智辯学園vs鳥羽
青山大紀投手(智辯学園)
4安打1失点、十分なピッチング???
9回を投げて4安打1失点10奪三振。
智弁学園のエース・青山大紀(3年)が完投勝利を上げた。
昨秋も近畿大会で対戦している京都鳥羽を相手にしての返り討ち。残した数字に申し分はなかった。
しかし、指揮を執る小坂将商監督、キャッチャーの中道勝士(3年)も、そして、何よりも本人自身の歯切れが悪い。
「(投球)フォームが全然良くなかった。練習で取り組んでいることができませんでした。特に、まっすぐが全然(ダメ)でした」。
青山の向上心だけが高く、そう話しているのなら、わかる。
だが、そうではない。誰も青山のピッチングを誉めないのだ。
「高めの球は良いけど、速い球を投げようとしすぎて力んでる。球離れが速いんですよ。選抜でもそうやったけど、もとに戻ってほしい」と小坂監督が言えば、中道は「ずっと青山のピッチングは良くないですね。マシだったのは、昨秋の東大阪大柏原戦くらいですかね。それ以外はアイツのいいピッチングを受けていない」と証言するほどだ。
そんなに、青山は悪いのか・・・
見ていてちょっと納得ができなかった。
直球は高低・左右に上手く散らしているし、得意のスライダーは低めに決まっている。
そもそも、10三振も奪っているではないか。
4安打1失点。十分な数字のように思えた。
思い返せば、青山が入学して以降、数多くのピッチングを見てきたが、彼はいつもこんな感じだった。
良くも悪くもまとまりがある。相手を圧倒するようなピッチングもなければ、かといって、絶不調でも、大崩れすることがないのだ。
「チームの勝利を優先して、調子が悪かったらどうすればいいか、自分では分かっている」と青山は言う。
中道も「試合の中で修正できる。回を追うごとに調子を上げていける上手さがある」とエースの長所を表現した。
中道勝士主将(智辯学園)
だが、ひとつ見方を変えてみると「センス」と表現できる、そうした青山の修正能力の高さも、ある意味では彼の進歩を止めてきた要因でもある。
大崩れしないから、反省ができない。思い切ったモデルチェンジができないのだ。
たとえば、同チームのライバル、小野耀平(3年)は青山とは真逆だった。
ボールの質で相手を圧倒したかと思うと、試合をぶち壊してしまう。そのたび、彼は反省を促され、成長を遂げてきたのだ。
青山は本人自身で「スライダーに頼りすぎてストレートが行かなくなった」と課題をもち続けているが、そうはいっても、センスで抑えられてしまうから、劇的な変化は生まれないのだ。
中道は言った。
「いつか、頭を打つ(壁にぶつかる)時が来るかもしれない。それが夏までに来ればいいとは思いますけど、上手く声をかけられたらと思う」。
9回4安打1失点完投。
立派な数字である。
しかし青山はさらなる進化のため、今、迷いの中にいる
スターティングメンバー
【京都鳥羽】
3枝勇樹、9伊坂朋寛、5松宮亮貴、1五味拓真、8花田圭亮、6荒居宏治、7影井大介、2北川瑠輝也、4神崎友輝
【智辯学園】
8浦野純也、4山口悠希、1青山大紀、9小野耀平、2中道勝士、3岡本和真、5北阪真規、7米田伸太郎、6大崎拓也
(文=氏原英明)
(写真=松倉雄太)
(写真=試合シーン46~68・中谷明)