試合レポート

専大松戸vs習志野

2012.05.05

専大松戸vs習志野 | 高校野球ドットコム

先発した土居(専大松戸)

逆転勝ちを呼び込んだ2番栗原 習志野の2つの誤算

習志野専大松戸は昨春決勝以来(習志野が勝利)の顔合わせである。両校は大事な試合で対することが多い。春の大会決勝戦の前は秋の3回戦。その試合は専大松戸が1-0で辛勝。いつもギリギリの神経戦を行うので、今回もギリギリの勝負が展開されていくだろう。そして習志野はブラスバンドが動員していた。春季県大会では異例の動員である。およそ200人、チアリーダーも20人。試合前から演奏。球場に響き渡る爆音は球場の雰囲気を完全に自分たちのモノにしていた。

さて両チームの先発。専大松戸はエース栗原洸習志野在原一稀木村光彦、大野の3人の誰かと予想していたが、専大松戸は右サイドハンドの石島、習志野は背番号11の土居が先発であった。土居は背番号11で、外野手登録となっている選手である。スピードはないが、右打者に内角に食い込むストレート、左打者から逃げるスライダーが武器の左腕である。

お互い探り合いのスタートとなった。

1回表、専大松戸は1番内山が右中間へ二塁打。栗原が絶妙な犠打を決めて、一死三塁となって3番永浜が中犠飛で1点を先制する。専大松戸は幸先良く先制をしたが、3回の表に一死1,3塁で、一塁走者が盗塁死。嫌な流れであった。

その3回裏、習志野は土居の中前安打、郡司の犠打、福山の右前安打で一死1,3塁となって2番佐藤の左犠飛で同点に追いつく。

そして5回裏、7番光野の中前安打で出塁。8番土居が犠打を決めて、一死二塁。9番郡司が捉えた当たりはレフトフライ。二塁走者はレフトとショートの緩慢な動きを見逃さなかった。一気に三塁に陥れて、セーフ。二死三塁で、1番福山にまわった。福山は鮮やかに中前適時打を放ち、習志野が勝ち越しに成功。さらに3番小山の左前適時打で一点を追加し、3対1とする。

この5回裏、何がいけなかったといえば、レフトの神宮が二塁走者に進塁を許したこと。二死二塁、二死三塁ならば得点する確率が変わってくる。三塁ならばシングルヒット、内野安打、ボーク、バッテリーミスなどなど得点する手段はいくらでもある。二塁ならばヒットと致命的なエラーがない限り、得点する確率はぐっと減る。福山を歩かせて、1,2塁ならばフォースアウトも選択できる。そういう先のことを想定しながら、プレーを心掛けていかなければならないが、レフトとサードは次の備えが出来ていなかった。本当ならば命取りになるプレーであった。

6回表、専大松戸は栗原、永浜の連続ヒットでチャンスを作り、6番斎藤の遊撃内野安打で1点差に迫る。ここで、好投の土居が降板。二番手に背番号1を着けた大野を投入する。大野は後続を締める。


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栗原(専大松戸)

7回裏、習志野は小山の左中間を破る二塁打で1点を追加、ここで石島が降板し、右下手投げの高橋を投入する。4番松山も高橋から左中間を破る二塁打を放ち、1点を追加。5対2。習志野が完全に試合の主導権を握ったといえた。

8回表、栗原が左前安打。3番永浜の時にパスボール。捕手の佐藤はボールを見失い、三塁へ。習志野守備陣は前進守備を敷かなかった、永浜の遊ゴロで1点を返す。5対3。安心出来ない展開である。8回の裏、習志野は無得点に終わり、9回の表を迎える。

9回表、専大松戸は代打攻勢。まず背番号17の北谷が一塁強襲の内野安打。背番号14の関根も中前安打と続き、無死1,3塁のチャンス。試合は読めない展開になってきた。習志野は大野に代えて在原を投入。在原は8番を空振り三振に打ち取り、一死。そして山川は二塁ゴロ。二塁手は一塁走者をタッチし、一塁へ送球。併殺かと思われたが、一塁走者のタッチが認められず空タッチ。ホームインが認められる。スコアは5対4。1点差に迫った。

二死二塁となって1番内山は四球。頼みの栗原に回る。栗原は高めに入る直球を見逃さなかった。鋭い打球が三遊間を抜ける。二塁走者が三塁を回ってホームイン。同点に追い付く。栗原は一塁上で大きくガッツポーズ。

