試合レポート

鳴門vs小松島

2014.09.22

鳴門が誇示した「勝負強さ」と「引き出し」

鳴門vs小松島 | 高校野球ドットコム

尾崎 海晴(鳴門)

 「なんたる勝負強さ!そしてなんたる選手層!」。試合終了のサイレンが鳴り響き、いつもの校歌「岩をも砕く 不断の力」が流れ始めたとき、思わずこの言葉が頭に浮かんできた。

 大会前、鳴門・森脇 稔監督のチーム評はいつもと同じく「ウチは弱いですよ」。だが、この試合では「今日は4年前、夏の徳島大会決勝での(6対7)リベンジをテーマにして、左腕・河野 竜生(1年・左投左打・172センチ72キロ・鳴門市第二中出身))くんの攻略もうまくいった」(豊富 尚博監督)小松島の7安打3得点の健闘があったことで、経験に立脚した強さがいっそう際立つことになっている。

 その象徴的シーンが小松島3番・酒井 大輝(2年・遊撃手・右投右打・165センチ61キロ・徳島市南部中出身)が全打点をたたき出し、3対3の同点で迎えた8回表。ここで鳴門ベンチは尾崎 海晴(1年・投手・右投右打・175センチ78キロ・鳴門市第一中出身)、佐原 雄大(1年・捕手・右投右打・175センチ87キロ・徳島ホークス<ヤングリーグ>出身)コンビを投入。いわゆるひとつの「抑えバッテリー」である。


鳴門vs小松島 | 高校野球ドットコム

先発・原本 静悟(小松島)

 その結果は大吉であった。「夏の甲子園が終わった後、腕をサイドの位置まで下げたことでスライダーの曲がりがよくなった」尾崎は、スライダーがシンカーに近い軌道に変化。最速137キロを甲子園でマークしたストレートとのコンビネーションは、まるで森脇監督がシンカー修得を勧めた鳴門の大先輩・潮崎 哲也(現:埼玉西武二軍監督)のようであった。

 一方、佐原も二塁送球2秒をゆうに切る強肩と確実なキャッチング、強気の配球で尾崎のよさを存分に引き出す好リードも披露。8回裏、粘り強く投げ続けていた小松島エース・原本 静悟(2年・右投右打・176センチ75キロ・小松島市立小松島中出身)の夢を断ち切る鳴門6番・森 裕汰(2年・一塁手・右投右打・173センチ71キロ・吉野川市立鴨島第一中出身)の決勝アーチが飛び出した背景は、今大会初登板にもかかわらず2回を被安打1・無失点に封じたバッテリーの存在があった。

 ちなみにこのとき、河野は投手から左翼手へ。俊足強打の4番・手束 海斗(1年・右投右打・170センチ85キロ・鳴門市大麻中出身)は捕手から中堅手へ。リスク管理にも怠りはない。

 それでも指揮官はいつもの辛口発言を繰り返す。

 「このチームはこんなもん。どうにか投手中心で勝たないと」

 四国内の9割以上の野球部が、「甲子園出場」をゴール地点としている中、鳴門は完全に「全国で勝つ」へ目線が向いている。

(文=寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.14

【春季東京都大会総括】日大三、二松学舎大附など強豪校がノーシードの波乱! 新基準バットでも9本塁打の帝京が驚異の打力で王者に

2024.05.14

【2024夏全国ノーシード校一覧】二松学舎大附、履正社、智辯学園、沖縄尚学などビッグネームがノーシードで夏に挑む

2024.05.14

広島「今季新戦力の現状通信簿」、新外国人の復活はなるか!?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?