報徳学園vs三木東
部員14人で臨んだ夏・2試合目
「最後の大会に懸ける想いは僕たちだって、他のチームとは変わらない。部員は少ないですけど、勝つつもりでやってきました」
三木東の主将・藤川雅人はそういった。
部員たった14人の三木東と総勢100人超の強豪校・報徳学園との対決は、その規模通りに決着がついた。
部員の数だけでない。
この日まで積み重ねてきたお互いの伝統や組織力を考えても、その差は明らかだった。部員不足で昨秋とこの春の大会にも出場していない三木東にとっては、何をとっても、勝っているものはなかった。
三木東の徳岡佑介監督は言う。
「1回戦を14年ぶりに制したのは嬉しいことなのですけど、勝ったことがないチームだったので、それからというのをどうもっていったら良いのか分かっていなかった。初戦を勝った勢いをうまく、次の試合につなげられなかった」
それでも、藤川には忸怩たる思いがあった。
昨夏、1回戦の星陵戦、4対6で敗れた試合で最後のバッターが藤川だったからだ。
「サードゴロでした。自分が最後のバッターになって、先輩の試合を終わらせてしまった。その悔しい想いはずっと持ち続けていたし、この夏、勝ちたいと思ってやってきました」
部員が少なくても、同じ高校野球。
藤川にも、今大会に懸ける意気込みがあったのだ。
「なかなか勝てなくて、僕らの代で1勝できたのは嬉しい。今日の試合も気持ちは報徳に負けていませんでした。1回の報徳の攻撃を0点で抑えられたのも、僕たちの気持ちが勝ったから」
1回、先発した1年生左腕の河合義宜は、角度のあるストレートとスライダーで打者に対峙していた。投球面以外に課題が多く走者が出れば必ず盗塁をされたが、それでも、粘り強く投げ抜いていた。
2回からは猛攻を浴びた。5回で10失点。「取れるアウトを取って積み重ねていく」と指揮官の目指す野球を実践することができなかった。
とはいえ、部員が少なく、練習もままならないチームが14年ぶりの1勝と強豪校と対戦したのだ。
この2試合の経験が今後への礎になる。
徳岡監督は言う。
「報徳学園とやれたこともそうだし、このような舞台を経験できたこと大きかった。1、2年生が多いので、この経験を生かしたい」
1年生でマウンドを守った河合は誓う。
「2試合とも自分の良い球は投げられましたけど、報徳学園は予想以上に強いチームでした。もっともっと練習して、甲子園に行けるくらいのチームになりたい」
夏の大会1勝からその先まで。
三木東のこれからに注目したい。
(文=氏原英明)