自由ケ丘vs佐賀工
武田健吾(自由ヶ丘)
武田健吾、耀く
この日の2二塁打で、今大会は9打数4安打となった。うち、3本が二塁打だ。
とにかく武田健吾(自由ケ丘)は打球が凄い。183cm、73kgというバランスの取れた体躯を誇り、その右打席から放たれる打球は、低く、強い。
佐賀工戦の2打席目で放った二塁打は、遊撃手がジャンプすれば手が届くのではないかと思われるほどの低い弾道を維持し、あわやホームランかという飛距離と勢いで左翼フェンスを直撃した。
ここまでの高校通算本塁打は18本だが、そんな数値はあくまでの目安に過ぎない。とにかく打球の個性が強烈なのである。
50mは6秒ゼロという俊足を活かした守備範囲の広さは圧倒的で、中学時代に投手を務めていただけに肩が強く、返球の正確性も高い。「守備範囲に関しては誰にも負けたくない」そうだ。
その守備能力は、自由ケ丘・末次秀樹監督も大絶賛だ。
「“球勘”が非常に素晴らしい。内野も守れるのですが、外野守備が上手すぎるんです。それに狭い内野よりも広いエリアの方が武田の良さが出ますよ。ひょっとすると、私が見てきた外野手の中では一番上手いかもしれません」
走攻守に次元が高い武田を見ようと、この日も8球団のスカウトがネット裏に陣取った。
あるスカウトの評である。
「新庄剛志を髣髴とさせるプレーは、どこを切り取っても高レベル。高校時代の能力を比較したら、むしろ武田の方が上だろう」
実際に憧れるプロ野球選手は「実家も近い新庄さん!」と即答する武田であった。
三潴ファイターズで活躍していた中学時代には、第14回AA世界選手権の日本代表に選出され、藤浪晋太郎(大阪桐蔭)や中道勝士(智弁学園)とともに国際舞台を経験した。
実力、実績ともに申しぶんない4番打者は、チームのキャプテンでもある。自由ケ丘にとっては初の九州制覇が懸かる残り2試合で、武田はどんな輝きを見せるのか。
自由ケ丘が俄然楽しみな存在に浮上した。
(文=編集部)