そして永浜。永浜が捉えたライナー性の打球は再びセカンドの下に飛ぶ。セカンドはグラブを伸ばすが、捕球することが出来ず、ヒット。二塁走者がホームインし、逆転に成功。逆転した瞬間。専大松戸ナインはベンチから出て、大きくガッツポーズ。うなだれる習志野ナイン。

両チームのテンションが一瞬にして逆転した。そのあと、木村光彦が後続を抑えて、9回の裏に入る。

9回裏からエースの栗原洸が登場。追う習志野を締めるクローザーとして抑えられるのは彼しかいない。この日、9回の裏まで登板がなかったのは前日の流経大柏戦で投げた疲労が残っているのか、いつもほどのボールのキレはない。いきなり1番福山に中前安打を打たれ、無死から同点のランナーが出塁する。2番佐藤は四球。3番小山は犠打。一塁手が処理するが、お手玉してしまい、オールセーフ。無死満塁の絶好のチャンスで、4番松山に回った。

絶体絶命のピンチ。栗原は全力でストレートを投げる。松山はフルスイング。痛烈な打球が二塁方向へ転がったが、セカンド・山川が落ち着いて処理。習志野、痛恨のホームゲッツー。そして5番濱洲。栗原は1-2から切れ味抜群のスライダーを投げ、空振り三振に打ち取り、ゲームセット。試合時間2時間40分に及ぶゲームは専大松戸が逆転勝利で準決勝進出を果たした。


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勝利を喜ぶ専大松戸ナイン

 習志野は綻びが見えた。習志野の良さは負けにくい野球をすること。緻密な守備でアウトを積み重ね、勘の良い走塁で塁上を掻きまわす。投手は相手打者の相性を見て、様々な投手を送り込む。相手の隙を逃さない攻撃は県内の学校を寄せ付けない強さがある。8回までそういう試合が出来ていた。習志野らしい試合が出来ているなと。

しかし全体的にみると小さい綻びが積み重なって逆転を許した。

習志野の自慢である守備、投手力に綻びが出た試合内容であった。まず6回の表、二死から専大松戸の6番斎藤の遊撃内野安打を許した。当たりは弱いゴロであったが、足が速くなく、右打者の斉藤ならばアウトにさせてほしい場面である。それを考えるとまだショート・福山の動きはスピード感がない。

次に8回の表に捕手の後逸から1点を許す。二塁ならともかく、ボールを見逃して三塁まで行かせるのは怠慢と言われても仕方ない。更に9回の表にも一塁手が強烈な打球を処理出来ず内野安打を許した。昨年と比べると守備に綻びが出てしまった。

昨年から主力投手であった大野、在原が打ち込まれて、逆転を許したのは二つ目の誤算。特に在原は昨年の投球とは程遠い内容。彼の生命線であったコントロール、変化球のキレが失われ、粘っこい投球が出来ていなかった。

先発の土居は奇襲ともいえるが、在原の内容を見たら、とても先発としては難しい。土居は在原よりも良く見えた。奇襲でも何でもなく、一番結果を残せる投手を投入しただけであろう。土居は6回途中まで2失点の好投。改めて小林監督の投手起用の巧さを実感させられたが、夏連覇へ向けて投手陣、守備陣に不安を抱えることとなった。

専大松戸は2番栗原がピタリと嵌った。流経大柏戦では4番ピッチャーだったが、今日は2番ライトからのスタート。まず第1打席は無死二塁から鮮やかに犠打を決めて、先制点をアシスト。6回にもヒットで出塁し、2点目のホームイン。8回には左前安打で出塁し、2点差に迫るホームを踏み、そして9回には劇的な同点打。すべて専大松戸の得点に絡む活躍を見せていた。そして9回の裏にはクローザーとして無失点。専大松戸も途中ミスから失点を許し、逆転するまで後手に回ったことが多かったが、2番栗原の起用がすべてを帳消しにさせた。

 彼のような選手は首脳陣としてはとても心強いだろう。専大松戸は甲子園を狙うには彼のような状況を読み、チームの為に仕事が出来る選手が一人でも多く出てくること。それが何人も出てくるようになった時、甲子園を狙う時が来たといえるだろう。

(撮影・文=河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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