鹿児島実vs樟南
力投する川畑(樟南)
「思い通りの投球、できた」樟南・川畑
春の穏やかな晴天が広がった日曜日の午後。鹿児島実と樟南、鹿児島を代表する古豪の激突とあって、[stadium]鴨池市民球場[/stadium]は両校の応援者に加えて、一般の野球ファンも大勢訪れ、スタンドはほぼ埋まった。3回戦で当たるには惜しいカードであり、それだけ両チームに対する期待の裏返しといえるだろう。
だが、スタンドの熱気とは裏腹に、試合内容は今一つだった。
試合時間が2時間40分かかっている。序盤3回だけで約1時間費やした。理由ははっきりしている。鹿実の先発・横田慎太郎(3年)は6四死球、樟南・山下敦大(3年)は5四死球を与えて、守備のリズムが全く作れなかった。伝統の一戦にかける両者の意気込みが空回りしたような試合だった。
「いつもは中盤ぐらいから準備するけど、きょうは(山下の)調子が良くなかったので、早めの継投があると思って準備はできていた」と川畑。5イニングを投げ、被安打は詰まった内野安打1本のみだった。
投打の柱・横田(鹿児島実業)
圧巻は5回だ。4番・横田慎太郎は内角直球で空振り、5番・仮屋尊仁(3年)はフォークで空振り、6番・矢野久登(3年)は見逃しと3者連続三振を奪った。ヒット性の当たりは1本も打たれていない。高めの釣り球で空振り三振を取った時には、185センチの長身に会心のガッツポーズが出た。奪三振5で、5回からは1人の走者も出さないパーフェクトリリーフだった。
「腕がよく振れて、低めにボールがコントロールできた。思い通りの投球ができた」と振り返る。山之口和也監督も「よく投げてくれた。ゲームの流れを引き寄せられた」とたたえた。
打撃でも2安打放ち、8回には好走塁で2点目のホームも踏んでいる。9回には一死満塁の最高の場面で回ってきたが、三走が不用意に飛び出してタッチアウト。四球を選んで後続に託したが、あと1点届かなかった。投打にフル回転の活躍だったが、敗戦では笑顔になれるはずがない。唇を噛みながら、この試合でつかんだ手応えを胸に「夏は鹿実に勝って絶対に甲子園に行く」と雪辱を誓っていた。
(文=政 純一郎)