近江vs鳴門
鳴門と四国勢が克服すべき「走塁型チーム」対策
試合の勝敗は1回表、鳴門が二死満塁の絶好機を逃し、2回裏に徳島大会では1年生にして先発の柱を担ってきた河野 竜生(左投左打・172センチ72キロ・鳴門市第二中出身)が近江打線に同じく二死満塁から3連打・5点を失った時点でほぼ決してしまった。
鳴門打線は9安打を放ったが、昨年のような長打は0。
サイドスローに近いスリーウォーターから最後に腕が出てくる変則フォームから、最速145キロのストレートにスライダー・シンカー気味の変化球を投げ分けた近江2年生・小川 良憲(右投右打・178センチ74キロ・彦根市立東中出身)に要所を抑えられた感が強い。
そして守備面に目を転じれば、鳴門は5盗塁を許し、盗塁阻止は0。滋賀大会で6試合23盗塁を記録した近江の足を全く止められなかったことが致命傷に。
安樂 智大(済美3年)の後、スケール感と聡明さで「四国のライジングサン」候補筆頭格の中山 晶量(1年・投手・右投右打・185センチ75キロ・生光学園中<ヤングリーグ>出身)が自己最速となる139キロをマークするなど、個人にフォーカスすれば楽しみな点も多々あった鳴門であったが、完敗の要因は大きく言ってこの2点だろう。
そして、この敗戦パターンは今回の鳴門に限ったことではない。
2011年・健大高崎に開幕戦で逆転負けを食らった今治西(愛媛)や、昨年・花巻東に3回戦で敗れた済美(愛媛)、記憶に新しいところでは明徳義塾(高知)ですらも、今年センバツ準々決勝では足を絡められて佐野日大(栃木)の前に敗れている。
もちろん、2番・小田 快人(3年・中堅手・右投左打・174センチ67キロ・生駒ボーイズ<奈良>出身)、最初で最後の夏で躍動した3番・植田 海(3年・遊撃手・右投右打・175センチ72キロ・湖南ボーイズ→日本航空高<山梨>)両選手の2盗塁をはじめ、全員がスピード感を備える近江の素晴らしさに異論の余地はない。
ただ、これを「素晴らしい。相手が上」の一語で片付けては、進歩はない。
「走塁型チーム」の克服策は相手を上回る走塁型チームの構築なのか?
強肩捕手・クイックに優れた投手含むバッテリー力・ディフェンス力の強化か?
それともその前段階であるコーディネイトにあるのか?
これは鳴門・徳島県勢だけでなく、「走塁型」に辛酸をなめ続ける四国全体で考えるべき課題だ。
(文:寺下友徳)
【野球部訪問:第90回 近江高等学校(滋賀)】