大師vs麻生総合
会場校仕事もこなしながら、大師コールド発進
9人で試合に臨む麻生総合ナイン
秋季大会はいつも、新チームになって、「よし! いよいよオレたちの代のチームだ!」という2年生たちの活気が伝わってきてもとてもフレッシュな感じがいる。
しかし、その一方で3年生が抜けて、チームを維持するのがやっとというところも少なくない。麻生総合も、この秋はギリギリの9人で川崎地区ブロック予選に挑んでいる。だから、怪我も怖いし、神奈川県の場合は地区ブロック予選はリーグ戦で戦うため、日程的には4日間で3試合をこなすことが原則となっている。残暑と言っても、まだまだ暑い今年の夏である。9人の選手をどうやりくりしていくのかということは、それだけでも大変なことだ。村瀬真平監督としても、まず3試合をきちんとこなすことが大前提となる。投手起用も、当然日程のことを考慮しなくてはならない。
この日の麻生総合のマウンドは背番号9の加藤君が担った。決してスピードがあるわけではなく、左腕からの緩いカーブと、何とかコーナーにストライクを入れて行きたいというストレートで切り抜けなくてはならない。それでも、タイミングを外すことでかわせられれば何とかなる。初回はそれができて0に抑えた。
しかし、中盤の4回、5回には大師打線に掴まって大量点を許し、結果的には5回コールドゲームとなった。
夏の大会のメンバーが多く残った大師は、試合の経験値ということでは麻生総合に勝っていた。そもそも、大師は夏のチームは3年生が二人しかおらず、岸根から異動して就任した野原慎太郎監督も、「まずは、部員集めから始めました」という状態だった。それでも、この夏は私学の強豪向上に善戦したことで、選手たちには大きな自信になった。その自信に裏付けされて挑んだこの秋の大会である。「川崎地区の高校野球の勢力構図を変えてみたいという気持ちもありますよ」と、野原監督は意気込む。
先発した佐々木君(大師)
その意気込みの表れの一つが今回の会場校としての役割だ。大師とて、決して部員に恵まれている学校ではない。それでも敢えて会場校に立候補したのは、そのことで学べることも多いと判断したからでもある。選手たちも、野原監督や小山内一平部長の指示に従って、会場校としての仕事をこなしながら、試合も戦っていくという一人何役も兼ねながらというもので、確かにこうして学んでいくことも大事なのだろうと改めて思わされた。
また、場内アナウンスは放送部にも依頼したり、野原監督の岸根時代の教え子が手伝いに来てくれたりと、そんな手造りの運営で進行していった大会となった。
試合は、3回までは2対2、9人の麻生総合が3回に4番浅山君のタイムリー打で追いついて食い下がっていた。
しかし、「3回で一度区切って、4回からは新しい流れを作ろうと思っていた」(野原監督)という大師は4回、8番近野君の左中間二塁打から好機を作って、小林君の三塁打、6番萩野君の右線二塁打などで6点を挙げて、一気に流れを引き寄せた。
5回にも金井君の左中間二塁打などで4点を追加して、大師はコールドゲームとした。
大師のマウンドは178㎝88kgの佐々木君だったが、恵まれた体をまだ持て余し気味のところもあるが、時に重そうなストレートがドーンと伊藤君のミットに叩きつけられていた。この日は、球にまだバラつきが見られたものの、下半身がもっと安定してこれば、かなり期待できるのではないかという素材であることは確かだ。ひと冬越えて、どこまで伸びていかれるのか、早くも来春を期待したい投手でもある。
(文=手束仁)