報徳学園vs関西学院
窮地を救った背番号10
報徳・乾陽平、関学・長谷篤の投げ合いが注目されていたこのカード。
[stadium]尼崎ベイコム球場[/stadium]は朝早くから観客がつめかけ、試合開始間もなく外野席を開放。スタンドが決して大きくない球場ではあるが、総勢4000人の観衆が集まった(尼崎ベイコム球場でこれだけの観客が集まるのは異例なこと)。
そんな中、報徳の先発のマウンドに立ったのは背番号10の田中潤。
田中は公式戦のマウンドに立ったのは昨秋の南阪神地区大会の1イニングのみ。大会前に不調を囁かれていた乾は、昇り調子にはなっていたものの、この日は大事を取って先発を回避。夏の大一番の第一戦の先発を任された田中だったが、初回にヒットの走者を背負うも内野ゴロで後続を断ち、以降はフライアウトを重ねていった。
関西学院の先発の長谷は、昨秋の近畿大会で履正社を相手に好投するも初戦で敗退。
キレのある変化球を制球良く投げ分け、安定感の高さには定評があったが、2月に体育の授業で左手中指を骨折。冬場に十分な投げ込みが出来ていなかったことが影響していたのかもしれない。1回戦の吉川(よかわ)戦ではピンチの場面から登板するも、制球に苦しみ本領を発揮できなかった。この日も毎回四球で走者を出し、苦しいピッチングが続く。2回にはヒットと四球で満塁のピンチを迎え、ここで8番・萩原幹斗に2点適時打を浴びるなど3点を失い、投げても投げてもなかなか自身を取り戻すことはできなかった。
田中潤は、6回まで2安打1四球無失点と完璧なピッチング。7回には2死球などで満塁のピンチを作り、内野ゴロの間に1点を失うも、最後まで冷静なマウンドさばきを見せた。
極度の緊張も見せなかった強心臓の左腕。乾の2番手として期待の高かった右腕・長島亜蘭が春の大会で右ひじを負傷するなど苦しい台所だった報徳学園だったが、田中の好投で以降の投手陣に一筋の光が差し込んだような気がした。
攻撃では機動力と小技を絡め、ソツなく加点していった。チャンスで好結果をなかなか出せなかった萩原がチャンスで大仕事をし、春の大会では1番を打っていた新井勝鏡の足で繋ぎ得点できたのも大きい。
報徳学園が春夏連続の聖地に向け、まずは好スタートを切った。
(文:編集部)