金光大阪vs太成学院大高
影の優勝候補、4回戦へ進出
「志有る者は事竟に成る」
金光大阪の応援スタンドに掲げられた横断幕にはこの言葉があった。その意味は、やろうとしている志がしっかりしてさえいれば障害があっても成し遂げることができる、というものである。「志」とはもちろん、2007年以来の甲子園出場に他ならない。
金光大阪は初回、ニ死一、三塁のピンチを無失点で切り抜けると強力打線が太成学院の好左腕・近藤に襲い掛かる。1番・佐野がレフト前ヒットで出塁すると2番・寺本は1球でバントを決める。一塁へ気迫のヘッドスライディングをすると右打者でありながらタイミングは間一髪という見事なバントであった。3番・佐々木が初球をセンター前へ弾き返すと、4番・岩崎もファーストストライクを捉え先制のタイムリーツーベースヒットを放つ。近藤のストレートはスタンドからでもその力強さがハッキリとわかったが、金光大阪打線の振りの強さは更にその上を行っていた。その後二死満塁となり打席には7番・米澤。
金光大阪からすれば長打を含む3安打を放ちながらわずか1得点、なんとか追加点が欲しい場面であり、太成学院にとっては主導権を渡さないためにもなんとか踏ん張りたい場面。
いきなり訪れた序盤の山場に米澤は低めの球に空振り三振してしまう。しかしワンバウンドした球をキャッチャー・福丸が捕球できず振り逃げとなり三塁ランナー・佐々木がホームイン。更に続く西峰の打球が相手のエラーを誘い3点目が入る。三塁スタンドでは100人を超える部員が大声を張り上げ、迫力ある応援は先制パンチによって更に熱気を帯びていた。
2回にも先頭・佐野がヒットで出塁すると寺本はまたも1球で見事なバントを決める。このバントに悪送球が重なり無死一、二塁となると佐々木もきっちり送りバント。一死ニ、三塁から岩崎のレフト前タイムリーヒット、5番・阪下のゲッツー崩れで2点を加えた。上位打線が機能する金光大阪だが3回に先発・本野が乱れる。
太成学院の1番・田村にデッドボールを与えると、2番・大東、3番・松元を連続フォアボールで歩かせてしまう。絶好の反撃のチャンスを得た太成学院だったが、田村の盗塁失敗もあり5死四球をもらいながら得点は押し出しによる1点のみ。ランナーのたまった場面であと1本が出なかった。
それでも得点した直後の大事なイニング、3回裏を初めて三者凡退に抑えると4回表、8番・甲川が流れを呼び込む。初球、鋭い当たりのファールでスタンドを沸かせると3球目をライト前に運び、近藤の送りバントで二塁へ進む。一死二塁から田村の打席で、甲川は果敢に三盗を仕掛けるが惜しくもタッチアウト。田村も次の球でセンターフライに打ち取られ、傾きかけた流れを引き寄せられない。するとみたび、金光大阪の上位打線がつながる。
4回裏、佐野がこの日3本目のヒットで出塁すると、太成学院は近藤から青山へスイッチ。右のパワーピッチャーである青山に対し、寺本がバントの構えで2ボール1ストライクとカウントを作ると、4球目にバスターエンドランを成功させサード強襲のヒットを放つ。佐々木がきっちり送り一死二、三塁とすると岩崎はセンターへ大きな犠牲フライ。二死二塁から阪下もライト前タイムリーヒットで続きリードを6点に広げた。試合の流れを不動のものにする2点を加えると6回には、岩崎がとどめのツーランホームラン。
7回表に本野が制球を乱し、押し出しで1点を奪われたが最後まで力で押すピッチングを貫き通す。7回で11死四球を与えたが、散発4安打2失点に抑えエースの役割を果たした。
打っては1番・佐野が3安打、2番・寺本が犠打2つとバスターエンドランによる1安打、3番・佐々木が犠打2つと2出塁(ヒットとフォアボール)、4番・岩崎がホームランを含む3安打5打点、5番・阪下が1安打2打点と上位打線が完璧に仕事をこなした。猛打の影にも1球で確実に決めるバント力や、相手が犯した2つのエラーを確実に得点に結びつけるしたたかさも光った。
春季大会では1-0というスコアで履正社に破れ惜しくも優勝を逃した金光大阪。実力校・太成学院相手に打線が順調な仕上がりを見せ履正社、大阪桐蔭への挑戦権獲得へ一歩駒を進めた。
(文:小中翔太)