大島北戦のあと、左手首の疲労骨折が判明し、4回戦のれいめい戦はスタメンを外れた。
前日まで出場できるかどうか、微妙な状態だったが、痛みも引き、やれる手応えがあった。打撃よりもキャッチングに影響がある左手首だが「濵島も自分が受けないと投げにくいはず」と思った。何より、「3年生を全校応援に鴨池に連れてくる」(濵島隆)目標のために、自分も貢献したい強い想いがあった。
2本の長打を含む3安打1打点と、ケガの影響を感じさせない気迫のスイングで、主砲の仕事をこなし、チームに勇気を与えた。手首のケガも、元々はチーム一振り込んで、打ち込むほどの練習熱心さが招いたものだ。そんな主砲の頑張りに「あいつは出高歴代ナンバーワンの4番ですよ」とエース濵島隆は最大の賛辞を送る。
各打者の粘りと集中に応えるように、エース濵島隆も力投し、9回を投げ抜いた。目標の「全校応援」は達成した。次は「打倒、私学」(濵島隆)をかなえるために、強豪・神村学園に挑む。
鶴丸は、2本のホームランを放つなど能力の高さはみせたが、7失策と守備で崩れた。「8月の鹿児島戦に続いて、自分たちのミスで自滅した。記録にないミスもたくさんあった。この冬でそのミスをゼロにしないとこれからも勝てない」と村山新之助主将(2年)も重い教訓をかみ締めていた。
(文=政 純一郎)