試合レポート

龍谷大平安vs佐野日大

2014.04.02

序盤の攻防!見破ったスクイズと消耗作戦が実る!

 序盤から両チームともチャンスを作る。でも、得点できない。そんな流れで立ち上がった。

 1回表の佐野日大は、2番長沢吉貴(3年)がヒットで出塁するも、龍谷大平安の先発・髙橋奎二(2年)の牽制に刺された。結果としては、3番吉田叡生、4番稲葉恒成(ともに3年)とヒットが続いただけに、惜しまれる牽制死。逆に刺した高橋奎は、「サインだった」としてやったりの表情を見せた。

 その裏の龍谷大平安。1番徳本健太朗(3年)は、2球目を打ってライトフライに倒れるが。2番大谷司(3年)からは、佐野日大のエース・田嶋大樹(3年)に球数を投げさせる策を講じた。
 ファーストゴロに倒れた大谷は8球、四死球を勝ちとる3番姫野大成と4番河合泰聖(ともに3年)は、いずれもフルカウントとなった後の6球目で出塁した。
 5番中口大地(3年)はファーストフライに終わって無得点に終わるが、1回だけで計27球を田嶋に投げさせた。前日に延長11回を投げ切っている田嶋にとっては、最も恐れていた球数を投げさせられるという作戦を、1回から見せつけられたのである。

 ただ2回表、先に苦しんだのは龍谷大平安の高橋奎の方。
 先頭の6番田村海斗(3年)が死球、7番柿澤郁也(2年)には四球を与え、8番田嶋の内野ゴロの間に走者が進んで一死二、三塁となった。
 打席は9番佐川昌(3年)。ここで真価を発揮したのは高橋奎と高橋佑八(3年)のバッテリーだった。
 先取点がほしい佐野日大にとっては、スクイズも視野に入れたい場面。当然龍谷大平安サイドも織り込み済みだ。焦点はどこで仕掛けてくるか。バッテリーは、強行策も頭に入れながら時間をうまく使う。
 様子を見るため、高めに外れた1球目。やや立ち上がり気味に捕球した髙橋佑は、すぐに球を高橋奎に返す。『相手に考える時間を与えたくない』という意思を見せる素早い返球。逆に相手ベンチのサインが出てから、マウンドの高橋奎は少し長めに間を取った。
 2球目のカーブがストライク、3球目の直球がボール、4球目の直球がストライクとなって、2ボール2ストライクというカウントになる。
 この3球も、バッテリーそれぞれが微妙に間合いを変化させていた。髙橋佑が少しゆっくり目に返球したり、高橋奎が素早くセットポジションに入ったりという感じで。

 そして5球目、佐野日大の松本弘司監督がついにスクイズのサインを出した。だが、「ランナーが走ったのが見えた」(高橋奎)とこれを見破ったバッテリー。冷静に外角へ外す直球を投じ、打席の佐川はバットに当てたものの、ファウルとなった。痛恨の3バントスクイズ失敗。佐川は、「あそこで決められていれば」と悔やんだ。

 この後、1番竹村律生(2年)が四球で出塁するも、2番長沢がファーストゴロに倒れて、結局無得点に終わった佐野日大。これで、行ったり来たりしていた序盤の流れが、龍谷大平安に移った。


 2回裏、龍谷大平安の消耗作戦は続く。8番髙橋佑の先制打、1番徳本の2ランを含め、どの打者も球数を費やすことに徹した。
 徳本の一発で、「心が折れそうになった」という田嶋は、2回を投げ終えた時、すでに球数が59にまで達していた。

 ただしこの2回裏の攻防。龍谷大平安にとっても、流れを再び失いかねない失敗を犯している。先頭の6番常仁志(3年)が死球で出塁した後、7番石川拓弥(3年)は1球目をバントしようとするが、空振りに。キャッチャー・佐川からの牽制球で、常は一塁で刺されてしまった。
 その後、石川が二塁打を放ち、髙橋佑のライト前ヒットで生還することになるが、ベンチの原田英彦監督は、すぐに石川を呼びとめて、バント失敗の場面を指摘している。
 消耗作戦が実って、結果的に先制点を取れたものの、一歩間違えば・・・というバント失敗でもあった。

 5回に4番河合のタイムリー、7回に1番徳本のタイムリー三塁打などで追加点を奪った龍谷大平安。先発の高橋奎は、新チーム結成後チームとしても公式戦で初めてとなる完投を果たした。

 一方の敗れた田嶋は、「2回の本塁打で心が折れそうになったが、自分の中で何かが変わり、最後まで投げようと思った」と不思議な感覚になったことを明かす。本塁打の後、一度は代えてほしいと思ったそうだが、行動では続投を志願していたのだ。
 今大会では、智辯学園明徳義塾など強い相手と対戦し、手応えを感じた半面、「力不足も感じた」という田嶋。最後は疲れからサイドスローのような状況になったが、決してマウンドを降りようとしなかった。

 夏へ向けての課題を、「上半身と握力」と話し、甲子園を後にした。

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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