都立雪谷vs都立葛飾商
力投する鈴木(都立雪谷)
都立雪谷・鈴木 13奪三振完封で寄せ付けず
ブロック予選から登場の都立雪谷。都立の雄といわれるチームだけにあり、今年も楽しみな投手が現れた。鈴木 優。入学時から高い期待を受けて都立雪谷の門を叩いた新2年生右腕。この日は都立葛飾商打線を全く寄せ付けなかった。
初回は先頭打者から二者連続三振を奪うと、それから奪三振ラッシュ。次々と三振を奪っていき、6回まで13奪三振。そしてヒットはわずか1本と都立葛飾商を寄せ付けない投球を見せた。
彼は智弁学園の青山 大紀(現・トヨタ自動車)とイメージすると分かりやすいだろう。テークバックが小さく、沈み込みが小さい投球フォーム。球速は135キロ程度は出ていそうだ。テークバックは小さいだけではなく、トップで肘を上げるまでのスピードが速く、そこから急に腕が出てくるので、打者からすれば打ちにくく、右打者はかなり打ちにくくしていた。
ストレートの勢いは本人からすると6割程度の力加減で、自己最速は143キロ。彼の腕の振り、ボールの勢いからして140キロ近いストレートは投げ込んでいてもおかしくはないだろう。
変化球の切れも素晴らしく、球種自体は多彩で、都立葛飾商は彼の変化球に全くタイミングがあっていなかった。球種は横に大きく曲がるスライダー、それよりも遅いが、更に大きく曲がるカーブ。球速が速く、打者の手元で落ちるスプリットを投げている。
鈴木(都立雪谷)
都内の新2年ならば都立小山台の伊藤 優輔に匹敵する存在ではないだろうか。ストレートの勢い、スピードは鈴木が上で、投手としてのセンスもなかなか良い。やや独特のテークバックで、沈み込みが小さいフォームをスカウトがどう評価するか注目だが、技術的にも、精神的にも、いずれはプロを狙えるような素質を持った投手である。
これほどのセンスがある投手ならば、中学時代は実績豊富かというとそうでもないようだ。
中学時代は投手・捕手を兼任し、どちらかというと捕手としての憧れが強く、投手としては今では考えられないほど制球が悪かったようだ。だから高校は捕手として勝負するつもりだったという。だが都立雪谷入学後、彼と同学年に投手が少なかったこと。そして制球がやや悪かったが、投手としても高い才能があることを評価されて、投手をやることとなった。投手に専念し、素質を伸ばしてきたのだ。ちなみに鈴木と組む捕手の三井は伊藤とバッテリーを組んでいて、たまに伊藤と連絡をとりあう仲であるという。
「伊藤は自分よりずっと上で、尊敬する存在ですから、たまにアドバイスをいただくことがあります」
それまでは捕手としての楽しみが大きかったが、今は投手としての実力を伸ばすことに貪欲であるという。
今年の新2年。
伊藤といい、先週に見た都立青山の田邊 傑といいスカウト受けするようなスケール溢れる逸材ではなくとも、大人びた投球、立ち居振る舞いが出来る実戦向きの投手が多い印象だ。都立ファンにとって彼はまさに夢あふれる逸材。伊藤と共に東京を盛り上げる存在となってくれることを期待したい。
(文=河嶋宗一)