試合レポート

東海大望洋vs専大松戸

2014.07.27

東海大望洋が初の栄冠!

 千葉大会の決勝戦が7月26日(土)、[stadium]QVCマリンフィールド[/stadium]で行われた。

 優勝校•Aシード専大松戸と、Bシード東海大望洋。両校とも夏の甲子園経験は無く、どちらが勝利しても初出場となる一戦。熱い接戦が予想された。

 先攻は東海大望洋準決勝東海大浦安をコールドで撃破し、波に乗る東海大望洋専大松戸の投手陣がこの打線をどう抑えるかが、この試合のポイントの一つであった。

 専大松戸の先発は、背番号10番の金子 直登。今大会、先発の軸として好投を続け、決勝進出の原動力となった。準々決勝準決勝に続いて大一番での先発も任された。

 東海大望洋の1番は鈴木 将平。走攻守の三拍子が揃った好選手で、東海大望洋のキープレイヤーだ。専大松戸とすれば、この鈴木を抑えて、この試合のリズムを掴みたいところ。

 鈴木はファールで粘り、根負けした金子からいきなり四球を選び出塁する。東海大望洋は、このチャンスにいきなりヒットエンドランを仕掛ける。ヒットにこそならなかったものの、一死二塁のチャンスを作る。簡単にバントで送らず、積極的に動いてきたこのワンプレイに、この決勝戦での東海大望洋の攻めの姿勢が伺えた。

 東海大望洋は、その後二死ながら一、二塁と先制のチャンスを迎える。ここで打席には1年生ながら5番に座る峯尾。このチャンスに峯尾は1、2塁間に痛烈な打球を放つ。先制タイムリーかと思われたが、専大松戸の二塁手•藁谷が素早く反応してこの打球を好捕。堅い守備で金子を救った。

 惜しくも先制を逃した東海大望洋の先発マウンドはエースナンバーの宇津木 総。こちらも昨日の準決勝からの連投である。金子がやや苦しい立ち上がりであったのに対し、宇津木は抜群の投球を見せる。先頭の稲葉から空振りの三振を奪うと、当たっている2番•阿部 拓磨、3番•高田 拓実も打ち取り三者凡退で攻撃陣のリズムを作る。

 初回のピンチを味方の攻守で切り抜けた金子。二回は先頭打者を打ち取り、本来の投球を取り戻すかに見えた。しかし、試合はここからまさかの展開を迎える。
7番•主将の木村 幸樹が、高めに浮いたストレートを力強く振り抜くと、打球はグングンと伸びて左翼ポールに直撃。豪快な一発で、東海大望洋が大事な先制点を奪うと、その後も猛攻を見せる。
続く8番の久保山が右前安打で出塁すると、9番の宇津木は送りバントの構えからヒットエンドランを敢行。これが1、2塁間を破る安打となり、一死一、三塁とチャンスを広げる。

 ここで打席には1番の鈴木。鈴木はこの打席で、自打球を顔に当ててしまうアクシデントに合う。このプレイで、試合は数分間の中断。鈴木が応急処置を終えて打席に戻り、再開した直後、専大松戸にバッテリーエラーが出てしまう。東海大望洋は、思わぬ形で2点目を奪うことに成功した。


 専大松戸ベンチは、悪い流れを変えようと早めに動く。昨日までの制球では無い金子をここで諦め、背番号11番の角谷に交代。

 しかし、この継投も東海大望洋に傾いた流れを止められない。一死一、二塁とチャンスを広げた東海大望洋は、2番の山口が右中間を深々と破る適時三塁打を放ち、4対0とリードを広げる。専大松戸は、代わったばかりの角谷に代えて3番手に薄井をマウンドに送り、なんとか悪い流れを断ち切ろうと試みる。

 しかし、代わった薄井から東海大望洋はスクイズで5点目を追加。ランナーも無くなり、流石に猛攻が終わったかと思われたが、二死無走者から、4番の石井が高めの変化球をフルスイング。レフトスタンド中段への本塁打を放ち、この回なんと6点目。専大松戸の3投手から、2本塁打を含む5安打の猛攻で東海大望洋が大量リードを奪った。

