試合レポート

鳴門vs宇都宮商

2013.03.23

「必然」の投手戦を制したイケメンエースの満点投球

 終わってみれば「必然」の投手戦だった。

 昨春の選抜大会で2試合連続延長戦サヨナラ勝ちの強烈なインパクトもあり「強打」のイメージがすっかり板に付いている鳴門。だが、今春の練習試合解禁直後の沖縄遠征では松本高徳(3年)・河野祐斗(3年)の三遊間が負傷。2人を欠いた3月9日・松山商(愛媛)との練習試合第1試合では、あと一本の決定打を欠き4対6で敗戦を喫するなど、チーム状態は決してよいものではなかった。

 加えて彼らを悩ませたのは「今日の先発は練習試合で立ち上がりが安定している飯岡健太(2年)。ただ、新井諒(3年)、小材佳久関口大介(2年)、君嶋謙蔵(3年)と4人を準備させています」(金子安行監督)と総力戦を辞さない宇都宮商の覚悟を持った継投。よって3回裏に二死二塁から4番・伊勢隼人(3年)がセンターオーバーの同点二塁打を放った以外、打線は凡打の山を築いていった。

 しかし、もう1つ鳴門には嬉しい誤算があった。「今日は板東に尽きる」と辛口批評の森脇稔監督もうなずくエース・板東湧梧(3年)の好投である。昨秋や前述の松山商戦では勝負どころでの不用意なボールから痛打を食らっていた板東だが、この試合では「手元で伸びて詰まっていた。ひじが柔らかくていい投手」と敵将すら認める最速135キロのストレートを軸に、昨年のエース・後藤田崇作(関西学院大進学)を彷彿とさせるスローカーブも多用。3回表には無死三塁からの暴投で1点こそ失ったものの、「今日は左打者が多いので一番ボールが飛んでくると思ったし、全部止めようと思っていた」(ファースト・伊勢)バックの好守にも助けられ、0を重ねていった。

 そして迎えた8回裏。鳴門は一死一・三塁の絶好機に練習試合の好調から5番・レフトに抜擢した橋川亮佑(2年)に代わり昨秋公式戦18打数9安打の鳴川宗志(2年)が代打に。一度はスクイズを外されチャンスを逸しかけた鳴川だが、「スタメンを外れて悔しかったので、思い切っていこうと思った」気持ちをセンター前タイムリーで結実させたことで、鳴門は昨年の洲本(兵庫)に続き、2年連続でのセンバツ初戦突破を果たした。

 「今日の板東は一番よかったです。真っ直ぐも走っていたし、投球練習からよく決まっていたスローカーブも含めて、しっかりコースにも投げてくれました。今日の投球は100点です。しかも(9回表二死一・三塁の大ピンチで)マウンドにいってもアイツ、笑っていましたし。頼もしいです」。

 昨年は後藤田とバッテリーを組み、ベスト8進出に貢献した女房役・日下大輝(3年)も太鼓判を押す板東の満点ピッチング。「もっと安心できるような投球をしたい」と晴れ舞台でのベストパフォーマンスにも飽くなき向上心を示すイケメンエースの活躍次第では、チームの目標とする「昨年以上のベスト4」も手の届く位置にある。

(文=寺下友徳)

[pc]

鳴門vs宇都宮商 | 高校野球ドットコム
[/pc]

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.20

【春季京都府大会】センバツ出場の京都国際が春連覇!あえてベンチ外だった2年生左腕が14奪三振公式戦初完投

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.20

【秋田】横手清陵と本荘が8強入り、夏のシード獲得<春季大会>

2024.05.20

【岩手】花巻東、水沢商、盛岡誠桜、高田が8強入りして夏シードを獲得<春季大会>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.17

「野球部や高校部活動で、”民主主義”を実践するには?」――教育者・工藤勇一さん【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.5】

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.19

【東海】中京大中京がコールド勝ちで17年ぶり、菰野は激戦を制して23年ぶりの決勝進出<春季地区大会>

2024.05.18

【秋田】明桜がサヨナラ、鹿角は逆転勝ちで8強進出、夏のシードを獲得<春季大会>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?