試合レポート

霞ヶ浦vs下館一

2014.04.30

霞ヶ浦vs下館一 | 高校野球ドットコム

エース上野 拓真(霞ヶ浦)

霞ヶ浦エース・上野は下館一打線を寄せ付けずコールド勝ち

 春季茨城県大会二回戦、昨秋の県大会を制覇した霞ヶ浦と、県大会準々決勝で常総学院を相手に延長11回サヨナラで惜敗した下館一の対戦は、屈指の注目カードであった。

 投手の駒が豊富に揃う霞ヶ浦は、水戸商との一回戦では背番号10の左腕・安高 颯希(2年、桃山中、オール茨城)が先発し、3対0と完封勝利をおさめた。

 そして二回戦・下館一戦を一つのヤマと捉えたであろう霞ヶ浦は、一回戦で温存したエースの上野 拓真(3年、取手シニア)をいよいよ先発に起用した。

 一方の下館一は、一回戦・石岡一に序盤からエースの左腕・森山 優介(3年、結城東中)が連打を浴びて失点するも、終盤に逆転。辛くも勝ち上がってきた。

 二回戦の先発も、もちろんエースの森山である。

 1回表、その森山の立ち上がりは散々なものだった。霞ヶ浦の先頭・清水 達希(2年、土浦三中)をストレートの四球で歩かせると、2番・山本 司(3年、新宿シニア)に送りバントを許し一死二塁とされる。一つアウトをとって落ち着いたかと思いきや、続く3番・菅原 直輝(3年、取手シニア)に対して、またもストレートの四球。4番・平瀬 翔悟(3年、竜ヶ崎シニア)にも連続の四球を与え、一死満塁の大ピンチを迎える。

 次打者5番・飯村 将太(1年、筑西田宮ボーイズ)は空振り三振にとり二死満塁となるも、6番・小川 翔平(1年、取手シニア)にこの回4つ目となる四球を与え、押し出しで1点を献上する。その後は遊ゴロに抑えてこの回を何とか1点で凌いだが、県西ナンバーワン左腕との呼び声が高い森山のボールは、ストレートが失速して沈み、全く勢いが感じられない。

 森山は2回以降はマウンドを降りレフトの守備につく。


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霞ヶ浦vs下館一 試合シーン

 霞ヶ浦打線はその後も着々と追加点を挙げる。

 3回表、霞ヶ浦先頭の4番・平瀬は、二番手としてマウンドに上がった下館一の右腕・伊藤 響平(2年、協和中)の初球を強振。弾丸ライナーでライトスタンドに運ぶソロ本塁打で1点を追加する。

 4回表、霞ヶ浦先頭の8番・上野が中前安打で出塁すると、9番・村上 孝太郎(3年、取手シニア)は上手く右前に運んで無死一、三塁。続く1番・清水はライトへの犠牲フライで1点を追加する。一死一塁から、走者・村上はカウント1-1から盗塁を成功させ一死二塁とし、2番・山本はフルカウントから四球を選ぶ。その後パスボールで二死二、三塁とし、4番・平瀬が今度は逆方向に上手く運ぶ2点適時打を放ち、2点を追加する。

 5回表、霞ヶ浦先頭の6番・小川がストレートの四球で出塁すると、次打者の内野ゴロで進塁し二死三塁とする。ここで9番に代
わって入った大野 雅充(3年、東中)が放った打球はセカンドベース後方の何でもない内野フライとなるが、下館一の二塁手と遊撃手がお見合いしてしまい、打球に触れることなく落下。1点を追加する。

 霞ヶ浦先発のエース上野 拓真は、5回まで打者16人に対して投球数48、被安打2(いずれも単打)、奪三振2、無四球、牽制補殺と、下館一打線を全く寄せ付けず、この回でマウンドを降りる。下館一は、茨城を代表する左腕から二塁を踏ませてもらえなかった。

 6回表は霞ヶ浦打者一巡のビッグイニングとなる。

 下館一は、この回から三番手に右サイドスローの柴山 泰河(3年、桃山中)を投入するも、三つの四球と二つのパスボールで2失点。苦しみながらも二死二、三塁まで漕ぎ着けたが、8番代打・戸部 将稀(3年、伊奈東中)から右越2点適時三塁打を浴びてマウンドを降りる。下館一は四番手の物井 凌(3年、明野中)を投入するが、霞ヶ浦の猛攻はさらに続く。9番代打・根本 将汰(1年、取手シニア)は、初球を思いきり振り抜き、目の覚めるような当たりはライトフェンスにワンバウンドで到達。適時二塁打とし、さらに1点追加する。


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岩田 直也(霞ヶ浦)

 11対0で霞ヶ浦がリードして迎えた6回裏、霞ヶ浦は二番手に右サイドスローの岩田 直也(3年、取手シニア)をマウンドへと送る。
しかし、岩田がピリッとしない。下館一先頭の代打・飯泉 練(3年、協和中)にフルカウントから死球を与えると、9番代打・物井 千空(3年、明野中)にもフルカウントから四球を与えてしまい、無死一、二塁とする。下館一は初めて得点圏に走者を置いた。ここで迎えるは1番・廣瀬 貴礼(3年、協和中)。地区代表決定戦・八千代戦でも本塁打を放っている強打者だ。廣瀬は初球の外寄りの変化球を強振。打球はライトフェンスポール際を越え、3点本塁打となる。

 3点を返された霞ヶ浦は、三番手に左腕・浅賀 蒼太(2年、桜川シニア)をマウンドへ送る。浅賀は落ち着いた投球で後続を三人で抑え、追い上げムードとなっていた下館一の追撃を許さない。

 7回裏、霞ヶ浦の三番手・浅賀は、下館一6番・内田 光平(2年、下館西中)から右前安打を浴びるも、最後の打者を空振り三振にとりコールドゲームが成立。霞ヶ浦が11対3で下館一を下し、準々決勝進出を決めた。

 当初、投手戦が予想されたゲームは、下館一のエース・森山 優介の乱調から始まり、大味な内容となってしまった。エースがマウンドを降りた下館一は守備のリズムが崩れ、声かけのミスやバッテリーエラーが目立った。登板した5人の投手で与四球が12個もあったのは修正したい。しかし、昨秋優勝の霞ヶ浦に対して、ベンチ入り20名全員が試合に出場できたことは、控えメンバーにも良い刺激となったのではないかと思う。また、1番・廣瀬の逆方向へ本塁打できるパワーには非常に魅力を感じた。

 一方の霞ヶ浦は、エース・上野 拓真が好投し、リードしたところで継投するという理想的な試合運びができた。岩田 直也は自ら招いたピンチから一発を浴びて打者3人で一つのアウトもとれずに降板したが、左腕投手の多い霞ヶ浦において右サイドスローの岩田は貴重な存在だ。今後の飛躍に期待したい。4番の平瀬 翔悟は無走者で目の覚めるような弾丸ライナーの本塁打、次の打席では二死ニ、三塁から逆方向にシャープなスイングで単打を放ち、状況に応じた打撃ができる頼れる4番だと感じた。

(文=伊達 康

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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