京都成章vs桂

　

4番・川添（桂）

　初回二死二塁。
　いきなり訪れた先制の絶好機に京都成章の4番・桝井が、変化球にやや崩されながらも軸をぶらさずバットを合わせると、打球はレフト後方のフェンスを越えて行った。
「体が上手く反応しました。レフトオーバーかなとは思ったんですけど入るとは思わなかったです」
　主軸の一振りで幸先良く2点を先制すると、2回にも相手の失策に乗じて1点を追加。3回以降は安打が出ない中、中盤は守備で魅せる。4回、二死から京都桂の4番・川添に左中間を破られるが見事な中継プレーが光り三塁でタッチアウト。
　さらにこの試合最大のビッグプレーが6回に飛び出す。一死一塁から京都桂の1番・酒井が放った左翼線の打球にレフトが懸命に走り追いつくも、捕球しきれず一塁走者は生還、酒井は一気に三塁へ到達した。
　2番・村上が四球で歩き一、三塁となると3番・山本のゴロをサードがエラー。1点差に迫られ、なおも一死一、二塁のピンチで打席には4回に左中間を切り裂いた4番・川添。この場面で京都桂最強打者のセンター前へ抜けようかという鋭い当たりに対してセカンド・西井が超ファインプレーを見せる。

「どんくさい子なんですけど、一生懸命やってくれている」と松井監督が評する西井が二塁ベース後方でのダイビングキャッチで打球をつかむと、起き上がることもなくベースカバーに入ったショート・北川へバックハンドでのグラブトス。4－6－3の併殺でピンチを脱し同点のホームは許さなかった。

　味方の好守にも助けられた先発・斉藤は6回を除き京都桂のスコアボードに0を並べていく。
「調子のバロメーターであるカーブがあんまり入ってなかったんですけど、他の球種でカウント取れました。カーブが決まらない中、スライダーを多めに使って組み立てられたのは収穫です」
　と成果を確認。それでもややコントロールに苦しみ与四死球こそ3だが3ボール2ストライクピッチングが続いた。
「もっとストライク先行でリズムを作れるピッチングをしたかった」と自己採点は厳しめの60点。
　これには松井監督も「ボール先行だったのが反省点。もっとストライク先行させてくれてたらもう少し楽だったかな」と同調。それでも、
「変化球を混ぜて的を絞らせず、うまいこと投げてくれた。持ち味は出してくれた」
　と十分及第点の評価を与えた。

　

投手・斉藤（京都成章）

　3対2のまま終盤を迎え、もう一押しが出来なかった打線は9回、山本のタイムリーツーベースヒットと岡本の犠牲フライで2点を加えリードを広げる。最後は斉藤が一死二、三塁のピンチを招くも後続を抑え完投勝利。

　京都桂からしてみれば初回の一発は仕方ないにしても2回と9回の失点は防げる可能性があった。
　2回は一死一塁から打球を処理した投手・向の送球がそれたことにより追加点を奪われた。それも一塁からの一気の生還を許した背景にはカバーが遅れたことが一因であり、送球の指示がしっかり出来ていればタイミング的には三塁を陥れた打者走者を刺すことは十分可能だった。

　9回のダメ押しとなる２失点も先頭打者をピッチャーゴロの悪送球で出塁させたことから招いたもの。
「やるべきことがやれず、ゴロのミスが点につながってしまった。もっと練習からピリッとしたムードでやらないと」
　とリードオフマンのキャプテンとして打線とチームを引っ張る酒井は試合後話した。

　今年の京都は、センバツ大会で優勝した龍谷大平安とベスト8入りした福知山成美の2校を中心とした勢力図になることが予想される。
　2回途中からマウンドに登り、京都成章打線をほぼ完璧に封じ込めた京都桂・能勢は、
「夏にはチームとしての結果も出るので。どこが来ても自分達の野球をしたい。ここぞの場面で１点取って、それを全員が一丸となって守り抜くのが京都桂の野球です」
と夏の大会での巻き返しを誓う。

　京都成章の松井監督が「同じ地区でやっているところが日本一になってくれて僕らとしてもやりがいがあるし、励みになる」と話せば、エース・斉藤も「僕らは打倒平安を合言葉にしているので、それを実現出来るようトレーニング積んで行きたいです」と闘志を燃やす。
　試合後にはその言葉通り、すぐさまベンチ入りメンバー全員がダッシュと筋トレを行っていた。公式戦であっても練習試合の時と同じく夏へ向けて負荷をかける。

　組み合わせの関係上、京都成章はセンバツ出場のため2次戦からの登場となる2校とは準決勝、決勝まで当たらない。夏へ弾みをつける有言実行へ向けてまずは初戦を突破した。

（文＝小中 翔太）