試合レポート

大阪商大堺vs初芝立命館

2013.07.21

大商大堺が延長13回に及ぶ熱戦を制し、4回戦進出!

 まさに死闘となったこの試合。注目と言えば大商大堺の林田 竜郎(3年)であった。179センチ77キロ。実際に見ると均整が取れた筋肉質な体型でアスリート体型であることは彼のことを言うのであろう。ユニフォームの着こなしも良い。彼は身体能力の高さ、パンチ力のある打撃がスカウトから注目されている。投手をやれば140キロを計測するほどの強肩で、シートノックではセンターからおよそ50メートルから60メートルほどの距離だろう。低い軌道でキャッチャーミットへ届く強肩を披露し、モノが違う素材だと感じた。だが林田だけではなく、大商大堺、初芝立命館ともに魅力的な選手が揃うチームであった。

 初芝立命館の先発は小野 竜世(3年)。彼は近鉄、西武で活躍した小野和義氏の息子である。投球フォームを見ると実に筋が良い投手。開きが小さく、上半身の旋回を綺麗にとって、肘を使って振り下ろすフォームは惹かれるものがある。球速は130キロ前半は出ており、スライダー、チェンジアップをテンポ良く投げ分け、クリーンナップに臆せず内角へ投げる度胸もあり、簡単には打ち崩せないだろうと思っていた。

 まず1回表に3番として出場した林田と対戦。レフトへ大きな当たりを打たれたが、フェンス上まで伸びたが、左飛。無失点で切り抜ける上々の立ち上がりであった。

 その裏、大商大堺の梅田翔悟(3年)。ノーワインドアップから体を沈みこませて、振り下ろす投球フォーム。球速は130キロ前半は出ていそうで、スライダー、カーブ、チェンジアップ。変化球の切れ味はかなりのもので、コントロール自体もまとまっているので、打ちにくい。好投手同士の対決でなかなか見応えがあった。

 二人の投げ合いの均衡が敗れたのは5回表、6番山内 勇人(2年)が内野安打で出塁し、7番梅田の犠打で一死二塁とすると8番堤 裕基(3年)が高めに入った直球を見逃さず、ライトスタンドヘ飛び込む2ランホームランで先制する。小野は本塁打を打たれたが、7回二死まで粘り強く投げ抜き、二番手左腕・今井 友樹(3年)にバトンタッチ。今井が抑えて7回裏を迎えた。


 7回裏、初芝立命館は3番井上 修平(3年)が四球で出塁し、4番中村 悠人(3年)が左中間を破る長打を放ち、井上が生還し、1点差に迫る。さらに5番橋本の時にパスボールで無死三塁。橋本 瑛人(2年)は空振り三振に倒れ、一死。6番松野 正(2年)の当たりは一塁ゴロ。一塁手がタッチしにいくが、空タッチとなり、一死一、三塁のチャンス。7番大藪 秀幸(3年)は中飛。三塁走者がタッチアップ。強肩・林田との勝負になり、クロスプレーとなったが、セーフ。初芝立命館が同点に追いつく。

 さらに8回裏にも一死から2番五十嵐 大輝(3年)の四球、3番井上の内野安打で一死一、二塁。ここで投手を交代し、梅田がレフト。二番手に森 魁人(2年)が登板する。しかし森は4番中村に死球を与え、一死満塁。森はここで降板。再び梅田がマウンドへ上がる。梅田は橋本を二ゴロ、松野を空振り三振に打ち取り、ピンチを切り抜ける。9回ともに決定打が出ず、試合は延長戦へ。

 注目の林田は左飛、遊飛、犠打、二飛とノーヒットだった。初芝立命館の今井も中々の好左腕だった。ノーワインドアップから右肩を高く掲げて、振り下ろす投球フォーム。体を沈みこませて、その反動を使って振り下ろすストレートは130キロ台を超えていそうで、スライダーとのキレが素晴らしい。大商大堺打線はなかなか今井を打ち崩せずにいたが、林田は延長11回表に三塁手を襲う強襲安打を放った。これは良い兆候かなと思った。それまで力みでうまくボールを捉えることができていなかった林田だが、この打席ではボールに食らいつくことができていた。次の打席に回ることがあれば、さらに楽しみだと思った。そして林田の打席は延長13回表にまわってきた。

 まず1番佐竹 惇壱(3年)が右前安打で出塁、2番中峯 光次郎(2年)の犠打で一死二塁とすると、林田にまわった。林田は今井の甘く入った直球を逃さなかった。打球はレフト線を鋭く飛ぶ当たりとなり、勝ち越し打。林田は全速力で駆け抜け二塁打。林田は塁上で大きくガッツポーズを見せた。さらに攻撃は続き、4番近藤 真一朗(3年)は死球、5番名賀は左飛で二死一、二塁、6番山内は右前安打を放ち、林田が生還し、4対2。一塁走者の近藤は三塁へ進んで、二死一、三塁となって、7番梅田は三塁手の失策を誘うゴロを放ち、5対2。延長13回に3点を勝ち越した。


 その裏、初芝立命館は2番五十嵐が四球、3番井上が中前安打、4番中村は三塁内野安打、無死満塁のチャンスをつくる。5番橋本は一飛、6番松野の代打・中山 和駿(3年)は遊直で二死。7番大藪の当たりは三塁ゴロ。これでゲームセットと思いきや三塁手が弾き、1点を返し、5対3。だが8番今井を二ゴロに打ち取り、ゲームセット。大商大堺が延長13回の激戦を制し、4回戦進出を決めた。

 まさに激闘。両チームに拍手を送りたくなる試合であった。勝利した大商大堺。まず林田は別格の逸材。強打者が多い大阪府においても打球の速さ、スイングの速さは一味違うものがあり、足の速さ、肩の強さといい身体能力も素晴らしいものがある。まだ荒削りなところはあるものの、今年のドラフト候補に上がるのも頷ける。何より延長13回に勝ち越し打を放った勝負強さが素晴らしい。この調子で、次の試合に臨んでほしい。

 4番に座った原野 風騎(2年)もパンチ力ある打撃と堅実な三塁守備が光るプレーヤー、身のこなしが良く、打力強化できれば面白いショートストップ・山内、林田に負けない長打力を秘めていそうな名賀と面白い選手が揃っていた。

 初芝立命館は小野、今井の両投手の活躍が光った。特に今井は延長13回に勝ち越しを許したが、それまでの投球は素晴らしいものがあった。上背もあり、スピードもあり、キレのあるスライダーもある大学からのブレークに期待したい大型左腕候補。

 勝利した大商大堺はセンバツ出場の履正社と対戦。今回のように粘り強い戦いを演じ、勝利をモノにしたい。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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