試合レポート

関西vs広陵

2012.11.05

関西vs広陵 | 高校野球ドットコム

6回に逆転3ランを放った坂田(広陵)

中国王者を懸けたライバル対決!勝負の行方は・・・

中国大会決勝は、関西と広島広陵のライバル対決。決勝で対戦するのは2006年以来6年ぶりとなった。
関西は左腕の児山祐斗(2年)、広島広陵は4番でもある下石涼太(2年)といずれもエースが準決勝から連投でマウンドに上がった。

ゲームは序盤、関西が主導権を握る。
1回表、1番の逢澤崚介(1年)が四球で出塁すると、2番小郷裕哉(1年)の1球目で盗塁を成功させる。小郷は送らずに強攻策。7球目を打ち返すと、打球はセンターの頭上を越える。逢澤が楽々と生還し、1点を先制した。
関西は2回にも8番田中彼方(2年)のタイムリー三塁打で1点を追加。先発の児山は3回まで毎回走者を背負いながらも無失点で切り抜けていた。

広島広陵の反撃は4回、二死から7番久保田駿(2年)が死球で出塁すると、8番柳澤一輝と9番熊谷治人(ともに2年)の連打で1点を返した。

連投の両投手はその後も、毎回のようにピンチの局面を迎えるが、欲しい所で三振が取れて切り抜けた。

6回表、先に動いたのが広島広陵の中井哲之監督。ここまで95球を投げていた下石と、ショート・太田創(2年)にシートを入れ替えた。
太田は142キロを計測する快速球で先頭打者をショートゴロに打ち取る。捌いた下石の好プレーも光り、流れが少し広島広陵に傾いた。

そして6回裏、このゲーム最初の大きな山場を迎える。
このイニング先頭の7番久保田は、児山の投じた初球にセーフティバントを仕掛けた。サード前に転がった打球は絶妙で、内野安打とする。続く8番柳澤はショートへのゴロを放つが、高く弾んだことが幸いして再び内野安打になった。9番熊谷の送りバントが失敗となって一死一、二塁。
この場面で打席を迎えたのは、中井監督が「本来は4番を打てる長打力がある」と評する1番坂田一平(2年)。このゲームではここまで2安打を放っている左打者だ。

マウンドの児山とキャッチャー・海野裕介(1年)の関西バッテリーは細心の注意を払った。
1球目と2球目はいずれもファウル。バッテリーが追い込んでの3球目、「良い球だと思いました」と海野が語る内角への球が来る。バッテリーの自信を持っていた球を、振り抜いたのが坂田。打球はグングンとライト後方へ飛び、そのままスタンドへ入り、逆転の3ラン。
「少し(真ん)中に入ってしまった。打ったバッターが凄かった」と話した児山の表情は、海野の言葉を借りれば「涙ぐんでいた」という。

ゲームはひっくり返った。


関西vs広陵 | 高校野球ドットコム

エース児山を中心に喜びを分かち合う

逆転をされた関西だが、まだ攻撃は3イニング残されている。
「新チームになって、個々でバッティングに力を入れてきた」(戸部大二主将=2年)という関西打線にとっては、ここからが努力の成果を発揮する時だった。

7回表、先頭の打席には打たれたばかりの3番児山。コントロールに苦しむ広島広陵・太田から四球を勝ちとった。4番土井慎二(1年)はサードゴロに倒れて走者が入れ替わるが、5番海野と6番戸部が連打を放ち1点を返した。
続く7番堅田拓己(2年)が死球で満塁となり、広島広陵の中井監督はショートの下石をマウンドに戻した。

4対3で1点差、場面は一死満塁。
エース下石がマウンドに戻った広島広陵に対し、関西の打席は8番田中彼。下位の打順ではあるが、このゲームでは三塁打を含む2本のヒットを放っている。1点警戒の前進守備を敷きながらも、二遊間は併殺も狙えるシフトをとった広島広陵。

2ボール1ストライクからの4球目、田中彼が放った打球はレフトへのフライとなった。タッチアップには十分な距離に、三塁走者の海野は捕球の瞬間にスタート。本塁を陥れて、再びゲームは振り出しに戻った。

打順はトップに戻り、1番逢澤が四球を選んでまたも満塁とチャンスを繋いだ関西。続く2番小郷はファーストへのゴロを放つ。『同点のままチェンジ』と思われた打球だったが、ファースト・坂田の前で大きく跳ね(記録は失策)、ライトへ抜けた。二人の走者が生還し、このイニング5得点。悔しい一発を浴びた児山に、どこにも負けない努力を重ねてきた打線が大きなプレゼントを贈った。
この攻撃に、次のイニングから逢澤への継投を考えていた江浦滋泰監督は、児山続投を決断する。

その裏に1点を失った児山だが、8回と9回をノーヒットに抑えて、中国チャンピオン投手の称号を手に入れた。
「連投の疲れはありましたけど、気持ちで投げました。無駄なデッドボールを与えてしまったのは課題です」とテレビインタビューで話した児山。その後の記者の質問には、「聞かれたのでああ答えましたけど、疲れはほとんどなかった」と言い切り、明治神宮大会での無四球完封を誓った。

エースの球を受け続けた海野は、「(本塁打を)打たれてから、逆に良くなった」と話す。その真骨頂が7回裏に1点を返された後、二死一、二塁で坂田に打席が回った場面。前の打席では2ストライクと追い込んだ後の一発だったが、ここでは3ボール1ストライクとボールが先行した。5球目がファウルでフルカウントになって、勝負球に選んだのが外角の直球。振り遅れ気味になった坂田のバットは、空を切った。
「ストレートには自信がある。悔いの残る球は投げたくなかった」と自分が一番信じている球を選択したことを話した児山。その決断は、ここ一番の勝負所は6回の場面ではなく、実は7回にあったことを物語っている。

勝負に勝った左腕は、取材する記者陣から一週間後の明治神宮大会についての質問を受けた際、「そんなに早いんですか」と目を丸くして驚いていた。
江浦監督が、「まだ若い」と評する関西。戸部主将は「中国地区の代表として、恥じない試合をしたい」と神宮の舞台に目を向けた。

一方で敗れた広島広陵。アドバンテージを守りきれなかったエースの下石は、投手経験がまだ浅い選手。このゲームでは打たれた場面もあったが、4回の二死満塁を凌いだように、修羅場をくぐり抜ける経験も味わうことができた。野手としても非凡なセンスを見せている。
逆転3ランを放った坂田や、快速球で魅了した太田。それに決勝で7安打を放った下位打線など、素質溢れる選手たちが一冬でどれだけ成長してくるかが、非常に楽しみなチームだ。

2時間57分の濃密な激闘。
最大のライバルに勝つこと、最大のライバルに敗れることが、それぞれ己の糧となる。勝負を終えた時、次のステージへ向かってのスタートを切る。

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【岡山】関西が創志学園に0封勝ちして4強入り<春季県大会>

2024.04.28

【富山】富山商、氷見、未来富山などがベスト16入り<春季県大会>

2024.04.28

【鳥取】鳥取城北が大差でリベンジして春3連覇<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!