試合レポート

拓大紅陵vs銚子商

2014.07.14

1日でも長い夏を!拓大紅陵が宿敵対決を制する!

 拓大紅陵にとっては今年は特別な想いで夏に臨んでいる。
長年、指揮を執っていた小枝守監督がこの夏限りで退任することが決まったのだ。監督と1日でも長く野球をやろうと選手たちは意気込んでいるが、初戦の相手はなんと銚子商となった。

 小枝監督最後の大会で、千葉県の高校野球界を引っ張ってきた両チームが初戦で対決するのだから面白い。

 この対決を見ようと[stadium]ゼットエーボールパーク[/stadium]は第1試合から内野席がほぼ埋まった。
そして第3試合が始まる頃には立ち見のお客さんで溢れ、外野席もほぼ埋まってしまうぐらいの盛況ぶりで有料観客動員は6250人を記録した。応援席で応援していた生徒を含めると、本当は7000人以上動員していたかもしれない。それだけ注目度が高いゲームとなった。

 拓大紅陵の先発は左サイドの山岡 弘佑(3年)。二死から伊藤 開(3年)に三塁打を打たれるが、後続の打者を抑えて無失点に抑える。

 銚子商の先発は林 桂大(3年)。
林は174センチ65キロと上背はそれほどないが、身体能力は高く、常時135キロ前後(最速140キロ)を計測する右の本格派。3番笠原を137キロのストレートで空振り三振に打ち取った快調な立ち上がりだった。


 だが拓大紅陵が怯んでいる様子はなかった。2回裏は無得点に終わったものの、2本の安打が飛び出た。林の速球、変化球にしっかりと対応することができている。

 そして3回裏、拓大紅陵は1番小川 駿(3年)が四球で出塁し、2番浅海 宗一郎(3年)が犠打で一死二塁とすると、第1打席、三振に終わった笠原が二塁強襲の安打。打球は外野へ抜けていき、それを見て、二塁走者が三塁を蹴って本塁に生還。拓大紅陵が1点を先制する。

 さらに5回裏、一死から3番笠原が遊撃内野安打を放ち、二死一塁となって、笠原が盗塁を決め、そして5番森 郁也(3年)が中前安打。笠原が俊足を飛ばして、本塁へ生還し、2対0とする。

 反撃したい銚子商は6回表、失策で進んだ走者が犠打と内野ゴロで、二死三塁まで進塁し、2番岩井 将也(2年)がストレートを捉えセンター前へタイムリーヒット。綺麗な安打だった。

 1点差に追い詰められ、なんとか追加点を入れたい拓大紅陵は8回裏に、一死から敵失、8番伊藤 寿真(2年)の左前安打で、一死一、二塁のチャンスを作る。


 ここで銚子商は投手交代。背番号1の石毛 雄眞(3年)を投入。石毛は常時130キロ前後を計測する左腕。

 その石毛は9番山岡に対し、力でねじ伏せにいくが、山岡はなんとか当てて、ショートの頭を越える安打に。ハーフウェイの二塁走者は三塁に向う。それを見てレフトは三塁へ投げるが、送球が逸れる。その時、逸れた送球を取りにいこうとしたサードが二塁走者の進路を妨げてしまった。

 三塁塁審はそれを見逃さず、走塁妨害を宣告。三塁を回った二塁走者は本塁へ生還し、拓大紅陵が1点を追加する。拓大紅陵にとって大きな1点だった。

 そして9回表、山岡は三者凡退に抑えて試合終了。拓大紅陵が宿敵対決を制し、3回戦進出を決めた。

 拓大紅陵はエースの山岡を中心とした堅い守りが素晴らしかった。

 山岡は球速こそ120キロ前後だが、両サイドへきっちりと投げ分けながら、スライダー、カーブ、チェンジアップを織り交ぜ、狙い球を絞らない投球。左サイドにとって一番怖いのは力のない球が高めに浮いてしまうこと。しっかりと気を付けて、内野ゴロ、外野フライに打ち取り、凡打に打ち取っていた。

 守備では遊撃手の樫森 恒太(2年)がポジショニングを意識しながら、再三、好プレーを見せていた。

 また拓大紅陵打線で注目したのが3番笠原。好打者にありがちな当て打ちする選手ではなく、フォロスルーまでしっかりと振れる打者だ。しっかりと振りきるので、タイミングがずれると空振りが多いが、捉えた打球の球足が速く、内野手の守備の乱れを誘いやすい。足も速く、高い確率で出塁が出来る選手だ。相手の隙を見ての盗塁もうまく、走塁技術も高い。機転が利いていて、いわゆる野球センスが高い選手である。

 今日は投手を中心とした堅い守りで、リズムよく攻撃に入り、攻撃では単打を重ねながら、ヒットエンドラン、盗塁を絡め、1点をもぎ取る野球が出来ており、ピンチを招いても落ち着いてプレー出来る精神的な強さが見られた。
この強さは今後、優勝候補と期待されるAシードの学校に対してでも発揮されることだろう。

 1日でも長い夏にするために。 今後も拓大紅陵の戦いぶりから目が離せない。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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