聖光学院vs近江
聖光学院、相手の隙を突くバント攻撃で逆転サヨナラ勝利!
聖光学院対近江、全国を代表する強豪校同士の一戦。
お互い打撃のチームとして注目を集めるが、守備で魅せ合う試合となった。
前半5回はお互い無得点のまま迎えた6回表。
近江は先頭の堀口 裕真(3年)が中前安打で出塁。さらにボークなどで一死三塁となって、3番植田 海(3年)。植田は初球を捉え、レフトへ大きな当たり。オーバーフェンスするのではと思わせる当たりだった。だがレフトの八百板卓丸がフェンス際でスーパーキャッチ!犠飛で1点を先制する。
聖光学院とすれば、犠飛で済んでよかったと思う当たりだ。これは八百板がしっかりと深めの守備についたからこそ追いつくことが出来た好プレーである。もし抜けていれば、違う試合展開になっていたであろうビッグプレーだった。
だが近江も好守備を連発し、6回裏は僅か5球でチェンジ。
7回裏には二死二塁から三遊間に転がった安打性の当たりを植田が追いつき、そのままワンステップスローでアウト。さらに8回裏には併殺に打ち取り、試合の流れは近江ペースとなった。
先発の小川 良憲(2年)は135キロ前後の速球、スライダー、カーブをテンポ良く投げ分け、17イニング無失点。じわりじわりと聖光学院を追い込んでいた。
2試合連続完封も見えたが、聖光学院が執念の反撃を見せる。
柳沼 健太郎(3年)が右前安打を放つと、4番安田光希(3年)が打席に立った。安田はちらっと三塁の守備位置を見ていた。安田はセーフティバントを試みるために確認していたのだ。
そして初球から犠打を試み、右打者ながら3秒71という驚異的なタイムで、内野安打にさせる。なかなかの俊足である。犠打で一死二、三塁となって、海老沼圭司(3年)を投入。
この時、気になったのは守備位置だ。
近江は中間守備を敷いており、それほど深くない。同点ならばOKのシフトにも見える。ただ併殺を狙うのであれば、満塁策で埋める考えもありだが、近江バッテリーは勝負にこだわった。
そしてバッテリーはインコースへ投げ込んだ。
小川の球はナチュラルにシュート回転する。そのため右打者には詰まって振り遅れのゴロになりやすい。そうなると打球が弱いままの中間守備は、ややリスクがあると思った。
案の定、打球は勢いの弱い二塁ゴロ。バックホームするものの、セーフとなり、聖光学院が土壇場で追いつく。
なおも一死一、三塁となって、ここまで6打数5安打の石垣 光浩(3年)。石垣は1ストライク1ボールからセーフティスクイズを敢行。
近江守備陣は虚を突かれた形となり、バックホームも出来ず、聖光学院のサヨナラが決まった。
聖光学院は福島大会では高打率で勝ち上がっているが、甲子園に入ってからは接戦での勝利が多い。やはり打てないなりにどうすれば勝てるのかを考えた野球が出来ている。
投手陣では2番手の船迫 大雅(3年)の狙い球を絞らせない投球が光る。また野手では、堅実な守備に加え、犠打で近江守備陣をかき乱したしたたかさ。
やはり8年連続甲子園出場。相手の隙を突いた野球がしっかりと選手たちに染みついている。
今年は園部聡(オリックス)のようなスラッガーがいるわけではなく、歳内宏明(阪神)のような大エースがいるわけでもない。
だが「粘り強さ」と「流れを渡さない試合運び」は今まで出場したチームでは一番かもしれない。
(文:河嶋宗一)
【野球部訪問:第90回 近江高等学校(滋賀)】