試合レポート

春日部東vs蕨

2012.04.29

春日部東vs蕨 | 高校野球ドットコム

小副川(蕨)

心理戦、7回裏の攻防

 この前の試合を踏まえられたのは春日部東だった。

再試合となったこの試合、は小副川、春日部東はエース田中ではなく丹羽が先発する。春日部東は一昨日の試合を受け、6番・中村以外打順を全員変えてきた。その理由について春日部東・中村監督は「小副川に合っている打者を前に上げた」とのことだ。

もちろん小副川自身もそれは感じていたようで「反対にこの上位を抑えてしまえばいけると思っていた」が、如何せんこの日の暑さと1回戦で延長14回、そして一昨日延長15回を投げたこともありボールが走らない。

また、春日部東は前回の試合と違い機動力を使ってきた。初回から走者を出すとディレードスチールを仕掛ける。これは失敗に終わったが、3回裏には1死1,2塁からダブルスチールを決め1死2,3塁とする。するとこの日2番に上がった及川がスクイズを決めさらにこれが野選を誘う。続く1死1,3塁での西村のセーフティースクイズは何とか防ぎこの回を1点に抑えたがこれが7回への布石となる。


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丹羽(春日部東)

 一方のもすぐさま反撃をみせる。4回表、1死から市ノ川がセンター前ヒットで出塁すると2盗そして3盗を決める。その後村田、高橋が連続四球で歩き満塁とすると2死後、橋本がレフト前へタイムリーを打ち同点とする。

だが、4回裏この日5番に下げられた若月の一発が飛び出し春日部東がすぐに2-1と勝ち越せば、も7回表に1死2塁からまたしても3盗を決め1死3塁とすると8番・門倉がレフト前タイムリーを打ち2-2の同点とする。

そして迎えた7回裏だった。この回先頭の田中がフォアボールで出塁すると、続く松井が送り1死2塁で2番・及川がレフト前ヒットでつなぎ1死1,3塁とする。ここで打者は西村、初球だった。前の打席セーフティースクイズを決めたこともあり、また来ると感じたファーストの村田が猛然とダッシュする。

だが、春日部東ベンチは「実はあの場面ランナーがピッチャーだったんでホームクロスプレーはちょっと。カウントをみてスクイズもとは考えたが」(春日部東・中村監督)
と強攻を指示する。

西村は初球を叩くと打球はレフト前へタイムリーとなり春日部東が三度勝ち越す。これで流れを掴んだ春日部東は続く若月のショートゴロを安藤はうまく処理したがファースト村田がショートバウンドを取れずこの間に2点が入り一気に5-2とし試合を決めた。

春日部東は粘るを何とか振り切った形だが、前の試合を踏まえ工夫し、それを得点に結びつけるあたりはさすが老練な中村監督である。この勢いで立教新座・木下を打ち崩すことができるか?


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田中(春日部東)

 一方のだが、目標としていた夏のシード権を手に入れられなかったこともあり試合後選手達は泣いていた。だが・黒須監督は、
「皆試合後悔しがっていたことが大きい。これくらいで満腹感が出てしまっては困る」とチームの反応に手応えを感じている。実はエース小浜が直前の練習試合で右足を捻挫し今大会は投げられない状況だったそうだが、ダブルエースと考えている小副川を今大会で一本立ちさせられたことは大きい。

「まだスタミナが全然足りない。ここで投げなきゃ本当のエースになれない。夏に勝てるピッチャーになりたい」とこの日7四死球と乱れた小柄な左腕は夏への成長を誓った。

むしろ課題は打線か。秋はある程度打線が活発だったがこの春は打てなかった。
「夏は打たないと勝てない。打力ではなく攻撃力を上げたい。うちは一本待ちのチームではない」とそこは黒須監督も課題に挙げた。だが、監督はこうも続けた。

「観客はうちのアップやシートノックなどを見て、誰もこの前のような試合をできるとは思っていなかったはず」と監督は胸を張る。確かに特質に値する投げ方や打ち方をする選手はいない。

「自分のやりたいことを徹底させるために必要なことは納得である。結果の出ているチームと出ていないチームの差は生徒の納得である。徹底しきれないチームは意識的か無意識かわからないが生徒が納得していないことが多い。うちは選手に面談したりその納得のために時間を割いている。今の子は納得すればやる」
何かそれは現代っ子を教えるための教育論にも聞こえる。今大会でダブルエースが確立できた、これに黒須監督のやりたい野球を選手達が納得し持ち前の攻撃を徹底することができると夏旋風を起こすかもしれない。

(文=南 英博)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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