試合レポート

春日部共栄vs本庄東

2014.07.25

春日部共栄が守りの本庄東を封じ、2年ぶりの4強!

 4強8強春日部共栄。私学の強豪校の敗退が相次ぐ中、投打ともに実力ある選手が揃い、今年こそと期待がかけられている。

 対する本庄東春日部共栄にとっては戦いにくい特徴を持ったチームだ。

 その理由の一つとしては立教新座山村国際などの強豪を次々と破り、躍進の原動力となったエースの水野 瞭太(3年)の存在があげられる。
水野は東京ヤクルトの小川 泰弘のような左足の上げ方をしながら、身体を沈み込ませて投げ込む右サイドハンドだ。球速は常時120キロ~125キロ(最速126キロ)と速くないが、カーブ、スライダー、シンカーを巧みに投げ分け、フォームの出どころも分かりづらく、打ち難い。ジャストミートすることが出来ず、次々とゴロを量産する。

 そしてもう一つの理由が本庄東の守備力だ。水野のようにゴロを打たせる投手はバックの堅い守備があってこそ活きるものだが、本庄東の守備はかなり堅く、シートノックから鋭い打球に対しても確実に処理する姿に守備力の高さがうかがえた。

 堅守・本庄東のなかで、最も目を惹いたのが遊撃手の黒澤康太。一つ一つの動作にキレがあり、守備力の巧さは群を抜いていた。
さっそくの見せ場は1回表。二死三塁となって、春日部共栄の4番原田 寛樹(3年)が放った当たりは、黒澤の前に鋭く跳ねるゴロだ。自分の目の前で強く跳ねるバウンドの処理は特に難しく、打球についていくことが出来ず、後ろへ逸らしてしまう事が多い。

 だが黒澤は体を沈めて、逆シングルで鋭いバウンドを捕球し、そのまま一塁送球アウト。このワンプレーに球場内は拍手を送った。

 変則エース・水野の巧みな投球術と水野を支える本庄東の守備力の高さ。私学の強豪校は、投球術が巧みで堅守のチームに苦しむ傾向があるだけに、ここまで勝ち進んだのも頷ける内容だった。

 こうなると春日部共栄にとって嫌なのは、本庄東が先制点を挙げて、そのまま逃げ切られること。それだけに春日部共栄にとっては先制点を挙げたいところだ。


 2回表、春日部共栄は一死一、三塁のチャンスを作り、併殺崩れの間に1点を先制する。さらに3回表、先頭の2番佐野 尚輝(3年)が左越え二塁打で出塁すると、3番守屋 元気(3年)が左横線の二塁打を放ち、1点を追加し、2対0。4番原田は中飛に倒れたが、5番三浦 友之(3年)の右中間を破る適時三塁打、さらに6番金子 大地(3年)のスクイズで4対0とする。

 春日部共栄としてはこれ以上ない形で先制した。そしてエース金子 大地(3年)が安定感抜群の投球で本庄東打線を抑えていく。

 金子は小島 和哉浦和学院)、上條 将希市立川越)と共に注目される左腕である。
金子のストロングポイントは「制球力の高さ」、「ボールの出し入れ」、「投球テンポの速さ」。
決して140キロを超える球を投げるわけではない。しかし左サイドから投げ込む130キロ前半の速球は、両サイドのギリギリにコントロール出来ており、ボール1個分の出し入れが出来ている。スライダー、カーブを低めに集めることが出来る。

 また金子は捕手からボールを受け取って4秒で投球動作に入るテンポの速さ。すぐに投球動作に入るのだ。打者に考える時間を与えさせないといいっていい。
金子のリズムにはまったら、3分もかからないうちにイニングを追えてしまう。剛速球、キレのある変化球で打者をねじ伏せるのも1つの打ち取り方だが、制球力、コンビネーション、間合いで勝負するのも1つの打ち取り方である。金子は熟練した技巧派左腕といえるだろう。

 4点の援護を守りきり、金子は8回無失点の好投。
また打線も水野の投球の術中にはまり、8回表には一死一塁から8番長岡が放った打球は中前へ抜けそうになったが、なんと遊撃の黒澤が飛び込んで追いつく。これだけでもすごいが、さらに黒澤は自らベースタッチを行い、そして一塁に送球して、「6-6-3」のダブルプレーを完成させた。
このワンプレーにまた沸く。見事なプレーであった。


 春日部共栄は9回表も追加点を入れることが出来ず、いよいよ裏を迎えた。
春日部共栄は好投の金子から、2番手に渡邊 嵩介(2年)へスイッチ。

 渡邊は178センチ78キロと線の細さがなく、恵まれた体格をした右腕。金子は投球術で勝負するのなら、渡邊は球威、球速で勝負する本格派右腕で、対照的なタイプだ。
渡邊は真っ向からオーバーハンドで振り下ろす投球フォーム。投じる直球は常時138キロ~141キロを計測。角度ある直球が魅力的な逸材だ。

 控えに渡邊のような投手が控えているのだから心強い。
渡辺は打者2人を打ち取り、あと1人となったところで、投手交代。左腕・倉井 知哉(3年)が登板。179センチ79キロと手足が長いスラッとした投手体型の左腕。

 長い腕から繰り出す直球は125キロ~129キロと決して速くないのだが、球速表示以上に勢いを感じさせる投手だ。

 その倉井から本庄東は3番黒澤が左前安打。そして4番分須 駿(3年)が高めに入る直球を見逃さず[stadium]大宮公園球場[/stadium]の高いフェンスを越える特大2ランを放ち、4対2と2点差に迫ったが、後続が打ち取られ試合終了。
春日部共栄が2年ぶりの4強入りを決めた。

 春日部共栄は序盤に先制点を挙げたのが大きかった。出来れば、追加点を取りたいところであったが、早くから試合の主導権を握り、エース金子が連投ながらも安定した投球で、勢いに乗る本庄東打線を抑えた。
本庄東のペースにさせずに自分達のペースにしたことが勝因となった。

 今年はエース金子の他に渡邊、倉井、さらに春に130キロ後半を計測した右腕・西尾 洸樹(3年)も控えており、投手層は厚い。打線は強肩強打の捕手・守屋、勝負強い原田を中心に長打力のある選手が揃い、投打ともに充実したチームになってきた。

 次の相手は二季連続のベスト4を決めた伝統校・大宮東。エース中田 浩貴(3年)を中心とした好チーム。激しい戦いが繰り広げられることは間違いない。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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