試合レポート

能代松陽vs大曲工

2014.07.22

能代松陽がサヨナラ勝ちで決勝進出

 昨秋の県大会で準優勝し、今春の県大会で優勝している大曲工田代大智という好選手もおり、今夏、甲子園に近い位置にいる。
対する能代松陽は、前身が201011年に甲子園に出場している能代商で、昨年度、女子校の能代北と統合して誕生した。能代商として最後の夏となった12年能代松陽として初めての夏となった13年は、いずれも代表になった秋田商に敗れた。とはいえ、能代松陽は夏に強い印象がある。

 大曲工の先攻、能代松陽の後攻で始まった試合は序盤、投手戦となった。

 大曲工は4回まで能代松陽のエース・吉田昂希の前にヒットが出ない。1回表に先頭の佐々木将が死球で出塁しただけで走者も出せなかった。
一方、能代松陽は走者を出しながらも得点に結びつけることができず、0—0で試合は進んだ。

 5回表、大曲工は1死から5番・飯塚翔太がセンター前ヒットを放ち、出塁する。続く7番・佐々木貴弘がエンドランを決めてライトへヒット。1死1、3塁とし、8番・三浦昌也がライトへフライを打った。三走・飯塚がタッチアップ。しかし、9→4→2と中継がつながり、ホームでタッチアウト。先制とはならなかった。

 その裏、能代松陽は1死から1番・清水徳馬が右中間へ二塁打を放つと、 2番・小林俊己への2球目が暴投となり、三塁へ。
場面は1死3塁となり、小林の打球は内野で大きく弾み、ライトへ抜けていった。待望の先制点が能代松陽に入った。


 7回、大曲工の打線が爆発する。
この回、先頭の4番・高橋康太が中安を放ち、盗塁で二塁に進むと、5番・武田龍成のライトへのヒットで同点。武田は送球間に二塁に進むと、6番・飯塚が犠打を決めて1死3塁。7番・佐々木貴はライトへのタイムリーを放ち、8番・三浦が中安で続いた。9番・中邑一生への初球が暴投となり、1死2、3塁から中邑の打球は左中間を割って2人がホームに返った。
大曲工が一挙、4点を奪って逆転。第1シードの意地を見せた。

 ところが、能代松陽もこのままで終わらない。
8回裏、この回、先頭の2番・小林俊が一、二塁間を抜くヒットで出塁すると、3番・高田将太が犠打を決めて二塁に進む。4番・保坂柊平の一ゴロで2死3塁となった。
点差は3点。ノーアウトの走者がいても、得点にならない可能性があるのが野球である。

 しかし、能代松陽に風は吹いた。
5番・石山凌が四球で歩くと、6番・藤田健志の打球はセカンド後方、ライトの前にポトリ。三走・小林俊がホームを踏み、1点を返すと、2死2、3塁から7番・村上久仁がレフトへヒット。2人が生還し、同点に追いついた。

 9回は無得点に終わった両者。試合は4—4で延長に入った。

 10回表、大曲工は1番からの攻撃だった。
1番・佐々木将がレフトへのヒットで出塁すると、2番・鈴木健太が犠打を決め、3番・田代がセンターへフライを放って二走・佐々木将は三塁へ。
4番・高橋が四球で歩き、2死1、3塁から5番・武田龍の打球は三遊間を破って大曲工が勝ち越した。大曲工は裏を締めれば、昨秋今春に続いて決勝進出が決まり、悲願の甲子園へ王手をかける。


 10回裏、大曲工のエース・佐々木貴は1死からストライクが入らなくなり、2者連続で四球を与えた。
能代松陽は1死1、2塁から、8番から登板していた9番・野呂田遼太郎に代打・芳屋快を送る。
緊張の打席。芳屋は何度も肩で息をする。見逃しと空振りで2ストライクと追い込まれたが、3球目をファウルした。そして、4球目をセンター前にヒット。この打球に、大曲工のセンター・田代が慌てたのか、打球を前に落とし、この間に村上がホームへ。同点に追いついた。

 1死1、3塁。1人返れば、能代松陽のサヨナラ勝ちだ。
ここで、大曲工が動く。エース・佐々木貴に代えて、なんと、センターを守っていた田代をマウンドへ送った。スタンドもざわめいた。

 投球練習を終えて、プレー再開。
2球、ボールが続いた後、1ストライクをとったものの、1番・清水に四球を与え、場面は1死満塁となった。
迎える2番・小林俊はこの試合のキーマンとなっていたが、レフトファウルフライに打ち取った。
2死満塁で3番・高田。スタンドは1球、1球に固唾をのむ。

 1ストライクの後、2球ボールが続き、4球目はファウル。5球目がボールとなり、フルカウントとなった。
そして、6球目。134キロの直球は高めに外れた。サヨナラ押し出し四球。

 何が起こったのか、という感じで呆然とするマウンドの田代。各ポジションでうずくまる大曲工の選手たち。
打者・高田は一塁へ走り、三走・石川がサヨナラのホームを踏んだ。

 大曲工の選手たちは動けず、ベンチからも出てこない。おそらく、佐藤仁志部長や阿部大樹監督に促されて、やっとベンチから出てくる。レフトは三塁塁審に起こされ、センターはライトに抱えられて、ようやく整列した。

 試合に勝敗は付き、明暗が分かれたが、両者の諦めない姿勢が詰まった好ゲームだった。

(文=高橋昌江

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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