千葉明徳vs柏日体
ピンチで集まる柏日体ナイン
千葉明徳が延長11回に、二死走者なしから得点して接戦を逃げ切る
近年の千葉県の勢力構図を見てみると、神奈川県の横浜や埼玉県の浦和学院、東京都の日大三といったような突出した学校が存在していない。その一方で毎年ベスト8前後で競い合う中堅以上の有力校が20校くらい横並び状態になっている。それが混戦状態を招いているのだが、この両校も、まさにそんな存在である。
そういう意味では、混戦千葉のベスト8を争う試合としては、象徴的なカードといってもいいのかもしれないものだった。試合もまさにそんな展開で、攻撃があと一つ決め手を欠きながらも、守りもよく踏ん張ったというシーンがいくつかあった。こうして、延長にもつれ込んだ試合。最後は戦い方に少しだけ余裕のあった千葉明徳が、柏日体を振り切った。
千葉明徳の宮内一成監督は、「9回に1点リードできた時には、ちょっと欲を出して(エースの)畠山を使わないで勝てるかなとも思ったんですけれども、エラーで出した走者でしたからね。同点まではその時点で覚悟しました。まあ、その通りになってしまったんですけれどもね」と、9回の1点リードを守り切れなかったことは、納得していた。
そして、延長になって、10回二死から満塁のピンチを招いて畠山君投入ということになった。畠山君がピンチを凌いで11回の攻撃。二死走者なしから、1番武井君が執念の内野安打で出ると、続く見供君は右翼線へ打ち上げたが、ライン際にポトリと落ちて一走の武井君が長躯ホームイン。この1点をその裏、畠山君はしっかりと守り切った。頼れるエース、畠山君としては1点のリードで十分だった。
畠山投手(千葉明徳)
千葉明徳は9回も二死走者なしから、四球の走者が二つの暴投で三塁へ進み、一三塁からの重盗で1点を奪うなど、二死から得点していく勝負強さを示した。これは、宮内監督がある本から感銘を受けて、「終わりを決めた時から、脳の考え方としてはその先が停止する」ということを説いて、その意識を選手たちに最後まで諦めないで行けということを徹底させて行ったことにもよる。
また、この試合を勝ったことで、公式戦の場としてまた次のステージがもたらされるのだが、つい1カ月前に正式に捕手にコンバートしたという新野君にとっては、こうした緊張感のある公式戦を1試合でも多く経験できることは、何よりの成長になるとも感じているのだ。
先発投手に関して宮内監督は、「本当は、3人で3イニングずつということも考えていたのですけれども、夏を見据えたら、ここで試しておきたいと思った投手で行きました」と、高市君を行けるところまで引っ張り、さらにはリリーフした清藤君は、春先の練習試合でも強豪校を相手に好投してきたということだが、5イニング2/3を投げて、安打は内野安打2本のみに抑えていた。こうして、満を持して畠山君につなげられたことで、少し余裕があった。
柏日体は、3回に5番エドポロ・ジョセフ君の思い切りのいいスイングからの中越三塁打で逆転したが、先発白銀君が6回に犠飛で追いつかれた。白銀君は右サイドから横の変化を中心にキレのいい投球を見せていただけに惜しかった。その後は、田原君と朏(みかづき)君とつないでいったが、力尽きた。朏君は力のある球を持っていたのだが、9回は二つの暴投と重盗で揺さぶられ、11回はやや投げ急いだところを掴まってしまった。いずれも二死走者なしからの失点だった。
柏日体の金原健博監督は、「相手は延長戦を勝ってきたりサヨナラ勝ちしたりで勢いを持ってきていますから…。夏へ向けての課題ばかり見つかったのですけれども、何と勝負しているのかわからん状態です。プレーでのアドリブはいいんですけれども、そのチョイスの仕方が、違うだろうと思えるところもいくつかありました」と、反省しきりだった。
(文=手束 仁)