試合レポート

鳥羽vs花園

2012.05.14

鳥羽vs花園 | 高校野球ドットコム

五味拓真投手(鳥羽)

植え付けられた機動力への意識

「6回。ホントあの回だけですね」。
京都鳥羽の山田知也監督は、苦笑いを浮かべた。選抜大会後、なかなか脱皮しきれないチーム状態に思う所は多々あるようだが、それでも試合になればしっかりと勝つ。
この試合で言えば、エースの五味拓真(3年)は大崩れしなかったし、野手陣も落ち着いていた。それが5回まで0対0の展開でも、焦ることなく後半の立ち上がりに得点できた要因だ。
ただし、6回の4点に繋がるヒントは序盤から随所に表れていた。

2回に先頭の4番五味がヒットで出塁した後の場面だ。打席に立った5番花田圭佑(2年)への投球で、京都花園のバッテリーは、ウエストボールを2球も投じた。
「(ヒット)エンドランを仕掛けてくるかもしれないと思った」と話したのは京都花園のキャッチャー・谷口翔吾(3年)。

ただここでの京都鳥羽サイドは、大きく動くことなく、花田は併殺打に倒れて、3人で攻撃は終わった。
ゲームは進み、5回を終了。
グランド整備後に京都鳥羽ベンチからは大きな声が飛んだ。
「ここからの“入り”が大事だ」。


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枝勇樹主将(鳥羽)

6回表、先頭の8番北川瑠輝也(2年)が死球で出塁。無死での走者で、山田監督は9番の神崎友輝(2年)に送りバントのサインを出した。京都花園の先発・北川誠晃(3年)が投じた1球目、神崎のバントはファウルとなった。
2球目と3球目はボール。『バントなのか?ヒットエンドランなのか?それとも強行策か?』
様々なケースが考えられる状況で、山田監督は打者有利のカウントを見てサインを変えていた。
4球目、京都鳥羽サイドが仕掛けたのは、バスター気味のヒットエンドラン。神崎が必死にボールに食らいつくと、打球はライト線へポトリと落ちた。スタートを切っていた北川は三塁へ、神崎も二塁まで進んだ。
直後に1番枝勇樹(3年)がライト前へタイムリー。京都鳥羽が待望の先取点を奪った。

「(序盤に)相手がウエストしてきていたので、(仕掛けが)やりやすくなりましたね」と振り返った山田監督。
高校野球において、試合序盤から盗塁やヒットエンドランを警戒してのウエストボールは非常に珍しい。言いかえれば、それだけこの試合で京都鳥羽が京都花園に植え付けた機動力=仕掛けへの意識は大きかった。
ベンチと走者の動きに警戒する分だけ、打者との対戦への集中力は希薄になる。確率的な事を考えれば、攻撃側は『気にしてくれる』だけで良いのだ。

1点が入った京都鳥羽。しかし守る京都花園からすれば、最少失点ならば仕方がないと割り切れる場面でもあった。だが、1、3塁で、ショートバウンドした球を見た枝が二塁へスタート。これに反応したキャッチャーの谷口が悪送球を投じてしまい、三塁走者が生還した。
ミスで入った2点目。そして3点目はスクイズで入った。


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キャッチャー・谷口翔吾(花園)

3対0となり2死走者無し。それでもここからが大舞台を経験して自信をつけた京都鳥羽の攻撃。4番五味が二塁打を放つと、5番花田がタイムリーを放って大きな4点目が入った。2死走者無しからもう一度、“一”からチャンスを作って奪った得点。
このリードで、五味は気分新たに後半のピッチングに入ることができた。

一方の、京都花園の投手陣も7回以降はパーフェクト。
「ウチとしては上々の試合ができた」と小瀬博孝監督は試合後に収穫を口にした。それだけに、防げたはずの2点目以降が悔やまれる。
『たられば』になるが、京都花園が8回に1点を場面。もし、点差がもっと少なかったならば・・・
相手の機動力を意識しすぎた感があった京都花園の守備陣。キャッチャーの谷口は、「夏には京都鳥羽にリベンジしたい」と口を真一文字に結んだ。
キャッチャーは色々な所に気を配らなければいけない難しいポジション。
勝負の中での駆け引き。京都花園の守りの要は、大きな勉強ができた試合だったと言えるだろう。

スターティングメンバー
【京都鳥羽】
3枝勇樹、9伊坂朋寛、5松宮亮貴、1五味拓真、8花田圭佑、6荒居宏治、7影井大介、2北川瑠輝也、4神崎友輝
【京都花園】
7樋口大樹、5平木達也、2谷口翔吾、3浅田健太、8今西尚暉、6竹内大輝、9竹本準、1北川誠晃、4川嶋利一

(文・写真=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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