試合レポート

横浜vs日大高

2012.07.23

8回のビッグ・イニング

 先週末は7月とは思えないような、半袖では肌寒いほどの気温だったが、今日はまた暑さが戻ってきた。とは言え、今日の保土ヶ谷球場は気温26.2℃、東風3.2m、湿度71%と、夏としては比較的プレーしやすい気象コンディション。
第1試合は第1シードの横浜と、第3シードの日大高の対戦。ここまで3試合、全て無失点、コールド・ゲームで悠々と勝ち上がってきた横浜だが、いよいよ難敵を迎える。
ベスト8を賭けたシード校同士の試合は、初回から緊迫した展開となった。

先攻は横浜日大高の先発はエースの邑楽。
1回、横浜は先頭の浅間がセンターライナーでアウトになるが、2番の宍倉がセカンドへの絶妙なバントヒットで出塁し、次のバッターは樋口。カウント2ボール、ノーストライクから放った打球は高々とレフト場外に消えた。打った瞬間にそれとわかる特大のホームランで、いきなり2点を先制する。
その後も、4番高濱のショートへの内野安打、6番拝崎の四球で二死一、二塁とたたみかけ、7番尾関がセカンドへの内野安打を打つが、日大高はホームに突っ込む2塁走者を刺し、初回を2失点で切り抜ける。

その裏、日大高は先頭の増田がショートへの内野安打で出塁。そして、2番長谷部の送りバントのボールを横浜先発の田原がセカンドに送球するもフィルダース・チョイスとなり、さらに3番林が四球を選んで無死満塁のチャンスを迎える。
 
ここで4番の長島は三振に倒れるが、5番高橋のセカンドゴロは横浜のベースカバーが遅れて併殺崩れとなり、日大高が1点を返す。これが横浜のピッチャー田原にとって今大会の初失点。
さらに日大高は6番山本の一、二塁間を破るタイムリーヒットで同点に追いつく。続く、7番山本が四球を選んでまた満塁とチャンスが続くが、8番邑楽が三振を喫して同点止まり。この1回の攻防だけで、約30分が費やされた。

2回表、横浜は先頭の8番田原の四球を選び、9番青木の送りバントが悪送球を誘って無死一、二塁。 
打順トップに還って1番浅間も確実にバントでランナーを送って一死二、三塁とし、バッターは2番宍倉。ここで
は、カウント2ボール1ストライクでスクイズを敢行。一塁線への打球は切れそうで切れず、一塁もセーフとなり、3点目が横浜に入る。
さらに二塁への盗塁でランナー二、三塁となり、前打席でホームランの3番樋口がレフトに大きな犠牲フライを打って4点目。
 
同点に追いつかれた後、横浜はすぐに点を取り返し、また2点リードとなる。
しかし、その裏、日大高はまた反撃に出る。先頭の9番平川が四球で出塁し、続く1番増田のセカンドゴロでエンドランを決めて二塁にランナーを進め、さらに2番長谷部がレフト前ヒットでつないで一死一、三塁のチャンス。
スタンドから応援団の大声援が鳴り響く。しかし、3番林が見逃しの3球三振、4番長島がピッチャーゴロと、クリーンアップが抑えられ、惜しくも無得点に終わる。


 その後、制球に苦しんでいた横浜の先発田原は本来の調子を取り戻し、日大高打線にゴロの山を築かせ、得点のチャンスすら与えず、また、日大高のエース邑楽も横浜の4番、強打者の高濱を併殺に討ち取るなど粘りのピッチングで3回以降は横浜に得点を許さず、7回が終了し、4-2で横浜の2点リードという接戦の展開で終盤の8回に入る。

8回表、横浜は5番高橋がレフトフェンス直撃の二塁打を放つと、続く拝崎のバントヒットで無死一、三塁。さらに盗塁で二、三塁とすると、バッターは7番尾関。1ストライクの後、横浜はまたもスクイズ。
これが悪送球を誘って2点追加。さらに送りバントと四球。そして二塁への盗塁で一死二、三塁となったところでバッターは1番浅間。 カウント3ボール1ストライクから放った打球はライトスタンドに飛び込む3ランホーマーとなり、横浜は9対2とリードを広げる。
ここで日大高はピッチャーを林に交代するが、横浜は二死の後、3番樋口のイレギュラーバウンドのレフト前ヒット、4番高濱のレフトへの2ランホーマー、5番高橋、6番拝崎の連続ヒットなど打者1巡の猛攻。 
この回に一挙8点を奪ってビッグ・イニングとし、12対2と、ついに日大高を10点差に突き放した。
その裏、横浜は先発の田原に代えて相馬、柳を投入。日大高の代打陣を討ち取り、12対2で横浜がコールド勝ちを収め、ベスト8進出を決めた。

スコア的には横浜の圧勝に見えるが、7回までは4対2と接戦だった。
豪快に3ホーマーで快勝したように見えても、それは送りバント、バントヒット、スクイズといった小技の成功の上に成り立っている。やはり地味なプレーをミスせず、基本に忠実なのが横浜の強さだと言えるだろう。
日大高は先発の邑楽が7回まで試合を作り、シード校らしさを見せた。
しかし、終盤の8回に入り、強豪の横浜打線を相手に精神、肉体の両面で疲労がピークに達していたことだろう。強豪校と終盤まで互角に戦うには、エースに準じる2番手、3番手の投手を育て、継投で対抗するという戦略も大事だと考えられる。

ただ、これは日大高に限らず、今後の横浜にも重要になってくるだろう。
他の強豪校が複数の投手をローテーションで先発登板させているのに対し、横浜はここまでの4試合、全て田原が先発登板しており、残る投手陣の柳、相馬は、「大量リードの場面で、短いイニング」にリリーフ登板しているだけである。
 
この2投手は昨年の甲子園を経験しているが、今夏の調子は未知数とも考えられる。これから強豪校との連戦の中で、柳、相馬の2投手が、先発、もしくは、「接戦の場面で、ロング・リリーフ」するケースが考えられ、そこでどれだけ力を発揮できるかが横浜の勝利のカギとなるだろう。
横浜は次回、いよいよ注目のエース松井を擁する強豪、桐光学園と対戦する。好ゲームを期待している。

(文=松田 祥二郎)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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