試合レポート

金光大阪vs太成学院大高

2013.07.21

影の優勝候補、4回戦へ進出

 「志有る者は事竟に成る」

金光大阪の応援スタンドに掲げられた横断幕にはこの言葉があった。その意味は、やろうとしている志がしっかりしてさえいれば障害があっても成し遂げることができる、というものである。「志」とはもちろん、2007年以来の甲子園出場に他ならない。

金光大阪は初回、ニ死一、三塁のピンチを無失点で切り抜けると強力打線が太成学院の好左腕・近藤に襲い掛かる。1番・佐野がレフト前ヒットで出塁すると2番・寺本は1球でバントを決める。一塁へ気迫のヘッドスライディングをすると右打者でありながらタイミングは間一髪という見事なバントであった。3番・佐々木が初球をセンター前へ弾き返すと、4番・岩崎もファーストストライクを捉え先制のタイムリーツーベースヒットを放つ。近藤のストレートはスタンドからでもその力強さがハッキリとわかったが、金光大阪打線の振りの強さは更にその上を行っていた。その後二死満塁となり打席には7番・米澤。

金光大阪からすれば長打を含む3安打を放ちながらわずか1得点、なんとか追加点が欲しい場面であり、太成学院にとっては主導権を渡さないためにもなんとか踏ん張りたい場面。
いきなり訪れた序盤の山場に米澤は低めの球に空振り三振してしまう。しかしワンバウンドした球をキャッチャー・福丸が捕球できず振り逃げとなり三塁ランナー・佐々木がホームイン。更に続く西峰の打球が相手のエラーを誘い3点目が入る。三塁スタンドでは100人を超える部員が大声を張り上げ、迫力ある応援は先制パンチによって更に熱気を帯びていた。


2回にも先頭・佐野がヒットで出塁すると寺本はまたも1球で見事なバントを決める。このバントに悪送球が重なり無死一、二塁となると佐々木もきっちり送りバント。一死ニ、三塁から岩崎のレフト前タイムリーヒット、5番・阪下のゲッツー崩れで2点を加えた。上位打線が機能する金光大阪だが3回に先発・本野が乱れる。

太成学院の1番・田村にデッドボールを与えると、2番・大東、3番・松元を連続フォアボールで歩かせてしまう。絶好の反撃のチャンスを得た太成学院だったが、田村の盗塁失敗もあり5死四球をもらいながら得点は押し出しによる1点のみ。ランナーのたまった場面であと1本が出なかった。

 それでも得点した直後の大事なイニング、3回裏を初めて三者凡退に抑えると4回表、8番・甲川が流れを呼び込む。初球、鋭い当たりのファールでスタンドを沸かせると3球目をライト前に運び、近藤の送りバントで二塁へ進む。一死二塁から田村の打席で、甲川は果敢に三盗を仕掛けるが惜しくもタッチアウト。田村も次の球でセンターフライに打ち取られ、傾きかけた流れを引き寄せられない。するとみたび、金光大阪の上位打線がつながる。

4回裏、佐野がこの日3本目のヒットで出塁すると、太成学院は近藤から青山へスイッチ。右のパワーピッチャーである青山に対し、寺本がバントの構えで2ボール1ストライクとカウントを作ると、4球目にバスターエンドランを成功させサード強襲のヒットを放つ。佐々木がきっちり送り一死二、三塁とすると岩崎はセンターへ大きな犠牲フライ。二死二塁から阪下もライト前タイムリーヒットで続きリードを6点に広げた。試合の流れを不動のものにする2点を加えると6回には、岩崎がとどめのツーランホームラン。


7回表に本野が制球を乱し、押し出しで1点を奪われたが最後まで力で押すピッチングを貫き通す。7回で11死四球を与えたが、散発4安打2失点に抑えエースの役割を果たした。
打っては1番・佐野が3安打、2番・寺本が犠打2つとバスターエンドランによる1安打、3番・佐々木が犠打2つと2出塁(ヒットとフォアボール)、4番・岩崎がホームランを含む3安打5打点、5番・阪下が1安打2打点と上位打線が完璧に仕事をこなした。猛打の影にも1球で確実に決めるバント力や、相手が犯した2つのエラーを確実に得点に結びつけるしたたかさも光った。

春季大会では1-0というスコアで履正社に破れ惜しくも優勝を逃した金光大阪。実力校・太成学院相手に打線が順調な仕上がりを見せ履正社大阪桐蔭への挑戦権獲得へ一歩駒を進めた。

(文:小中翔太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.27

【京都】龍谷大平安、京都成章、北嵯峨などが2次戦進出戦に挑む<春季大会>

2024.04.27

【大阪】3回戦は28日に大阪桐蔭、履正社が登場、29日には上宮-関西創価など<春季大会>

2024.04.27

横浜に入学した「スーパー1年生5人衆」に注目せよ! 佐々木朗希二世、中学日本代表の二刀流など明日の慶應戦で活躍なるか!?

2024.04.27

【滋賀】シードの滋賀学園、彦根総合が登場<春季県大会>

2024.04.27

【広島】広陵は瀬戸内と、広島商は崇徳と夏のシードをかけて激突<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!