試合レポート

大阪桐蔭vs履正社

2014.05.18

現状・大阪の縮図!夏を見据えて‼

大阪桐蔭vs履正社 | 高校野球ドットコム 

大阪桐蔭・田中誠也

 試合直後の大阪桐蔭。優勝の余韻に浸ることなく、西谷浩一監督はナインを集めた。スコアボードの得点表示が残るうちに、指をさして、試合を振りかえる。

 「履正社さんが点を取った次の回に、必ずウチが点を取ることができた。今日はしぶとい野球をしようと目標を言っていたので、粘り強くやれたのは大きな財産になると思います」とナインに対して話したことを明かした。

 15安打で、そのうち長打が9本。8得点にも「打てたという感じではない」と話すが、取られた次の回に粘って点を取ったことを、指揮官は勝てた要因と捉えているようである。

 履正社大阪桐蔭は7季連続での対戦。学校数の多い大阪で、毎大会顔を合わせているということは、現在の大阪の高校野球の縮図と言えるのではないだろうか。

 その両チームが、夏を見据えてどんな戦い方を見せるのか注目であった。

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履正社・永谷暢章

 他県の監督やコーチの中には『考えられない』という声が出るかもしれないが、履正社大阪桐蔭、両校の出したオーダーは、現状でのベストメンバーであった。

 ここでしっかりとぶつかっておくことが、夏へ向けたチームと個人のレベルアップに繋がる。西谷監督と、履正社・岡田龍生監督の意思の表れのように感じる。

 大阪桐蔭田中誠也(2年)は背番号10ではあるが、準々決勝準決勝に続いての先発。この春に関しては、大事な試合で一番使われている投手と言える。その田中は、立ち上がりに1点を失った。

 履正社の先発は、今大会背番号1の永谷暢章(2年)。前回の準決勝では5回をほぼ完璧に抑えた。こちらも、2回表に同点に追い付かれた。

 この時点で両チームの選手は気付いていたことだろう。やはり相手打線は、投手がゼロに抑えることが簡単にはできないと。


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優勝旗を受け取る大阪桐蔭・中村誠主将

 勝負を進める中で、少しずつ立ち直ってきたのが大阪桐蔭の田中。2回に2点を失い再び勝ち越された後は、3回、4回とゼロに抑えた。
 相手は1番から6番まで左打者が並ぶ打線。キャッチャーの横井佑弥(3年)は、「左打者がだいぶ外を意識していた。外(角)ばっかりだったら狙われるので、内(角)をしっかりと見せれば、外がきいてくる。途中から左打者の内を中心にした」と、立ち直りの要因の一つとなった配球を話した。

 6回表、1点を追う大阪桐蔭がゲームをひっくり返す。
 先頭の7番福田光輝(2年)が、相手守備のエラーで出塁。8番大森聖也(3年)が送ると、9番田中が右中間を破る二塁打を放ってまず同点とした。田中は2回にも同点となる犠牲フライを放っており、このゲームのポイントをなった打者であった。
 一死二塁のチャンスが残り、1番中村誠(3年)が左中間を破る三塁打を放って勝ち越し。さらに二死となってから、3番香月一也(3年)にもタイムリーが出て、このイニング3得点。

 ここで3という数字が入ったことが、結果的に勝負を分けることに繋がった。

 もう一つ勝負に直結したのが記録には表れないミス。
 記録に表れた点としては1回の履正社の先取点、6回の大阪桐蔭の3点がエラーから始まっている。だが記録に表れないという点では、外野手が風と陽の加減をつかめず、目測を誤るシーンが履正社に多かった。
 「選抜の決勝でミスが出て負けた。それから春の大会に入ってからでも、決勝でミスが出るというのは、まだまだ甘さがあったということ。もっと集中して練習していかないと」と、履正社金岡洋平主将(3年)は厳しい表情で話した。

 さて、勝負という場ではあるが、夏に再び対戦することを考えて、情報収集をすることも忘れてはならない作業だ。
 大阪桐蔭のキャッチャー・横井は、相手打者と対する中で、課題と収穫それにデータを得られたことを話した。履正社サイドもまた同じである。
 力と力をぶつけあうことで、お互いに五分のデータが得られる。そこから先は、夏へ向けてどう詰めていくかという作業になる。

 そしてこの決勝ではお互い、含みも残した。わかりやすい例を一つ記すと、投手起用である。
 左腕・田中を完投させた大阪桐蔭の西谷監督は、「夏は継投も考える」と話した。履正社の岡田監督も、永谷をできるだけ引っ張り、もう一人の柱である溝田悠人(2年)は、投入しなかった。やはり両指揮官とも、頭にはしっかりと夏に対決することが入っているのではないだろうか。

 これら以外にも様々な角度から色んな考え方できる試合となった大阪決勝。夏にまた戦って、この日の答えがでるのか。それとも、現在の大阪の縮図に変化が見られるのか。

 夏の勝負の始まりまで、すでに2カ月をきってきる。

(文=松倉 雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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