試合レポート

桐蔭学園vs厚木西

2012.07.16

逆風のコンディションの中で

 先週、九州北西部で降り続いた記録的な豪雨は25人以上の死者、20万人以上の避難者を出す大災害となった。
昔は豪雨と言えば、台風シーズンが主だったが、近年は梅雨前線の活発化により、この時期、西日本を中心に大雨の頻度が増し、その雨量は時として台風を上回るようになった。これも異常気象の1つだという声もある。

今年、神奈川大会も既に数試合が雨で順延になっているが、今後、雨の頻度が増せばスケジュール上、雨天でも試合を決行するケースが増えると考えられ、連戦を勝ち抜くには、「悪天候に強いチーム作り」も必要となるだろう。

今日の[stadium]平塚球場[/stadium]は晴天。気温30.6℃、風は南南西7.1mと強い逆風で、湿度66%の気象コンディション。
第1シードの桐蔭学園と、1回戦を僅差で勝ち上がった厚木西との対戦。先攻は桐蔭学園厚木西の先発ピッチャーはエースの江夏。名前からは、豪腕の左投手を連想させるが、実際は対照的に、右の技巧派のアンダースロー投手である。

1回表、桐蔭学園は1番和泉が、いきなり左中間の二塁打で出塁。2番の嵩が送りバントでランナーを着実に三塁に進めると、続く3番佐藤がカウント2ボール1ストライクから、痛烈なセンターライナーの犠牲フライを放ち、早くも1点を先制する。
桐蔭学園の先発は背番号11の檀上。公式戦、初先発であるが、1回裏の厚木西の攻撃を全て内野ゴロの三者凡退に討ち取り、上々の立ち上がりを見せる。
2回表、桐蔭学園は四球を選んだ6番菊池を1塁に置き、2死で8番檀上。壇上の打球は詰まってセンターに飛ぶが、強風に押し戻されてセンター前にポテンと落ちるラッキーなヒットとなり、ニ死一、三塁のチャンス。しかし、9番清水がセンターフライに倒れ、無得点。
その後、桐蔭学園は各バッターが外野に鋭いライナー、大きな飛球を打つも、厚木西桐蔭学園の4番小河の逆風を突くレフトフェンス直撃の二塁打以外は長打を許さず、また盗塁阻止、ダブルプレーなど堅い守りで5回まで桐蔭学園を1点に抑える。
一方、桐蔭学園の先発壇上もコーナーを丁寧に突く快調なピッチングが続き、5回が終了し、スコア1対0のままグラウンド整備に入る。

そしてグラウンド整備の終了後、試合が動く。
6回表、桐蔭学園は先頭打者の2番嵩が四球で出塁すると、3番佐藤の送りバントで一死ニ塁のチャンスを迎える。続く4番、強打者の小河に対しては、ピッチャー江夏はストライクが入らず、ストレートの四球で一死一、ニ塁。ここで5番久保の鋭い打球は抜けたかと思ったがショートライナー。ニ死となり、7番菊池の打球はレフトへの平凡なフライ。厚木西はピンチを脱したかに見えた。

しかし、強風でボールが流される。追うレフトの蒔田。 キャッチしたかに見えた。が、あと少しのところで捕球できず。記録はヒットとなり、ラッキーな形で、桐蔭学園に大きな2点が入り、3対0で桐蔭学園のリードとなる。


 続く7回表、桐蔭学園は8番壇上がレフトへ痛烈なライナーを放つも、今度は代わったレフトの遠藤がダイビング・チャッチのファインプレー。
しかし、続く9番清水のレフト前ヒット、1番和泉の拾い上げるような技ありのライト前ヒットで、一死一、三塁のチャンス。バッターは2番の嵩。ここで桐蔭学園は一塁ランナーを走らせるが、厚木西は、またも盗塁を阻止して2アウト。
そして、驚くことに、それまでアンダースローだったピッチャーの江夏が、突然、オーバースローで投げ始める。意表をつかれたバッター嵩打球はショートゴロ。またも、厚木西はピンチを脱したかに見えたが、堅守の厚木西に、ここで大きなエラーが出る。痛い4点目が桐蔭学園に入ってしまった。その後、桐蔭学園は3番佐藤がライト前ヒットでエンドランを決めてさらに一、三塁と、たたみ掛けるが、江夏はスラッガーの4番小河と真っ向勝負してセンターフライに打ち取り、厚木西は7回を1失点でしのいだ。

しかし8回、桐蔭学園はニ死から7番森川の死球を皮切りに8番檀上、途中出場の9番山野辺の連続タイムリーでダメ押しの5点目が入る。
最終回、厚木西のエース江夏は、またも2番の嵩に対してだけ、今度は初球からオーバースローで投げ込み、その後、アンダー、オーバーと交互に投げ分けてフルカウントの末、サードゴロに討ち取り、後続にヒットを許すも無失点に抑える。
その裏、桐蔭学園は背番号1のストッパー、横塚が登場。 剛速球で厚木西打線を抑え、5-0で桐蔭学園が勝利した。

5回までスコアは1対0。野球で「タラ・レバ」を言ってはいけないが、もし、6回の風の不運と7回のエラーが無ければ、9回まで接戦になっていたかもしれない。 強豪の桐蔭学園を相手に11安打を浴びながらも、大量失点を許さず、厚木西は鍛え抜かれた好チームだった。
桐蔭学園もまた、初先発の檀上が良く投げた。8回まで被安打2、無失点の好投。ただ、攻撃では風によるラッキーなヒットで得点を追加したが、逆に大きな飛球を打っても、風に押し戻されてアウトになることも。結果的に風が追加点につながったが、このような逆風のコンディションでは、あまり長打を狙わず、コツコツとゴロで打ち返すことも大事なのかもしれない。次は横浜商業(Y校)と対戦するが、次回も好ゲームを期待している。

(文=松田祥ニ郎)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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