八潮南vs鷲宮
思いが結実!「シミュレーション通り」の八潮南、会心の試合
夏の大会は、すべての思いを結集して、ここを目指してチームとしての完成品を披露する舞台でもある。だから、この大会は熱いのだ。
そんな両チームの思いが十分に感じられる好試合だった。はっきりしない梅雨空を吹っ飛ばして余りある内容だった。
序盤から積極的に仕掛けていった両チームの激突は、初回の攻防から見ごたえがあった。
先攻の八潮南は1番高垣君がいきなり中前打で出塁するが、牽制球で刺される。一旦は、意気消沈となるところなのだろうが、相手失策もあって八潮南は攻め続けた。
4番上口君の左前打なども続いて2死満塁まで攻めて勢いは衰えなかった。
結局は、鷲宮の橋本君が踏ん張って無得点だったものの、八潮南の勢いがあることは十分に示した。
その裏の鷲宮、1死後青山君が右前打すると、すかさず二塁盗塁。2死二塁から4番青木君の中前打で先制した。
鷲宮としては、ピンチを逃れた後に、比較的スムーズな流れで得点出来ただけに、いい展開となるはずだった。
しかし、柿原実監督は、「練習試合でもそうだったんですけれども、得点したすぐ後の回に点を取られるケースが多かったんですよ。だから、気をつけるように言ったんですけれどもね」という懸念していたことが当たってしまった。
2回の八潮南は、四球と野選などで得た1死二三塁から、1番に戻って高垣君が左前打して、たちまち同点とした。ただ、高垣君はオーバーランして刺されてしまった。
それでも、八潮南の勢いを呼び込んだ流れは途切れていなかった。
3回にも、八潮南は先頭の高栁君が左前打すると上口君がバントで進め、5番の1年生で唯一メンバー入りしている安君が期待に応えて右前打でつないで一三塁。ここで、6番川村君が右犠飛を放った。
結果的には、これが決勝点となるのだが、以降はお互いに守り合い、辛抱の仕合いという展開になった。
鷲宮は2回以降、都合5度も無死の走者を出しながらも、ついぞ得点を挙げることが出来なかった。
柿原監督としては、「チャンスはあるから、じっくり攻めていこうということで、一本が出るのを待っていたのですが、結局そこを抑えられました」と、残念がった。
それでも、「ここまでやったのだから、悔いを残すなということは、言いました」と、今の段階で自分たちの持てる力は出し切ったのだという思いは大事にしたいという考えのようだった。
辛抱戦を制した形になった八潮南は試合後、齋藤繁監督も興奮気味だった。「あいつら、カッコイイです。むちゃくちゃカッコイイ」と選手たちを絶賛した。
そして、少し冷静になって、「試合の中でミスは出ましたけれども、流れは切れていませんでした。スタンドで見ていると、『何やっているんだ』というように見えたかもしれませんが、ベンチの中では流れは一つも切れてしませんでした」と、選手たちを信頼し切っていた。
その背景にあったのは、大会前に部員たちを何班かに分けて行った、「甲子園までのシミュレーション」だった。決勝までの7試合のスコアと展開をイメージさせたという。
それが、1回戦もそうだったが、この試合でもスコアもシミュレーション通りの2対1、しかも先に1点取られてすぐに1点を返して、その次の回に1点を奪ってリードするという展開まで同じだった。そういうイメージが出来ていて、その通りに進んでいくことで、お互いに信頼感がさらに強くなっていくのだろう。
初戦を突破した段階で、この日の先発は背番号10の川村君と決めていたというが、7回、8回と先頭打者を出して苦しい場面もあったが、結局完投となった。
エースナンバーをつけた町田君を用意はさせていたものの、「川村は心のエネルギーがキレていませんでしたから、それを信じて投げさせました。苦しいところで、もう一度エネルギーを、自分で注入することが出来ました」と、称えていた。
試合の流れを大事にしたいという齋藤監督だが、試合の中のショートスパンの流れだけではなく、この大会のミドルスパンの流れも呼び込んでいこうという姿勢が見事にハマっている。
選手たちを「カッコいいぞ」と称える言葉は、かつて高校ラグビーで花園を制した伏見工の山口 良治監督の雄叫びにダブるモノがあった。
この大会、八潮南は大きな波を呼び起こしそうな予感を漂わせている。
(文=手束仁)
【球児のお弁当】県立八潮南高等学校(埼玉)
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