試合レポート

日本文理vs東海大三

2013.10.22

日本文理vs東海大三 | 高校野球ドットコム

勝負を決めた池田主将の一打(日本文理)

勝負の決勝!決めたのは主将の一打!!

準決勝に続き、決勝の勝負を決めたのは主将のバットだった。

日本文理の6番・池田貴将(2年)。

延長11回裏。ヒットと2つ四球で一死満塁となって、この日4安打3打点の主将に打席が廻ってきた。一死二、三塁から途中出場の5番竹石稜(2年)が歩かされた直後の場面。それでも、主将の気持ちは冷静だ。
「準決勝もそうでしたが、後ろに繋ぐ気持ちでした。1アウト満塁なので、後ろに繋ぐとしたら、アウトになるということだったのですが(笑)」。

マウンドの東海大三の左腕・平林俊太(1年)が池田に対する。1ボール2ストライクからの4球目、平林が投じた渾身の直球を弾き返した。
「手応えはあった。外野に飛んだので、(最低でも)犠牲フライにはなる」と池田。打球はグングン伸びて、レフトの頭上を越える。
サヨナラゲームを確信し、右手を高々と突き上げた主将に、チームメートはハイタッチで迎えた。

「チームが一丸となった試合」と笑顔を見せたのがネクストバッターズサークルにいたエースの飯塚悟史(2年)。大井道夫監督は、「最後まであきらめない気持ちで、自分達を信じて試合をやるんだという所を見せてくれた。監督として子供たちを褒めてやりたい」と讃えた。

「チャンスで廻ってくるのは、何かの縁だと思う。今日は良い結果が出てよかった」と打った池田は誇らしげに話した。

背番号10の左腕・中村海誠(2年)が先発した東海大三に対し、日本文理のマウンドには飯塚。大井監督はチャンピオンを決める勝負の舞台にエースを立てて臨んだ。

しかし飯塚は序盤から力みが目立ち、東海大三打線に捕まる。1回に1点、3回には3点を失い、0対4と大きなビハインドを背負った。
3回表の守りを終えて、大井監督はナインに喝を与える。ただその裏にも、「子供たちが焦ってはいけなので、まず1点ずつ返していこう」と序盤には決まらなかったバントを決まるまで継続した。そして采配も当たる。

3回裏、この日1番起用の星兼太(1年)がヒットで出塁すると、2番黒䑓騎士(2年)がバントを初めて成功させた。ここから打線が繋がり、一死満塁で打順は5番。
この試合では背番号11の川口達朗(2年)を置いていたのだが、大井監督は、不調でスタメンを外れていた本来1番打者の竹石を代打に送った。
その竹石が期待に応え、ライトへの犠牲フライで1点を返す。この働きに、指揮官は竹石を試合に残して、センターの守備に就かせた。

竹石の犠牲フライの間に、二塁走者、一塁走者もそれぞれ進塁する。そして6番池田がレフトオーバーの二塁打を放ち、「1点ずつ返す」予定が一気に1点差まで詰め寄る形となった。

さらに4回、2番黒䑓のタイムリーで、ついに4点あった差を振り出しに戻すことに成功。苦しむエースに打線が報いた。


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7回のピンチで踏みとどまったエース飯塚

エース・飯塚にとって最大の勝負所は7回だった。

4点差を追いついてもらったものの、6回に再び1点を勝ち越された飯塚。
7回、先頭の東海大三4番・浦野雅也(2年)に左中間を破られる三塁打を浴びる。無死三塁のピンチ。キャッチャーの鎌倉航(2年)、サードの池田主将を中心にタイムを取って内野陣はマウンドに集まった。次々にエースに声をかける。

「ベンチからは1点はOKという指示があったが、ここで取られると勝ち目がなくなってしまう。ここは0で抑えるぞと飯塚と話しました」(鎌倉)。

「皆がいるから」(池田)。

マウンドの飯塚も覚悟を決めた。「絶対に相手のペースにはさせない」。

タイムが明け、次の打者である5番原弘峻(2年)をショートフライに打ち取った。
一つアウトにしたことで、飯塚のギアはさらに上がる。力みを消え、次の打者、その次の打者に三振を取りに行った。

6番青木洸大(2年)、7番池田翔太(2年)を狙い通りに連続三振。「試合中にしっかりと修正して、(勝負所の)ピンチを抑えられるようになった」と受ける鎌倉も感心するほど、飯塚が見せた勝負の球は凄まじかった。

続く8回も三者三振。そして初めて三者凡退に打ち取ったことで、やや東海大三よりだった流れを完全に断ち切り、イーブンに戻した。

試合は延長に突入したが、「15回まで投げ切るつもりだった」と必ず流れが来ることを信じていたという飯塚。準決勝と同じく、ネクストバッターズサークルで池田のサヨナラ打を見守った。
「準決勝、決勝と延長を投げ切ったのは自信になりました。(11月の)明治神宮大会へ向けてここからもっと体力をつけていきたい」とさらなる向上を口にした飯塚。
1年前の北信越大会で呆然としていた姿から、大きく成長を遂げた飯塚の背中は自信に充ち溢れているようでもあった。

目標だった北信越を制して明治神宮大会を決めた日本文理ナイン。大井監督は、「全国の良いピッチャー相手にどれだけウチのバッティングが通用するか。また、飯塚が全国の良いバッター相手に投げられるか、私自身も楽しみです」と次のステージに目を向けた。
ただ池田主将は、「勝ったことは良い経験になったけど、走塁ミスなど細かな課題も出た。そういう部分も神宮に向けて徹底していきたい」と気を引き締めることも忘れなかった。


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涙が止まらない1年生左腕・平林(東海大三)

一方で準優勝に終わった東海大三
エースの高井ジュリアン(2年)ではなく、左腕の中村を立てたが、小林健二主将は、「中村も夏まではエース番号背負った選手」と話す。

そして6回からリリーフした1年生の平林も左腕。このリリーフの場面が、藤井浩二監督が、『左の強打者が多い日本文理に左腕をぶつける』という、エースの高井で挑まなかった理由が見て取れる所だ。

平林は、やや捻りを加えたフォームで日本文理打線を抑えた。しかしセットポジションになると捻りができなくなる点や、球数が80球を越えたあたりから球威が落ちた部分が、日本文理打線に捕まった要因に思える。

日本文理の池田にサヨナラ打を浴びた後、平林は顔を覆い隠して涙を流した。
それでも、「満塁になっても逃げて四球を与えるのではなく、勝負にいって打たれた。仕方がない」と小林主将は1年生左腕を庇うとともに、“勝負”をした気持ちの強さを誇らしく感じていた。

1球、1点で勝負に敗れ、涙を流すことを経験した1年生。来年への成長を誓う、確かな1球にもなったことだろう。

(文=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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