試合レポート

佐野日大vs聖望学園

2014.05.19

明暗分けた4回の攻防

佐野日大vs聖望学園 | 高校野球ドットコム 

先発した稲葉恒成投手(佐野日大)

 春の選抜大会ベスト4に進出し、今大会は推薦出場となった佐野日大。その戦い方が注目されていたが、ベテランの松本弘司監督は、甲子園をほとんど9人の固定したメンバーで戦ってきたので、夏へ向けて、チーム力を底上げして層を厚くしていくことを一つのテーマとしている。

 特に、バッテリーは田嶋大樹君(3年)と佐川昌君(3年)だけに頼らないでも戦っていけるようにしていくことを目指しているという。そのテーマに基づいて、この日の先発は背番号7の稲葉恒成君(3年)、捕手も11番の長啓太君(3年)だった。「どんなになるか、ちょっと冷や冷やしながらベンチから見ていました」という松本監督ではあったが、バッテリーはいいリズムで終始し、稲葉君は6イニングを1失点でしっかりと投げ切った。

 試合の明暗を分けたのは4回の攻防だった。
ここまで佐野日大は、初回に一死二塁から小泉奎太君(3年)の左中間二塁打。聖望学園は二死三塁から2番津田猛智君(3年)がレフト前タイムリーを放って、1点ずつを取り合っていた。そして迎えた4回、聖望学園は先頭の4番中村郁人君(3年)がレフト前ヒットで出塁し、一死後に玉谷健太君(3年)の内野安打と小金井伸哉君(3年)のバントもヒットになって、一死満塁。聖望学園にとって、絶好の突き放すチャンスとなった。

 しかし、ここで佐野日大の稲葉君が踏ん張り、連続三振。キャッチャー・長君の強気のリードも光った。

 その裏の佐野日大。4番の稲葉君がセンター前ヒットで出ると、続く田村海斗君(3年)も一、二塁間を破り、さらにバントも決まるなどして二死二、三塁。ここで8番に入っていた長君が外のストレートをしっかりと捕えて、ライト線への三塁打。二者を返して再びリードした。

 聖望学園の岡本幹成監督はたまらず、二番手として日影大君(3年)を送り出したが、止めきれなかった。佐野日大はすかさず、小野柊平君(3年)がセンター前タイムリーを放ち、長君を返すと、さらに1番の竹村律生君(2年)もレフト線へやや幸運な二塁打を放ってこの回4点が入った。

 下位打線に置いた長君、小野君といったところがきちんとその役を果たしたことで、いろいろ試してみたいという気持ちで起用した松本監督も、まずは一安心といったところであろう。


佐野日大vs聖望学園 | 高校野球ドットコム 

7回からリリーフで登板した田嶋大樹投手
(佐野日大)

 そして佐野日大は7回から、プロのスカウトたちも注目している左腕エースの田嶋大樹君を送り出した。

 田嶋君は選抜大会後は練習試合を通じても、この日が初登板。
「体が軽すぎたんではないでしょうか。それで、力が入りすぎていてちょっとバラついていましたね」と松本監督が言うように、代わったすぐの7回に、いきなり代打・中里直人君(3年)に二塁打を浴びると、バントと犠牲フライで1点を失った。

 その後も、2四球を与えるなど、もう一つ安定感はなかった。それでもストレートは145キロを計測していたという。

 夏への準備を含めてこの大会に臨んだという佐野日大は、もちろんエースの田嶋君が中心になっていくのだろうが、この試合で6回をきちんと投げた稲葉君と、松本監督が「機会があれば投げさせたい」と思っている小泉君も試していければ、層は厚くなっていきそうだ。
 そのためにも、この大会で勝ち進んで多く公式戦を経験することは大事になっていくであろう。

 思っていた以上に早く先発の中村碧聖君(3年)を降板させざるをえなかった聖望学園
 この日は四人の投手が投げたが、三人目の田島匠君(2年)がしっかり投げたのは岡本監督にとっても明るい材料だろう。8回は一死一塁から松本龍尭君(2年)がリリーフし、制球の良さで後続をしっかりと抑えた。

(文=手束仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.27

【京都】龍谷大平安、京都成章、北嵯峨などが2次戦進出戦に挑む<春季大会>

2024.04.27

横浜に入学した「スーパー1年生5人衆」に注目せよ! 佐々木朗希二世、中学日本代表の二刀流など明日の慶應戦で活躍なるか!?

2024.04.27

【大阪】3回戦は28日に大阪桐蔭、履正社が登場、29日には上宮-関西創価など<春季大会>

2024.04.27

【滋賀】シードの滋賀学園、彦根総合が登場<春季県大会>

2024.04.27

【広島】広陵は瀬戸内と、広島商は崇徳と夏のシードをかけて激突<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!