高知商vs岡豊
岡豊先発・森岡育栄(3年)
「2季連続甲子園ベスト4」にふさわしいプレーを
昨夏は明徳義塾が甲子園ベスト4。この春も高知がセンバツベスト4。高知県高校野球の評価はこれによって「躍進」から「強豪並び立つ」に変化した。
ちなみに、高知県勢の甲子園2大会連続ベスト4以上は1964年(昭和39年)春・第25回センバツでの土佐ベスト4、夏・第46回選手権での高知優勝。さらに1965年(昭和40年)春・第26回センバツでの土佐準優勝の3大会連続ベスト4以来、48年ぶり2度目の出来事。
ただ、これは決して両校のみによる成果ではない。応援団賞・最優秀賞を受賞した熱烈応援を背にセンバツ初優勝した浦和学院(埼玉)相手に善戦した土佐。限られた練習環境の中で昨秋、準々決勝で明徳義塾を破り3位決定戦で土佐を追い込んだ高知南など、高知県各校の切磋琢磨によって成し遂げられたもの。
いわば、この評価は高知県全ての野球部に与えられたといっても過言ではない。
ただ、2季連続甲子園ベスト4には当然、県レベルからソツのない野球をすべき責任が生じる。
その意味で県内公立高トップレベルに位置する両校のプレーは「残念」という言葉を用いざるを得ないものだった。
7回1失点(自責点0)と好投した・成田泰斗(高知商業)
敗れた岡豊でいえば6・7回にノーマークで二盗を許したシーン。結果的に盗塁を許したとしても、クイックモーションやけん制などで走者にプレッシャーをかけることはできたはず。特に1点リードで迎えた7回は一死一・三塁から1番・上田公太(3年)に二盗を与えたことが続く下村一成(3年)の逆転打に直結してしまった。山中直人監督いわく「『勝てるかも』から『勝てる』にする」野球を目指すのであれば、まずここから手をつけるべきである。
勝った高知商業も決して誉められた内容ではない。中でも2点リードで迎えた最終回、一死一・二塁で二塁正面のゴロを併殺にせず、次打者の安打で1点差に迫られたシーンは「たまらん」と呟いた正木陽監督のみならずとも看過してはいけない場面。ここは二遊間のみならず内野手の事前確認があれば防げたシーンだった。
もちろん、見るべきものもあった。岡豊の先発右腕・森岡育栄(3年)は最速137キロの切れ味鋭いストレートを次々と低めに投げ込み、スタミナ面が改善されれば私学強豪に立ちはだかる存在となることを示した。高知商業の2番手右腕・成田泰斗(3年)も、津村佑一朗(3年)が右ひじ痛により登録メンバーを外れる中、好救援で危機を救ってくれた。
それだけに輝きを判断ミス・確認ミスで帳消しにしてしまうのは何とも勿体無い。彼らには「2季連続全国ベスト4」の誇りをいい意味で活かしてほしい。そして野球をもっと探求することを切に願いたい。
(文=寺下友徳)