試合レポート

敦賀気比vs聖光学院

2013.04.01

悩める大器・山田誠也の覚醒で敦賀気比が準決勝へ

個人的なことだが、出場校がすべて出揃った3月28日の翌日、日刊スポーツに「小関順二氏の初戦総括」というコラムを掲載した。文章とともに表組で「注目選手」も35人紹介したのだが、注目選手の所属校が最も多かったのが敦賀気比の4人である。

喜多亮太(捕手)
米満一聖(三塁手)
浅井洸耶(2年・遊撃手)
峯健太郎(2年・中堅手)

1、2回戦の沖縄尚学京都翔英戦で彼らはどんなプレーをしたのだろう。
捕手の喜多はイニング間の二塁送球で沖縄尚学戦が最速1.88秒、京都翔英戦が1.82秒と目の覚めるような強肩を披露し、米満は京都翔英戦で逆転3ランと同点の口火となる二塁打を放ち、浅井は沖縄尚学戦で5打数5安打2打点と大活躍し、峯は1番打者として攻撃的精神に溢れるプレーを随所に見せ、注目を集めた。


 実はもう1人選出しようか迷った選手がいる。3番山田誠也(一塁手)である。最も魅かれたのはバッティングのときの「始動の遅さ」。右打者は前足(左足)を引いたり上げたりする動きからバッティングの動作に入るが、日本球界では「早くトップを作って備える」という考え方が行き渡り、山田のような遅い始動は一般的ではない。

しかし、プロ野球に在籍する外国人選手を見ればわかるように、MLB経験者はほとんど始動が遅い。遅い始動は差し込まれる危険性はあるが、投手の動きに惑わされないという利点がある。そういうことを相殺して早い始動を取るか、遅い始動を取るか選択するのだが、日本人プレーヤーは総じて早くも遅くもないニュートラルな始動をする傾向がある。

遅い始動をする山田は長く投手の球筋を見られるはずだが、緩い変化球に対してステップが早すぎるため、ほぼ動きが止まった状態でバットを振っていることが多かった。要するにタイミングの取り方が未熟。私が「注目選手」に入れなかった最大の理由である。

しかし、この聖光学院戦で2本の本塁打を放ち勝利の立役者になった。1本目が1対0でリードした3回表、3球目のチェンジアップを捉えてセンター越えの2ラン、2本目が6対0でリードした7回表、先頭打者として2球目のストレートをレフトスタンドに放り込んだ。

悩める大器が1回戦・沖縄尚学、2回戦・京都翔英、3回戦・盛岡大付と試合を経験するごとにタイミングの取り方を覚え、この試合の猛打爆発につなげた。3試合で2安打しか打てなかった山田に当りが出たことによって1~5番が見事につながった敦賀気比に対して、聖光学院の2年生左腕、石井成は内角攻めで抑えにかかったが、火に油を注ぐ結果になった。

敦賀気比の課題は投手陣にある。連戦になる準決勝、決勝を見据えて、エース、岸本淳希を6回限りで降板させたが、三染真利巻下昇大玉村祐典のリリーフが打ち込まれ、9回途中から岸本が再登板せざるを得なかった。

準決勝の相手は強打で相手校を粉砕してきた浦和学院北照戦の得点はすべて四球絡みだったので、敦賀気比バッテリーが攻撃的精神を発揮できれば北照のように大量失点するようなことはないだろう。

(文=小関順二)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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