都立赤羽商vs巣鴨
可能性を秘めた巣鴨・村田紘資
高校球児の可能性は無限大だ。スターとなるのは強豪校ばかりではない。普通の学校でも、恵まれた素質を備えた選手であれば、意識次第では強豪校の選手を凌駕する選手に化ける。ただそこに気づけないまま終わってしまうのが殆ど。この試合では意識・取り組み次第では化けそうな投手を見つけた。
目についた投手は、都内でも有数の超が付くほどの進学校・巣鴨の背番号10の村田紘資(182/62)である。身体の線は細いが、手足が長く、なで肩でまさに投手体型。右投げ右打ちの長身右腕で、まだ1年生である。小柄な選手が多い巣鴨の中ではひと際際立つ体格。最初にシートノックを受けた後、ブルペンに向かった。先発することがわかったので、村田のピッチングを注目してみた。
村田はすぐに多くの人に注目してもらえるような球を投げるわけではない。ただ化けた時に観衆を唸らせるような投手に変貌する可能性をもった素材である。ワインドアップから振りかぶり、真っすぐ左足を上げていく。左足のステップ幅は狭く、お尻が落ちない上半身主導のフォーム。右肘は内回りで回旋させていき、右腕を振り下ろす。上から振り下ろしながらも無理なく振り下ろすことが出来ているのが彼の長所。ストレートのスピードは目測で、120キロ前後。スピードは物足りないが、体が出来てくれば球速は高まっていくだろうし、まだコントロールはアバウトだが、淡々とストライクを重ねることが出来ている。ストレートをコーナーに投げ分けていきながら、スライダー、カーブを織り交ぜながら打たせていくピッチング。
1回裏に相手の送球エラーから先制した1点の援護を守り抜く。ピンチを迎えながらも粘り強い投球で、7回まで無失点に抑える投球。残り2回まできたが、8回表、二死三塁から7番戸田 尚希(3年)が放った打球はライトとセンターの間へ、アウトになるかと思われたが、二人ともどちらが捕球するかはっきりせず、結局ライトが捕りに行ったが、落球してしまい同点に追いつかれ、9回表には5連打を浴びて一気に3失点。4対1と逆転を許した。
打線は都立赤羽商の先発・鉾立 翔太(3年)から決定打を打つ事が出来ず、試合終了。都立赤羽商が逆転勝利し、2回戦へ駒を進めた。
巣鴨は逆転負けを喫したが、村田のような恵まれた素質を備えた長身投手が存在することがチームを押し上げる大事なファクターになるだろう。やはり野球は投手がカギを握るものであり、軸となる選手を定めて、軸となる選手の能力を高めていきながら、他の選手も相乗効果で伸びていくことがチーム力を高める最大の近道。村田は取り組み次第では強豪校を脅かす存在になりそうな可能性がある投手であり、他の野手も村田を盛り立てようと攻守を磨いて、チーム力を高めていけば面白いチームになりそうだ。
恵まれた素質はあるけれど、まだ本気になっていない選手が、どこかで目の色を変えて練習に一生懸命を取り組み、いずれはプロから注目されるような選手に育つ。私だけではなく、人々はそういうサクセスストーリーを望んでいるのではないだろうか。都内でも無名中の無名の選手だが、今後も密かに注目し続けたい投手であった。
(文=編集部:河嶋宗一)