試合レポート

関東一vs智辯学園

2012.03.29

1点の重みとイニングを考えての守り方

 2回戦最後のゲームは、関東一中村祐太(2年)と智辯学園青山大紀(3年)の投げ合い。制したのは2年生の中村の方だった。
9回裏2死2塁。智辯学園は4番の小野耀平(3年)が打席に立った。走者は主将の中道勝士(3年)。智辯学園にとっては、同点だけでなく、逆転サヨナラを狙える場面。
しかしマウンドの中村は、中道をほとんど気にすることなく小野との真っ向勝負。小野は2ストライクからファウルで6球粘るも、中村の12球目を打ちあげてサードファウルフライ。敗戦をしりガックリと俯いた。

中村を含む関東一野手陣が、小野との痺れる勝負をできたのも、2対1と1点のリードがあったから。もし同点だったならば、1死2塁になったところで、「3番の青山君を敬遠していました」と米澤貴光監督は話した。
関東一陣営としては、二塁にいても同点のランナー。ならばサヨナラとなる本塁打だけを気をつければ良い場面で、キャッチャーの松谷飛翔(3年)もそのことだけを考えたリードをしていた。

1点差で9回を迎える要因になったのは、8回無死3塁での、ライト岸直哉(3年)の好捕球である。犠牲フライで1点を返されたが、走者はいなくなり、バッテリーにとっては攻めやすくなった。

逆に智辯学園にとってみれば、4回表の『2』という数字が結果的に響いた形であろう。ここがこの試合の明暗を分けたように思える。
4回表、関東一は先頭の5番伊藤大貴(3年)がセカンドゴロを放つが、智辯学園セカンドの山口悠希(3年)がこれをファンブル(記録は内野安打)。さらに6番吉江将一(3年)のバントを、青山が二塁へ投げるがセーフとなってしまった。7番安西航洋(3年)がきっちりと送って1死2、3塁に。打席は8番松谷。青山の1球目を振り抜くと、打球はレフトの前に落ちて二者が生還した。


この場面でポイントなのは内野手の守り方。智辯学園サイドは全員が前進守備で、『1点も与えない』という意志を示してきた。しかし、二遊間も投球前からベースを離れたため、二塁走者・吉江へのケアが希薄になった。少し驚いたという吉江だが、「チャンスだと思った」とショートの定位置付近まで大きなリードを取った。結果として、打球が落ちた時には三塁走者・伊藤のすぐ後ろを走っており、楽々と生還できた。
「中村に頼ってばかりでした」という吉江はこの走塁に胸を張った。

4回で0対0。そして1死2、3塁での考え方。試合後に両チームの関係者に取材すると様々な答えが返ってきた。
智辯学園の小坂将商監督と主将の中道が話したのは、「あれが定位置でもあの打球はヒットになっていたと思います」とあくまでも結果論だという考えで走者のケアについては触れなかった。二塁走者であり、守りではショートの吉江は、「自分達なら1点を与えたくないが、走者はしっかりとケアをする」と、大きなリードを取らせない考えを話してくれた。

関東一の米澤監督に、もし逆の立場だったら?と尋ねると、「青山君相手ではそう得点はできないので、1点を守る方向の守備を取ったと思います」との答え。しかし、常日頃から実戦想定の練習をしており、単純に走者をつけるだけでなく、「イニング、点差を考えての色んな(パターンの)練習をしています」と付け加えた。

この2点という数字は確かに結果論かもしれないが、二塁走者を、塁上にくぎ付けにするケアができていれば、また違った形になったのではないだろうか?
結果は結果として、イニング、点差、打順、相性、調子など様々な要素をしっかりと振り返って、この先に生かす材料となれば、敗れた智辯にとっても大きな財産を得たといえるだろう。

ゲーム=勉強の場である。

(文=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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