試合レポート

木更津総合vs上田西

2013.08.11

全国でも見せた止まらない集中打

 2年連続出場の木更津総合。初戦突破を目指したこの試合。実に木更津総合らしさを発揮した試合であった。試合序盤、木更津総合打線は上田西の先発・浦野 峻汰(3年)に相当苦しめられた。浦野は実に打ちにくい投手。

 浦野は右手のグラブを上向きに使いながら開きを抑えていき、角度ある投球フォーム。常時135キロ前後を計測したストレートはキレがあり、実戦的。そして130キロ台の投手にしては125キロ前後の高速スライダーを武器にする投手である。木更津総合打線は浦野のスライダーをなかなか捉えることができず4回無安打に抑えられる。

 先発の千葉 貴央(2年)は130キロ前半の直球、100キロ台のチェンジアップ、カーブを投げ分ける。また1球ごとに投げるテンポを変えていきながら打たせまいと工夫している。だが4回表、上田西は1番武田 竜樹(3年)にライトの頭を超える二塁打、2番荒井 圭佑(3年)の犠打で一死三塁になり、3番外谷 健人(3年)の遊ゴロ。遊撃の檜村 篤史(1年)が三塁走者の武田が目に入ってしまったのか、ファンブルし、武田がその間に生還し、1点を先制する。さらに5回表、上田西は5番小崎 脩造(3年)は中前安打を放つと、6番金井 広野 (3年)は投前犠打で一死二塁として、7番浦野の四球で一死一、二塁として、8番大塚 雅也(3年)が左前適時打を放ち、2対0。良いペースで試合運びができていた。

 そして5回裏、寒河江 海人(2年)は空振り三振。ここまで5奪三振。このまま上田西ペースと思いきや、流れが変わりそうな事が起こる。6番逆井 将(3年)が四球で出塁、7番檜村 篤史(1年)も四球で一、二塁。すかさずここはタイムを取る上田西ベンチ。気持ちを落ち着かせようとしていた。そして8番秋庭 豪太(3年)。狙ったのはここまで苦しんでいたスライダーであった。真ん中高めに甘く入ったスライダーを捉え、左中間を破る二塁打を放ち、二者生還し、同点に追いつく。秋庭の積極的なスイング。このヒットにより木更津総合ナインが変わった。9番千葉が右前適時打で1点を勝ち越し。さらに1番東 龍弥(2年)の左前安打、2番岡田 裕平(3年)の三失で一死満塁とすると、3番猿田 瑞季(2年)が2点適時打で5対2とすると、一死二、三塁となって4番谷田 涼(3年)の2点適時打で7対2。無安打から一挙7点を入れる猛攻であった。浦野は谷田に打たれたところで降板する。


 ハマった時に止まらないのが木更津総合打線の怖さである。実はこの試合展開。予選でも同様の試合展開から集中打で勝利を決めている。それは5回戦の流通経済大柏戦である。木更津総合打線は6回まで無安打に抑えられていたが、7回に打線がつながり一挙6点を入れる猛攻があったのだ。自分たちで狙い球を定め、打ち崩している。上田西は流れを変えるために継投策もあった。ただ無安打ペースからの連打での得点シーンの投手交代のタイミングはとても難しい。多少ピンチを迎えていれば、投手を準備出来ていたかもしれない。ただ浦野は非常に良いペースで抑えこんでいたので、5回の連続四球は想定外だっただろう。多少、点を取られても、浦野ならば立て直すことができるだろうと思いながら見ていたはずだ。

 ただ木更津総合はそういう隙を逃さず、集中打でビッグイニングを築くチームである。千葉大会から見ていて木更津総合ナインの勝負をかけた場面での集中力の高さに驚くばかりである。

 二番手右腕の柳沢 和希(3年)を投入する。柳沢が後続の打者を抑えて切り抜ける。

 6回以降、柳沢は素晴らしい投球を見せる。右オーバーから135キロ~140キロ(最速142キロ)の直球、スライダー、フォーク、カーブをテンポ良く投げ分けながら投球を組み立て、木更津総合打線を無失点に抑える投球。柳沢の好投もあったからか、9回表、上田西は反撃を見せる。

 先頭の5番小林 峻(3年)が遊撃内野安打を放つと、俊足の小林はすかさず盗塁を決める。6番金井 広時(3年)の四球で無死一、二塁。7番近藤 卓也(3年)の内野ゴロで二死二、三塁とすると8番大塚が左前安打を放ち、1点を返し、7対3。9番宮澤 義也(3年)が一邪飛で二死一、三塁となったが、1番武田が左中間を破る長打を放ち、二者生還し、7対5まで追い上げる。だが2番荒井が空振り三振に倒れゲームセット。木更津総合が7対5で2回戦進出を決めた。

木更津総合らしい試合を見せた試合であった。130キロ後半の速球、キレのあるスライダーを投げる高レベルな左腕でも攻略できる集中打は見事であった。今後も好投手擁するチームと対戦が見逃せない。

(文=河嶋 宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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