 序盤とは言え、あまりにも大きな6点を先制された専大松戸。早めに1点でも返したいところであったが、東海大望洋•宇津木の前に、2回、3回と得点を奪えない。

 6点のリードを奪った東海大望洋専大松戸3番手の薄井から、チャンスこそ作るものの追加点には繋がらない。

 このまま、試合は膠着状態に入るかと思われたが、4回裏に思わぬ形で専大松戸に流れが傾く。この回先頭の2番•阿部が中前安打で出塁。二死ながら、この試合初めて二塁にランナーを進め、得点のチャンスを迎える。ここで打席には今大会打撃好調の原 嵩。原が放った打球はセカンドの後方に上がるフライ。チャンスは潰えたかに見えたが、この打球が二塁手と右翼手の間にポトリと落ちる。ラッキーな適時二塁打となり、この試合初得点。

 続く二死二塁のチャンスに、6番•岡本の打球はレフトに高く上がった平凡なフライ。この打球を、東海大望洋レフトの木村が、まさかの落球をしてしまう。この失策によってラッキーな形で専大松戸に2点目が入り、試合の流れが変わり始める。

 5回表、この試合初めて東海大望洋の攻撃を3人で抑えて試合の流れを掴み始めた専大松戸。5回の裏の攻撃も薄井、藁谷のラッキーな連続内野安打で無死一、二塁のチャンスを作る。稲葉 魁の犠打で一死二、三塁とすると、迎える打者は今大会絶好調の阿部。阿部はチームの期待に応える、鋭い打球をセンターの右に弾き返す。試合の流れからしても、完全に外野の間を抜ける当たりかと思われたが、中堅の彦坂がこの痛烈な打球にスタート良く反応して好捕。専大松戸に追加点を許さない。

 専大松戸の次打者は、こちらも今大会当たっている高田。高田は高めのストレートを弾き返し、打球は左中間へ。これも抜けたかと思われる打球でらあったが、前の回に失策してしまった東海大望洋のレフト木村が今度はダイビングキャッチ。専大松戸に行きかけた試合の流れを引き戻すビッグプレイで、自らのミスを帳消しにした。


 お互いに次の一点が欲しい試合展開の中、先に得点したのは東海大望洋であった。粘り強く投げてきた専大松戸の薄井から、3番の中古が左越の適時二塁打を放ち、2回以来の追加点で、7対2と東海大望洋がリードを5点差に広げる。

 この一点が与えた影響は大きく、試合は一気にワンサイドの展開へと向かっていく。8回表、6回途中からマウンドに上がっていた専大松戸のエース原が崩れ、3つの四死球と2本のヒットを浴びて2失点。原の後を継いだ中村、津金沢の両投手も東海大望洋の勢いを止められず失点を重ね、気がつけば2回と同じ大量の6点がまたも東海大望洋に入った。

 東海大望洋は2番手の原田が専大松戸打線に出塁を許しながらも、要所を締める投球で得点を与えない。

 いよいよ最終回。原田は最後の打者を、力のこもったストレートで右飛に打ち取って試合終了。13対2という大差で、東海大望洋が念願であった夏の大会初優勝を決めた。

 敗れた専大松戸にとって、夏の大会初の決勝戦は、苦い経験となった。点差ほどの実力差は無かったが、厳しい言い方をすれば、大舞台でこそ真の実力が問われる。主軸に2年生が多く、この夏の経験は非常に大きい。この結果に満足することなく、敗戦から足りなかった部分を学び、大舞台でも、持てる能力を存分に発揮出来るチームに成長出来れば、夢の甲子園も現実のものとなるだろう。

 見事勝利した東海大望洋は、過去に決勝戦で敗れること三度。近そうで手が届かない夏の甲子園切符を、強力打線で遂にもぎとった。各打者の鋭いスイングと力のある打球。準決勝、決勝で見せた畳み掛ける様な集中打は、全国大会でも通用するだけの迫力ある攻撃であった。また、宇津木、原田の両投手も、十分に全国の強豪に対応出来るレベルであろう。

 千葉県170校の代表として相応しい戦い振りで、甲子園でも優勝を目指して欲しい。

(文:原野 啓)

【野球部訪問:第112回 東海大学付属望洋高等学校(千葉)】

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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